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2008年2月15日

◎日本史を必修に 知っておきたい自国の歴史

 石川、富山県教委にぜひ検討してもらいたいのは、それぞれの県独自の取り組みとして 、日本史を高校の必修科目に加え、高校生に自国の歴史を教えることである。神奈川県教委は二〇一〇年度から全国に先駆けて日本史を必修とする決定をしたが、自国の歴史教育を重視するのは、ごく自然なことのように思われる。国際化の時代であればこそ、自分の国が歩んできた道や固有の文化についての深い理解が必要になる。世界史のみを必修とする現行の学習指導要領は見直されてよいのではないか。

 内閣府が昨年末まとめた必修科目に関するアンケート調査の結果は、「地理・日本史・ 世界史の三科目を必修とする」が41・1%、「地理・日本史・世界史のなかから二科目選択」が23・0%、「日本史のみを必修」が11・7%で、「世界史のみを必修」は5・6%に過ぎなかった。国民の多くが現行の学習指導要領に違和感を持っている証左である。神奈川県に続いて、日本史を必修とする第二、第三の自治体が出てくれば、学習指導要領の見直しにつながるだろう。

 世界史が必修になったのは一九九四年度に実施された学習指導要領からある。国際化社 会の進展に向け、国際的な視野を持つ人材育成のため世界史的な知識が必要とされた。また、小中学校では日本史を中心に学ぶのだから、高校では世界史を学ばせれば、高校終了までに日本史と世界史の基礎知識が身に付くとした考えも背景にあった。

 だが、現実には、大学入試で世界史を受験科目として選択する生徒は少ない。〇八年度 の大学入試センターの受験科目では、日本史が41%に対し、世界史は必修でありながら27%にとどまっている。文科省のいわば理想論的な考え方と、学校現場が直面している現実には大きなズレがあり、この違いが「未履修問題」を引き起こす原因となったのは記憶に新しい。

 新学習指導要領の一三年度施行に向け、全国高等学校長協会は、世界史を選択科目にす るよう要望している。不人気の世界史を無理に教えようとするより、小中高を通じて日本史をきちんと教え、これをベースに世界史の知識を身に付けさせる方が理にかなっているように思われる。

◎消費者行政 新しい組織が要るのか?

 福田康夫首相肝いりの「消費者行政推進会議」が発足した。一元化の名分の下に新組織 をつくるのがよいのか、それとも既存の組織を連携させ、情報の共有化を精力的に推し進める司令塔を整えるのがよいのか。小さな政府を目指し、民間の活性化をはかることからいえば、この点を突っ込んで検討してほしい。

 首相は今国会冒頭の施政方針演説の中で「国民の安全と福利のために置かれた役所や公 の機関が、時としてむしろ国民の害となっている例が続発している」と単刀直入に問題点を指摘した。そして「食品表示の問題への対応など、各省庁縦割りになっている消費者行政を統一的・一元的に推進するための、強い権限を持つ新組織を発足させ、消費者行政担当大臣を常設する」と述べ、その新組織は国民の意見や苦情の窓口となり、消費者を主役とする政府の舵取り役になるものだと説明した。

 こうした首相の考えに基づき、望ましい具体像を描き出すのが消費者行政推進会議であ る。中国製ギョーザ問題の発生で前倒しされ、四、五月ごろにも結論を得たいとしている。が、一元化を取りまとめる岸田文雄消費者行政推進担当相も言うように、各省庁の消費者行政を担当するすべての部門を統合すると、新組織が巨大化して小さな政府を目指すことと矛盾するし、巨大であるがゆえの問題も起きてくるだろう。

 首相が批判的に指摘した通り、消費者行政は内閣府、経済産業省、農水省、厚生労働省 、総務省が主として担当しており、食品表示や耐震強度の偽装、牛海綿状脳症(BSE)などの問題が起きたとき、情報共有の遅れや連携不足が見られた。こうした縦割り行政の弊害によって被害が拡大したともいわれる。その一番の原因はしっかりした司令塔がないことだと思われる。

 世の中への貢献を忘れた業者が増えたという社会のモラルの低下もある。役所だけが力 んでも限界があるのだが、目下の中国製ギョーザ問題でも、消費者から持ち込まれたものを検査する役所の初動が鈍かった。消費者行政が消費者に向いていないと言わざるを得ない。反応の鈍さにカツを入れ、的確に指示する司令塔を持つことが喫緊ではないのか。


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