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訪問看護の駐車、126事業所が違反問われる 特例要請

2008年02月15日03時15分

 訪問看護ステーションの車が訪問先で駐車違反とされるケースが相次いでいる問題で、昨年9月から11月末までの3カ月で全国の126事業所が取り締まりを受けていたことが14日、全国訪問看護事業協会の調べで分かった。患者の容体の急変で駆けつけた緊急時に取り締まられたケースもあり、協会などは13日、緊急時の訪問については取り締まり対象から外すよう求める要望書を警察庁に提出。同庁は対応を検討するという。

 訪問看護などで使う福祉関係車は、各警察署長が期間を決めて特例として駐車を許可していたが、この運用が昨年見直された。仕事の内容を問わず、(1)訪問先の近くに駐車場がない(2)公共交通機関の利用が困難――などの条件の明確化が主な変更点で、これにより許可を受けられない事業者が出たという。こうした実態を踏まえ、協会が昨年9月から3カ月間の取り締まりの実態を調べた。

 全国の会員3369事業所にアンケートをしたところ、1786(53%)の回答があり、126が駐車違反にされていた。多い順に東京都27、兵庫県13、愛知県12、神奈川県11などだった。

 「容体が急変した」と家族から連絡を受けて看護師らが駆けつけたケースで、警察に事情を説明しても理解されず、反則金を支払わされた例のほか、医師と同時に患者宅に駆けつけながら、車に駐車禁止除外の標章を出していた医師は駐車違反とされず、その後ろに駐車した訪問看護の車だけが取り締まりを受けた例などがあった。担当の警察官から「命が危険な人ならば、救急車を呼べばいい」と言われた看護師もいたという。

 運用の見直しを受けて事業所側は、有料駐車場の利用(487事業所)▽訪問にタクシーを使う(12同)▽2人乗りで訪問して1人が車内で待機する(45同)などの新たな対応を迫られた。

 その結果、自転車やバイクの新規購入費、駐車料金、タクシー代などの負担が発生。職員が5人未満の零細事業所が多い訪問看護ステーションの大半は運営が苦しいといい、現場からは「時間や経済的な負担を強いられている」との切実な声も寄せられた。

 一方、全国調査によって、警察側の対応にばらつきがあることも判明。対象車の取り締まり例がなかった徳島県警は、駐車許可証の発行を受けている訪問看護ステーションについて、「緊急の場合、電話で警察署に伝えておけば、交通の妨害にならないようにする条件で駐車を認める」という運用だった。茨城県警は「かたくなに『だめ』ではない。要望があれば、実態を調査し判断する」との対応だった。

 全国訪問看護事業協会と日本看護協会、日本訪問看護振興財団は、こうした実態を踏まえて13日、警察庁交通規制課に、緊急時の訪問看護を「やむを得ない場合」として取り締まりの対象外にしてくれるよう要請。同庁の担当者は「現場で困っているのであれば、3団体と意見交換しながら考えていきたい」と答えたという。

 全国訪問看護事業協会の上野桂子・常務理事は「交通ルールは守らなければならないが、命にかかわることなので柔軟な対応をしてほしい。私たちも多くの人に訪問看護の仕事を理解してもらうように努めたい」と言っている。

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