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優秀な熱血漢が… 教師によるわいせつ行為などの性犯罪は、本当に多いと言えるのか。いくつか試算してみた。例えば、兵庫県警が今年一―九月に強制わいせつ(未遂含む)容疑で摘発、逮捕したのは七十九人。県内の十五歳以上六十五歳未満人口を基礎にすると、四万八千人に一人という計算になる。 一方、県内の中学校教師は臨時教員を含めて約九千五百人。同容疑で同じ期間に逮捕された教師は三人、三千二百人に一人だ。男女構成比の違いを無視した計算にはしても、発生率は、先の平均値の実に十五倍に上る。 こんな数字もある。県迷惑防止条例違反を含むわいせつ事案で逮捕された中学教師は五人。県内の中学校は三百九十五校。七十九校に一校が今年、逮捕者を出したことになる。中学教師の性犯罪は確かに多い。「個人の資質」では済ましようのない数字が並ぶ。 「これがうちであったら、学校はひっくり返る」。八月二十五日の朝刊を見て、伊丹市の中学校長はそう思ったという。新聞は、近接する中学の教諭(30)が、強制わいせつ容疑で逮捕されたと伝えていた。教育委員会への報告、生徒や保護者への事情説明、事件後の学校運営…。校長は、顔見知りの教師たちが奔走する姿を想像し、「大変やろうなぁ」と同情した。 九月五日。校長は同じ立場に立たされる。逮捕されたのは三年生を担任する社会科教諭(39)。容疑は同じ強制わいせつだった。 市立中学教諭の相次ぐ逮捕は、伊丹市の教育関係者に衝撃を与えた。内容はいずれも破廉恥事件。しかも二教諭とも、周囲の信頼を集める人物だった。 「教委の指導主事にだれか推薦を、と言われれば間違いなく彼を推していた」と校長。それだけの信任を得ていた社会科教諭は市の教育研究所の研究員を務めたことがあり、教材開発や指導方法など、社会科では同市の指導者的存在。「分かりやすい授業」で知られ、担当していないクラスの生徒たちも、この教諭の授業のノートを借りて勉強するほどだった。 「野球部がいのちの元気者」でもあった。早朝練習のため、毎日午前七時すぎには学校にいた。自宅は神戸市西部。車で一時間余りはかかる。それでも放課後の部活動はもちろん、土日曜も返上して練習や試合に明け暮れていた。 「伊丹の中学野球部を初めて県大会に導いた男」とも呼ばれる。親身になっての指導に「先生がいたから今の自分がある」と話す卒業生も少なくない。父母たちも「礼儀正しく、情熱的で頼りがいのある先生」と感じていた。 模範的だったその教諭が今、神戸地裁の被告席に立つ。「嘘(うそ)だ」と、逮捕当時、生徒たちは叫んだ。何が起きたのか。次回は、それを報告したい。 |
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