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長良川河口堰盛り上がった? 実は周辺堤防が地盤沈下

2008年02月14日21時51分

 三重県桑名市の長良川河口堰(かこうぜき)が盛り上がったように見える。周囲の地盤が沈下したためで、基礎を打ち込んであって沈下しない河口堰が逆にずり上がったかのような状態になっている。左岸の接合部は最大で垂直に約8センチずれており、接合部の止水板も破断している。国土交通省は「内部に土も盛ってあり、直ちに危険はない」というが、住民から対策を求める声が出ている。

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コンクリートの接合部のずれが目立つ、長良川河口堰直下の堤防。右側が上流=三重県桑名市長島町で

 現場は旧長島町側で、伊勢湾台風当時の堤防にさらに約3.5メートル高く土を盛り、表面をコンクリートで固めてある。コンクリートは長さ約10メートル、厚さ30センチずつのブロック状に並ぶ。河口堰は地下50メートルの岩盤まで基礎を打ち込んであってコンクリートブロック部分も沈まないが、周囲は沈下が進み、ブロックなどの接合部がずれてきている。

 ずれは堤防下に向かって約7メートル続く。国交省木曽川下流河川事務所が塗った表面のモルタルははがれ、水浸透対策としてコンクリート内部に埋め込んであったゴム製の止水板も破断し、コンクリートにはひびが入っている。

 付近は日本有数の地盤沈下地帯。ただ、近くで国交省が95年から06年にかけ観測した沈下量2.2センチよりも、ずれは大きい。完成直後の堤防は土が圧縮されておらず、沈みやすかった可能性がある。付近は伊勢湾台風で波が当たって堤防が決壊した地域でもある。

 同事務所は定期的にずれを計測し、注視している。ずれが極端に進むと、内部の土が流出し、堤防の強度に影響しかねないが、今のところ河口堰も含め、問題はないという。揖斐川に接する右岸側はコンクリート堤防ではなく、ずれはみられない。

 古澤真一副所長は「周辺部も土砂を取り除いて基礎を打ち込むダムと違い、(直下だけを固める)堰や水門ではこうした『抜け上がり』は宿命。15センチまでずれたら、周辺のコンクリートをはがして土を入れ直すことになるだろう」と話す。

 これに対し、元長島町議で河口堰の建設に反対した大森恵さんは「社会的に大きく注目されていた建設当時なら国もすぐ手を打ったかもしれないが、今は高をくくって何もしないのか。住民の安全のために造ると言っていたはずの河口堰で、不安にさせられてはたまらない」と話している。

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