【2月12日 AFP】過去に起きた地球温暖化に関する調査の結果、現代の気候変動が昆虫による農作物や森林への被害を加速するとの研究結果が、11日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された。
研究を行ったのは、ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)の大学院生Ellen Currano氏率いる研究チーム。
研究チームは米西部ワイオミング州(Wyoming)のビッグホーン盆地(Bighorn Basin)で発見された、暁新世・始新世境界温暖化極大イベント(Paleocene-Eocene Thermal Maximum、PETM)時期とその前後の時期の木の葉の化石5000個以上を調査した。PETMは約5600万年前に突然発生した温暖期。CO2濃度は一時的に3倍に増加し、気温は4度、一部では10度上昇する地域もあった。
PETM期の木の葉の化石を調べた結果、この時期の葉はその前後の時期のものより昆虫による被害が極めて深刻だったことが判明した。つまり、同時期には多くの種類・数の昆虫が、より多くの葉を食べていたことを示している。
既往の研究から、気温の上昇に伴い動物がその種を増やすことが分かっている。またCO2濃度が高い環境下で育った植物は栄養分が少ないため、昆虫はより多くの葉を食べる必要があるという結果が示されている。
PETMの時期も、二酸化炭素(CO2)濃度の上昇により植物から必要な栄養分を摂取することが難しくなっていたことが、昆虫の植物を食べる量が増えた原因だと、専門家らはみている。
つまり、先史時代に起きた気温の上昇にともない昆虫の種類と植物摂取量が増え、その結果植物が受ける被害も増大したと、研究チームは推測する。
さらに地球温暖化の時期は、気温上昇により昆虫が従来生息していた熱帯から緯度の高い新たな生息地に移動することが可能だったとされている。
「もし当時起きたことが現代にも起こるとすれば、熱帯から亜熱帯に生息する昆虫が緯度を南北に上昇し、それらの地域に生育する植物を食べる被害が広がることになる」とCurrano氏は指摘している。(c)AFP
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