◇最初不安だったが今は楽しみ--幼く見えぬよう二枚目に
歌舞伎俳優の中村種太郎が、東京・国立劇場の3月「歌舞伎鑑賞教室」で「葛(くず)の葉」の安倍保名を演じる。先輩の女形、中村芝雀がつとめる葛の葉の夫役。種太郎はまだ高校3年生で、まさに大抜てきだ。「父(中村歌昇)には、『大変だぞ』と言われました。不安でしようがなかったのですが、今は楽しみです」と頼もしい。
1989年生まれで94年が初舞台。伯父が歌六、曽祖父が三代目中村時蔵。父のいとこに現時蔵、錦之助、獅童がいる歌舞伎一家の出身である。
一昨年10月の国立劇場「元禄忠臣蔵」で内蔵助の息子、大石松之丞を演じて同劇場奨励賞を受賞。昨年12月の同劇場「清水一角」では市川染五郎演じる一角の弟、与一郎役で同特別賞を受賞するなど、近年の活躍は目覚ましい。
陰陽師(おんみょうじ)の保名は妻の葛の葉、息子の童子と阿倍野に暮らす。だが、葛の葉は、実は保名が以前に助けた白ギツネの化身であった。
芝雀とは、一角では姉弟役で、今回が初の夫婦役。子持ちの役も、もちろん初めてだ。種太郎は「夫婦、親子の情が大切な作品ですので、僕が幼く見えないようにしなければいけないと思います。所作(動き)をきれいにし、きりっとした二枚目に見えたらいいのですが」。
4月からは明治学院大学社会学部に進学する。舞台活動と大学での勉強を両立させる覚悟だ。
3月2日から11日まで国立劇場。そのあと沖縄県へ移動し、14日から17日まで国立劇場おきなわ(浦添市)、20、21日が石垣市民会館大ホールでの公演となる。国立劇場おきなわでの歌舞伎公演は初めてだ。
「責任ありますよね。これが歌舞伎なんだと堪能していただけるお芝居をしたいです」
問い合わせは0570・07・9900へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年2月14日 東京夕刊