◇補助金カット「文化切り捨て」批判も
大阪府立の博物館などで4月以降に予定されていた特別展などが、橋下徹知事の補助金や委託料の大幅削減方針の影響を受け、中止に追い込まれるなど大混乱に陥っている。府の08年度暫定予算で、橋下知事は府費で行うイベントや講座などを認めない意向だからだ。府の25施設をゼロベースで見直すとしており、8月以降の本予算で復活するかどうかも不透明。関係者は「歴史教育や生涯学習の場を切るのはおかしい」と反発している。【坂口佳代】
「特別展の事業費は全く認められない。人件費と維持管理費以外はゼロ査定になる」。8日午後、府立弥生文化博物館(和泉市)に府教委から連絡が入った。4~6月に予定していた春季特別展「倭人がみた竜-竜の絵とかたち」が急きょ中止となり、担当者は関係企業や自治体への連絡に追われた。
約1000万円の補助金カットで、同博物館は常設展だけの「開店休業に近い状態」(幹部)となる。
特別展は少なくとも半年前から準備を始めるため、8月の本予算で補助金が計上されても、1年間は特別展を開催できないという。
府立近(ちか)つ飛鳥(あすか)博物館(河南町)でも、同様に4~6月の春季特別展が中止に追い込まれ、既に準備していたポスターや図録の作成をストップした。幹部は「他の博物館から展示物を借りる約束もあり、信頼関係が損なわれる」と話す。
府立女性総合センター(ドーンセンター)は、啓発講座や利用者向けの一時保育サービスの補助金がカットされた。毎年行う市町村職員向けの研修もできなくなる。
事業中止などの影響がない施設でも、今後の見直しで民営化・売却される可能性も残る。府立上方演芸資料館(ワッハ上方)の関係者は「収集した資料は府民の財産として残さないといけない。赤字だからと文化まで切るのは暴論だ」と話している。
◇35人学級も見直し--余剰教員、学力別クラスへ
橋下知事は9日、府内の小学1、2年生で実施している35人学級について、見直しを検討する意向を明らかにした。橋下氏は、08年度暫定予算の「知事査定」終了後、記者団に「(教員の人件費を)30億円出してプラスアルファするのはどうなのか。他の使い道がある」と述べ、見直しに伴う余剰教員を、自らが目指す学力別クラス編成に振り向ける考えを示した。
同日の協議で、府教委は、小学3~6年の40人学級でも4分の3のクラスが35人以下であると説明。橋下氏は「何を目指しているのか、きちんと議論したい。少人数の先生を習熟度別で使ってくれるのは大いに結構です」と、学力別クラス編成へのシフトを検討するとした。
35人学級は、太田房江前知事が公約に掲げてほぼ達成し、現場の教員の大半が肯定的な意見を持っている。予算編成の「知事査定」はこれまで、重要案件を中心に知事が決裁する方式だった。橋下氏は同日、各部幹部を次々と呼び込み、全事業を対象に査定を始めた。【大場弘行、犬飼直幸】
毎日新聞 2008年2月10日 大阪朝刊