2007年12月29日

「緑色の坂の道」vol.3916

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■読売新聞社 & 北澤事務所

「緑色の坂の道」vol.3914

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■パーソナルアドカード 「甘く苦い島 - Insula Dulcamara 」

「緑色の坂の道」vol.3913

 
       WILL-O-THE-WISP 4.
 
 
 
■ 国際埠頭の傍で車を停め、外に出てみた。
 路肩にアイドルしているのは市場が開くのを待つトレーラーの一群である。
 ETCの割引の関係で、時間帯がずれている。
 時々真っ黒な排気をサイドから吐き出している車体もいて、それは軽油の質なのだ。
 霧の中に突っ込んだかと思った。
 
 
 
■ 男たちは正月まで家に帰れない。
 澱のように殺気が溜まる。
 その後、車を出すのだが、決して近づいたり邪魔をしたりはしない。
 こちらは部外者だからである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3912

 
       WILL-O-THE-WISP 3.
 
 
 
■「JAZZ WILL-O-THE-WISP」というのはAL HAIG TRIO の名盤である。
 名盤というのは大体密度が濃いものだが、これも例外ではなく、少しだけ身構えて聴く必要がある。
 JAZZの世界は何処か求道的なところがあって、それも捨てたものではないのだが、私の場合、35を過ぎた辺りから綿パンのプレスは気にしなくなった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3911

 
       WILL-O-THE-WISP 2.
 
 
 
■ 余ったタクシーの群れを抜け、お台場へのアンダーを流す。
 新型のBMW製MINIが交差点で煽ってきた。
 ナンバーが地元ではなく、ONEとエンブレムにあったから新車なのだろう。
 私はつんのめった形で走る古いMINIが好きだった。
 たとえ5000キロ毎にグリスアップをしなければならなくても。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3910

 
       WILL-O-THE-WISP.
 
 
 
■ 作品とは不思議なもので、それが10年経っても問題がないことがある。
 
 
 
■ 疲れたので地下に降り、港の辺りに車を流した。
 いつものコースである。
 暗闇坂でコンビニに入り、新しい煙草とお茶を買った。
 
 

2007年12月25日

「緑色の坂の道」vol.3909

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■パーソナルアドカード 「甘く苦い島 - Insula Dulcamara 」

「緑色の坂の道」vol.3908

 
       ディア・オールド・ストックホルム 2.
 
 
 
■ 青山界隈の路地を、マイルスのバラードばかりを聴きながら走った。
 一方通行が多く、慣れないと迷う。
 低層のいいマンションがあって、隠れた事務所にはもってこいなのだが、来客の車と恐らくはゴミ収集が厄介かとも思われた。セキュリティも少し古い。
 
 
 
■ 昔この辺りに友人が住んでいて、羨ましく思ったことを覚えている。
 奴の親父さんがこの間亡くなって、離れていたものだから私は電報だけを打った。
 後でメールを送ると、なんの感慨もないという。
 次は俺達なのかと思うだけだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3907

 
       ディア・オールド・ストックホルム。
 
 
 
■ 実は北欧に行ったことがない。
 写真を仕事のひとつにしている癖に、私は旅というものが基本的に嫌いだ。
 何故かと言えば、戻ってこなくなる予感があるからである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3906

 
       窓辺の青い光。
 
 
 
■ その中に女が棲んでいて、部屋の中を泳いでいる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3905

 
       低く丸い月。
 
 
 
■ エントランスを出ると白い月が見えた。
 クリスマスの飾りつけの向こうに、取り替えたばかりの蛍光灯のように光っている。
 何時もとは違う人波が流れてきた。
 
 

2007年12月23日

「緑色の坂の道」vol.3904

 
       南瓜の日 2.
 
 
 
■ 鈍い黄色というのは、冬である。
 金色とはまたちがう。朱とも近くあって、すこし位置が異なっている。
 知らない間に、私たちは色で何ものかを認識しているのだが、もっとゆっくりしようか。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3903

 
       南瓜の日。
 
 
 
■ 先日南瓜を食わされた。
 いつもなんらかの理由がある。
 それはそれ、子供の頃は覚えていたのだが、酒を嘗めると忘れてしまう。
 冬は足許から近寄ってきて、見上げると空に隙間が増えていた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3902

 
       十二月のこのまっくらな真夜中に 7.
 
 
 
■ マイルスのアルバム二枚聴いていたらスコッチが切れた。
 何時だったか戴いた高いそれを取り出して悩む。
 蟹の缶詰のような扱いである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3901

 
       十二月のこのまっくらな真夜中に 6.
 
 
 
■ 1~4 は昨年書いた覚えがある。
 今、検索をしてみると2005年11月の末のようだった。
 たいして気分は変わっていない。
 
 
 
■ 変わったものと言えば、車や使うカメラボディ。
 カードの限度額や皺のひとつふたつだろうか。
 それよりも、いつのまにか自分の場所なのである。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3900

 
       十二月のこのまっくらな真夜中に 5.
 
 
 
■ 部屋を暖めながら、ひとつふたつ原稿を書いていた。
 年明けに企画を出すその草案のようなもので、紙袋二つばかりの資料が廻りにある。
 かたちになってきたかな、というところで酒を嘗め始めた。
 AVO というシガーを半分だけ吸う。
 空気清浄機がまわる。
 雨が強くなってきた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3899

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■パーソナルアドカード 「甘く苦い島 - Insula Dulcamara 」

2007年12月22日

「緑色の坂の道」vol.3898

 
       柚子湯。
 
 
 
■ 薄い雨が降っている。
 笑い声がきこえる。
 お湯を流して、外は雨だという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3897

 
       減った踵で。
 
 
 
■ そうした場で思うことはあるが、緑坂には書かない。
 こちらが誰かを見ているのと等しく、こちらも見られているのだが、ある場面、そこには一抹の寂しさが漂う。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3896

 
       Ps2.
 
 
 
■ 会合が続いてくたびれた。
 都心にあるホテルでうろうろする。
 久しぶりに取り出してみたら、シルバーのネクタイピンが曇っていた。
 タクシーが値上がりし、それから禁煙になっている。
 
 
 
■ 先日タイアを交換した。
 フロントが3ミリになっていたからである。
「消しゴムのように減る」という言い方があるが、確かにそうで、これが雨の首都高速などであったりするとやや怖い。リアが流れるのはいいのだが、フロントから持っていかれると終わりだからである。
 
 
 
■ いくつか候補はあったのだが、サイズが揃っていないことと違う銘柄にしたかったことでPs2を選んだ。4本まとめてである。
 製造年月日を大体揃えてもらう。
 100キロまでは慣らしなのでなんとも言えないが、少しダイレクトさに欠けるだろうか。今までのものが腰の硬いそれだったので、そう感じるのかもしれない。
 ここからどうなるのか。0.1単位で空気圧を調整しながら飼いならすことになるのだが、この手の車というのはほとんど盆栽の世界である。
 
 

2007年12月19日

「緑色の坂の道」vol.3895

 
       Stairway to Heaven 4.
 
 
 
■ この辺り、やや専門的な話になるので割愛するが、メディアによって文章や文体は変わる。
 つまりそれは速度なのだが、速ければいいというものでもない。
 それはデザインも同じことで、時間の推移に耐えられるかどうか。
 人を驚かせるようなそれは、じきに古くなるだろうと思っている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3894

 
       Stairway to Heaven 3.
 
 
 
■「夜の魚」一部に、ツェッペリンのこの曲が出てくる。
 
 
 
 日曜の夜なかば、葉子を送るため、第三京浜に乗った。
 雲は斑であり、風が吹いている。
 フロントフォークを伸ばしたハーレーが、芯のないマフラーで隣に並んだ。高圧縮の新しいエンジンだ。国産のゴーグルに旧ナチのヘルメットを被っている。
 昔、透明なチューブの中に麻薬をつめ、キャプテン・アメリカは南部へ向かった。撲殺された弁護士をニコルソンが演じた。
 架空の好況の後、暴力の気配が街に戻っている。
 終点のパーキングでジャガイモのようなものを食べ、缶コーヒーを飲んだ。
 葉子と運転を替わる。トンネルを幾つか越えた。道は比較的空いている。
「これ、ツェッペリンでしょ」
 ジミー・ペイジのギターは、まだ静かだ。
 
 
 
■ 今このサイトに載せているものは、後から編集を加えたもので、改行をかなり削っている。
 本来は一画面にせいぜいが5-10行。
 余白に意味があるのだが、これを活字に組むとなるとまた文法が異なってきていた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3893

 
       Stairway to Heaven 2.
 
 
 
■ その辺り、深夜は80で流れている。
 さぁっ、と銀杏の枯葉が舞い、そこに時々はプラタナスが混じる。
 東京の12月というのは、何処まで乾くかを競っている。
 薄めるに、強い酒が欲しくなるのだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3892

 
       Stairway to Heaven.
 
 
 
■ 男でも女でも。
 薔薇だけでは生きていけないところがある。
 
 
 
■ 昔、女が暮らしていた辺りに「薔薇100本3000円」とゴシックで描かれた看板の店があった。
 通るたびに思い出す。
 
 

2007年12月16日

「緑色の坂の道」vol.3891

 
       手に一本の薔薇を持って 2.
 
 
 
■ そんな緑坂を随分と前に書いた。
 薔薇にはいくつも種類があって、とても覚えきれるものではないが、冷めた紅茶を透かしたような色をしているものが好きだった。
 枯れたビロードにも似ている。
 それからどうするかというと、眠ればいいと思うのだ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3890

 
       手に一本の薔薇を持って。
 
 
 
■ 坂道を下ってゆく。
 だって、ロマンチックじゃない。
 ポケットに手を突っ込むと、中に忘れたコインがあった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3889

 
       薔薇式 3.
 
 
 
■ めんどくさいからここで寝ちゃおうか。
 と思うこともあって、そうなると事務所内浮浪者である。
 青いシートでテントを作る。
 コンロで料理したりして、そうなると火災報知器が鳴るのか。
 
 
 
■ 読売で緑坂を書いていた頃、浮浪者と書くのを憚られ「浮浪の人」とか表現していた覚えがある。
 そんなものは杞憂なのだが、お世話になった方々に迷惑をかけるのを僅かに恐れた。
 タブーという訳ではなく、場とか座敷の問題である。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3888

 
       薔薇式 2.
 
 
 
■ 今嘗めているのは、普通のスコッチである。
 ブレンドされたそれで、安い時にまとめ買いをさせた。
 
 
 
■ やるべきことが大量に残っているというのに、こうしているのは現実逃避である。
 窓を開け、例えば暗い庭や遠く高層ビルの点滅する灯りを眺める。
 それにはリズムがあって、都会のメトロノームのようである。
 眺めていると見入り、そこに椅子を持ってきたりする。
 遊んで暮らしたいよなあ。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3887

       薔薇式。
 
 
 
■ 一杯目の酒を嘗め始めた。
 先日のシガー・バーでは、珍しくブランデーを貰った。
 安くて煙草にあう奴。
 というと二本出てきて、一本はホストクラブでよく出る奴である。
 盆暮れに貰ったこともあって、そちらはやめにする。
 
 
 
■ これは一体どうやって飲むものなのだろう。
 尋ねると、このようにしてと若い黒服が指を廻す。
 眉毛は剃ってからの方がいいのかな。
 と、すこしからかう。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3886

 
       横浜ホンキートンク・ブルース 2.
 
 
 
■ この曲の作詞は、俳優の藤竜也さんである。
 日活でやさぐれたチンピラ役をやらせると抜群に旨かった。
 80年代の初めだろうか、煙草の宣伝でその鍛えられた背中がTVに映り、日活を知らなかったような女子大生にもファンが増えた。
 当時付き合っていた妙齢が盛んにそういうので、けっ、と思っていた覚えがある。
 20代の若造には、中年の男の口髭の意味なんてものは想像もつかなかった。
 不順、じゃね、不純だと思ったのだった。
 
 
 
■ 単に男の嫉妬なのだが、それはそれとして。
 藤さんの中年になってからの何本かの佳作を、今なかなか見ることができないでいる。
 確か北方謙三さんの原作だったが、賠償さんと競演したハードボイルド映画があって、そのラスト・シーンで主人公の藤竜也さんが車のハンドルを切る。
 想いを断ち切るかのようにぐっと廻すのだが、一瞬のタメというものが映像の間合いであった。
 
 
 
■ 間合いというのは文体に似ている。
 車はライトの四角いスカイライン。それも平凡な車種である。
 バブルの頃の日本映画というのは、当時の若い女性の髪形のように波打った装飾過多か、さわやか馬鹿な男たちが連なるものが多かったのだが、深夜漠然と眺めていたそれだけは印象に残っている。
 あらすじも忘れてしまったけれども。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3885

 
       横浜ホンキートンク・ブルース。
 
 
 
■ 革ジャン
 羽織ってほろほろほろ
(作詞:藤竜也)
 
 
 
■ この季節、緑坂の定番のひとつで、何度か書いた。
 原田芳雄さんが歌うそれは、若干歌詞が変わっていたりして、革ジャンと叫んだ後に一呼吸が入る。
 私はといえば、これを聴いた後にツェッペリンの「天国への階段」を続けるのだから進歩がない。
 別にいいんだどうだって。
 
 

2007年12月15日

「緑色の坂の道」vol.3882

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■パーソナルアドカード 「甘く苦い島 - Insula Dulcamara 」

2007年12月14日

「緑色の坂の道」vol.3884

 
       Wait Till You See Her 3.
 
 
 
■ バーテンダーは性格が悪い。
 と、黒服が言った。
 確かにその通りである。
 人懐っこいバーテンダーが作った酒は、キレが悪いような気になるから不思議なもので、そういう彼は浦安に住んでいた。
 可愛い奥さんがいたりもする訳である。
 
 
 
■ あの界隈、今の時分、ベランダが赤く青く点滅している。
 フェンスの向こうはすぐ海で、自転車がすぐ錆びるという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3883

 
       Wait Till You See Her 2.
 
 
 
■ 二日酔いである。
 やや風邪も残っているようだ。
 私はいつも風邪をひいているという説があるが、概ねそれは正しく、画期的に元気という瞬間は、おしなべて週に15分くらいだったかもしれない。
 ぐずらぐずら。
 そんな按配20年。
 
 
 
■ 先日会合の後、ひとりで車を拾い、飲みなおした。
 いつものシガー・バーである。
 この季節、このホテルには何度も足を運ぶのだが、寄るべきところがいくつもあってなかなか一人になることは難しい。
 おつかれのようで。
 と黒服が尋ねる。んん、そうなのかなと答える。
 背中に疲れが。はあ。
 その時にはこれで。
 と軽めのシガーを薦められた。
 
 
 
■ 後から女性同伴の方が入ってきて濃い目のチーズを頼んでいた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3881

 
       Wait Till You See Her.
 
 
 
■ 革のシートというのは冷える。
 近県でのMTGが終わった後、後はメールだなと思いながら都心へと戻った。
 ヒーターのスイッチを入れて、尻の辺りがむずかゆい。
 流していたら、ホンダのワンボックスに煽られる。
 なんだかどうでもいいのだ。
 
 
 
■ ゴトリ。
 と音がして缶コーヒーが落ちる。
 取り出すまでに少しばかり邪魔なものが入って、これは何時からだったろう。
 
 

2007年12月11日

「緑色の坂の道」vol.3880

 
       Quiet Nights 3.
 
 
 
■ Once Upon A Summertime
 南の広い荒れた土地で、ただ子供が遊んでいた。
 父はプア・ホワイトで、一日その辺りをうろうろしている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3879

 
       Quiet Nights 2.
 
 
 
■ マイルスのそれだが、舌も胃もざらざらになった。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3878

 
       Quiet Nights.
 
 
 
■ 子供が眠る。
 短い指を、開いたり閉じたりして。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3877

 
       ティファニーと弁当と。
 
 
 
■ 仕事の詰めの頃だった。
 弁当をいくつか買う。
 五分ホトいいですカ。
 私はコインを入れずに車をその前に停めていた。
 
 
 
■ 近くにある美術館で、宝石店の歴史が展示されているという。
 デザインされた垂れ幕が水銀灯の下にある。
 弁当屋の前で、光るような、中身がただの綿だと知れるようなブルゾンを着た30男が携帯で話している。
 青山的でなく六本木的で、プラネタリウムがあって24億で。
 誰に言っているのだろうか。
 誰でもいいが。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3876

 
       蒼女。
 
 
 
■ 最近どこも青い光ですね。
 バーテンダーがそういう。
 ダイオードが安くなったからね。
 私はぺルノーの水割りを貰う。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3875

 
       絹の夜。
 
 
 
■ この季節、会合が多い。
 無駄といえば無駄であるし、そうでないと言えばそうでもない。
 私は黒か紫系統のネクタイが好きで、時々締める。
 タイピンは大体席の途中で外す。
 場に応じて時計も、滅多にすることのない革ベルトにしたりして、これでも気を遣っている積りであった。
 
 
 
■ 先日は話を聴いていたらくたびれてきたので席を外した。
 担当者というか、そういった役目の方に許可を得てからである。
 どちらまでゆかれるんですか。
 と、午前中は不機嫌そうな妙齢が寄ってきたので、車だろうかと思った。
 いやいや場末まで。
 
 

2007年12月07日

「緑色の坂の道」vol.3874

 
       冬への黄色 3.
 
 
 
■ 黄色から茶へ。
 そしてその先の世界へ。
 黄八丈という柄、ないしは織があるのだが、このベースはその色である。
 格子縞があって、それから少しざらついている。
 
 
 
■ NYや東京都心の按配を描いているというのが私のところだという。
 時々そんな声も聞こえるのだが、それはそれ、歴史とは総体的なものだろうか。
 青磁の灰皿を眺めながら、海辺での撮影のことを思い出した。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3873

 
       冬への黄色 2.
 
 
 
■ くすんだ黄色には、銀、または鼠色がよく似合う。
 これは恐らく我が国特有の美意識で、デザインの世界で言えば狩野派辺りからの流れだろうか。
 映画監督の小津さんはアグファのフィルムを多用した。
 朱色がよく出るからである。
 この朱というのは、身近で言えば神社などで使われているその色で、我々の意識の底に刷り込まれているような気もする。
 私はと言えば、藍色と並んで、いくつかのデザイン・モチーフに応用した。
 ある公共団体運営のサイト表紙などにも、朱と芥子色が交互に顕れる。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3872

 
       冬への黄色。
 
 
 
■ 銀杏の紅葉をレモン色だと書いてきた画家がいた。
 彼女は銀座で個展をしていたのだが、仕事の都合で私はゆくことができなかった。
 この季節、どうしてこう忙しいのだろう。
 先日スタッフの体調が崩れ、無理に病院に連れていったことを思い出す。
 
 
 
■ 私は外苑西、いわゆるプラチナ通りと呼ばれている辺りで打ち合わせをしていた。
 MTGと書く場合もある。
 紅茶の専門店という話で、30になろうかという妙齢が現場を仕切っている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3871

 
       そこにいるだけのあいだ 3.
 
 
 
■ 東京の12月というのは乾ききっている。
 放っておけば湿度が30とか、セントラルのせいばかりとも言えない。
 先日買った加湿器は喜ばれた。
 こんどは湿度計お願いね、という按配である。
 
 
 
■ ま、そういったものだろうが、私は仕事場のために空気清浄器をつけ加えた。
 前のものが古くなったのである。
 センサーの感度がよく、今煙草に火を点けるとまわっている。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3870

 
        バークス・ワークス 3.
 
 
 
■ これは誰のピアノだったか。
 爪先立って踊るかのような音色である。
 誰にでも、一時、なにか別のものになれたような時間があって、それを何度目かの青春と呼ぶひともいるが、私はそうは思わない。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3869

 
       バークス・ワークス 2.
 
 
 
■ 北澤さんAVアンプってやっぱりダメっすよね。
 とか言っていたいたしかたのないYOMINET時代のチャッターがいた。
 奴の親父さんは大手代理店の偉い方で、つまり極道息子なのだが、それを言うと
「ひとのことはいえないじゃないですか」
 と、還ってくるのが常だった。
 本人が言うのではなく周辺がノベるのである。
 
 
 
■ 彼は音楽関係の道に進んで、親の車を乗り潰した後、男の5年ローンで国産ワゴンの新車を買った。
 前の事務所のあるところに送ってもらったのが今頃の季節である。
 俺、茅ヶ崎に共同でスタジオ作ろうと思うんすよ。
 カズマサさんの関係の方と一緒で、そろそろ親元出ようと思って。
 んん。でもおめえ、その辺り車停めておくと錆びるぞ。
 やっぱそうですか。
 
 
 
■ その後奴はどうしたのか。
 妹さんが美大に入った時は喜んでいた。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3868

       バークス・ワークス。
 
 
 
■ JAZZ好きには説明する必要もないが、どういう訳かこの季節、棚から引っ張り出して流したりする。
 LPもあるのだが、問題は針でして、マイクロのベルト・ドライブは埃を被ったままだ。
 私はオーディオ・マニアではないが、真空管の音はいいものだと思う。
 使われているボリュームの品質、例えば繋がっているダイオードを少し上のクラスに替えるだけで明白に音は変わる。
 その時には半田をする訳でして、その盛り方ひとつで何かが逃げたり逃げなかったりもするという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3867

 
       そこにいるだけのあいだ 2.
 
 
 
■ ザ・ピーナッツが歌う「モスラ」は車のHDDナビに入っている。
 東京タワーの傍を通る度、この季節、なんとはなしに思い出す。
 年中生理前といった按配で、細い癖によく喰う。
 
 
 
■ 実はその出だし何小節かはソラで言えるのだが、著作権が煩いのでやめにする。
 俳優の田宮二郎さんは駆け出しの頃、タワー下の交番巡査の役をしていたという。
 
 

「緑色の坂の道」vol.3866

 
       そこにいるだけのあいだ。
 
 
 
■ このコピーはいくつかのところで使った。
 初出は読売で、EPSONやコニカミノルタ。
 ここには名前を出さないがその他のところでなんというかであった。
 ネットで公開しているものは一部である。
 
 
 
■「ボーダー」というバブル期の裏返しのような名作がある。
 その主人公が「愛はいつもつかのまー」と歌う。
 私も十代の頃そのシングルを買って、ザワザワにうんざりすると歌っていた。
 その頃やりあっていた同級の女子が、先日某大学の図書館にいくと並んでいるシリーズ物の編著辺りで名前が出ていて、なんだよあの後博士まで行ったのかよと知れた。
 家庭の事情で一度は勤めに出たのである。
 確か大手の建築関係だった。
 
 
 
■ 彼女とは厄介の手前を行ったりきたりしたが、横顔が綺麗だった。
 父のことを話す時、少しばかりオクターブ高くなったことを覚えている。
 浮名を流したらしいのだ。
 何時だったろうか、わたしね、ピーナッツが好きなの。
 と、裏返った声のモスラを車の中で歌っていた。
 
 

2007年12月05日

「緑色の坂の道」vol.3865

 
       十二月の雨 2.
 
 
 
■ 細かい雨が降る。
 そのたびに色が濃くなる。
 風が吹いて少し散り、それから口紅を塗り直す。