4月からスタートする75歳以上の後期高齢者医療の診療報酬について、中央社会保険医療協議会(中医協、会長=土田武史・早稲田大商学部教授)は2月13日の総会で、後期高齢者の外来医療や在宅医療などで地域の開業医らが受け取る個別の点数を決定した。高齢者の健康状態などを継続的に管理する「後期高齢者診療料」を600点と高く評価し、在宅医療を進める。「医療費抑制の大本命」とも言われる後期高齢者医療制度は、2008年度診療報酬改定の緊急課題である「病院勤務医の負担軽減」の陰に隠れながら着実に進んでいる。しかし、在宅移行の先にある「終末期医療」が見えない。(新井裕充)
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主治医制で医療費は抑制されるか 厚生労働省は、長期入院の高齢者を積極的に在宅復帰させた上で、地域の開業医らが中心となって在宅医療を進めていくというデザインを描いている。
75歳以上の高齢者は複数の疾患を抱えていることが多いため、高齢者を継続的に診る医療機関を1つの診療所などに限定して頻回受診や重複投薬、重複検査を抑制する。
昨年、後期高齢者医療制度の在り方を審議した社会保障審議会では、複数の委員から「1人の主治医に限定するとフリーアクセスを阻害する」という批判が何度も繰り返された。
これに対して、保険局の原徳壽医療課長は「複数のいろいろな病気を持っている人が複数の診療所や病院で治療することはある。しかし、すべてのところでレントゲン撮影をする必要はない。患者の健康状態を総合的にチェックする医師は1人でお願いしたい」と説明してきた。
また、主治医のイメージについて原課長は「患者の生活状態や受診歴を把握し、高血圧の人に『糖尿病の検査をしてください』と指示するような医師」と説明している。
主治医が受け取る「後期高齢者診療料」は、2月13日の中医協総会で600点(月1回算定)に決まった。後期高齢者診療料を算定するには、4日間の研修を受けた医師が主治医となり、患者の同意を得た上で定期的な診療計画を作成する必要がある。
■ フリーアクセスの制限と「尊厳ある死」
厚労省が昨年11月28日の中医協小委員会で示した「高齢者総合診療計画書(案)のイメージ」によると、「他院での検査等」という項目に「1月・○○眼科診療所」「3月・腰の定期検査▽▽クリニック」という記載例が示されている。
しかし、このような診療計画書で「管理」することになれば、フリーアクセスは制度としては死なないものの、実質的に制限されていくのではないだろうか。
そして、その先にあるのは「尊厳ある死」だろうか。
今回、新設された「後期高齢者終末期相談支援料」(200点)は、終末期の治療方針を患者や家族と話し合って「書面」にまとめた場合に算定できる。意識不明などで患者の自由意思を確認できない場合は、主治医や看護師らの「医療・ケアチーム」が家族と話し合って終末期の方針を決定する。
後期高齢者医療の個別点数を決定した2月13日の総会で、勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、終末期における意思確認の難しさなどを指摘した。
「いろいろなガイドラインがあり、医療機関の倫理委員会で真剣な議論が続けられている。『一度は意思表示をしたが、話をしているうちに意思が変わることもある』とか『どのタイミングで情報を提供していくのか』という議論がされている中、この制度が始まる。『今後どうなるのか不安だ』という現場からの声がある」
「私も気になっていた」と、大島伸一委員(国立長寿医療センター総長)が続けた。「死の問題は聖域。尊厳ある死、理想的な死が“絶対値”で議論される」として、終末期医療の制度化に伴う“悩ましさ”を語った。
「現実には110万人が亡くなっていて、2万人が孤独死、3万人が自殺という状況が起きている。孤独死の予備軍が高齢者に増えているという現実もある。尊厳ある死と現実がかい離していることを軽く考えるべきではない」
土田会長も「終末期における情報提供の在り方は検証部会で取り上げて検証していただきたい」と理解を示した。
08年度診療報酬改定の答申書には、「後期高齢者診療報酬体系の創設に伴い創設された診療報酬項目については、高齢者の心身の特性に応じた医療提供に資するものとなっているかという観点から、実施後の状況について検証を行う」との意見が付されている。
更新:2008/02/14 16:10 キャリアブレイン
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高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子
医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。