2007-06-26 監視
■[政治]監視 
自衛隊情報保全隊が、イラク派遣に反対する政党や市民などの情報を収集していたことを共産党が報告した。
日本共産党のサイトから入手資料・記者会見の映像をダウンロードすることができる。政府は反政府の言動をする人を監視し迫害するのはよくある。近年ではオウムの信者が転居の自由を制限されたことがあった。
栗栖弘臣さんが『日本国防軍を創設せよ』（2000、小学館文庫）で書いている。
今でも自衛隊は国民の生命、身体、財産を守るものだと誤解している人が多い。政治家やマスコミも往々この言葉を使う。しかし国民の生命、身体、財産を守るのは警察の使命（警察法）であって、武装集団たる自衛隊の任務ではない。自衛隊は「国の独立と平和を守る（自衛隊法）」のである。この場合の「国」とはわが国の歴史、伝統に基づく固有の文化、長い年月の間に醸成された国柄、天皇制を中心とする一体感を共有する民族、家族意識である。
警察が市民を監視することは昔からあったことで今にはじまることではないようだ。（たとえば青木理『日本の公安警察』（2000、講談社現代新書）、鈴木邦男『公安警察の手口』（2004、ちくま新書）、鈴木邦男『公安化するニッポン―実はあなたも狙われている! 』（2005、WAVE出版）、 島袋修『公安警察スパイ養成所』（1995、宝島社））
昔からずっと監視されていてあたりまえとされていたのに今回やけに騒ぐ人がいるということは自分は監視されているという自覚がなかった人がいるということなのだろう。「朝日新聞」の投書をみると、13歳の森田美咲さんも、河野富士夫さんも、江間幸雄さんも犬伏正好さんも西光之輔さんもみな自衛隊に抗議する論調である。
「イー・ウーマン」で「自衛隊の「市民監視」、おかしいと思いますか？」というテーマを扱っていて、監視されていることに衝撃を受けたという人がいる一方でどうして共産党が保全隊の資料を入手できたのかが疑問という人もいる。「「市民監視」が絶対いけないかというと私はNoです。」という人もいる。
共産党が今回の事実を告発することで、共産党にいい感情をもっていない人は「共産党は自衛隊の中にも手をいれるこわい政党」というイメージを与え距離をおいてしまい、今の体制に批判的だが監視されていることを意識していなかった人には、監視されているから体制を批判する集会にでたり、抗議の署名をするのをやめようというような萎縮効果があるのではないだろうか。内部告発すべきだと思った人が自主的に日本共産党に提供したのではなく、体制に批判的な人と一般人との間に距離をおかせるためにあえて体制側の人間がもっている情報のごく一部をもって日本共産党に売り込みにいったのかな、と想像してしまう。今回でてきたものすべてが本当に防衛省の人間が監視していたのかも疑問である。集会に防衛省の人間がきていても勝手に写真を撮ることはできないのだから。偽メール事件みたいにガセネタでないと言えるのだろうか。
斎藤貴男さんの『プライバシー・クライシス』（1999、文春新書）には
広くは知られていないが、そこに関係する人々にとっては常識でしかない知識を、まず承知しておきたい。政府が集めた個人情報が現実にどう活用されているのかを示す典型的な例−。
引越し、新婦夫妻の新所帯、親元をはなれての独立・・・・。何であれ、われわれが新しい町に住み始めると、近くの交番から警察官がやってきて“巡回連絡カード”への記入と提出を求めてくる。カードには世帯主と家族の氏名、生年月日、続柄、本籍など住民票の記載事項の他、職業や勤務先、通学先と学年、同居人の素性、保有自動車の種類と保管場所、非常の場合の連絡先として親族または知人等の住所氏名の欄などが設けられる（図�供檻院法�
何も考えずに素直に応じれば、とりあえず何も起こらない。が、拒否すると怖いことになる。
警察幹部の打ち明け話。
「巡回カードを嫌がる人は、それだけで反警察的・反体制的な好ましくない人物として調査の対象になります。マンションの大家や入所をあっせんした不動産屋をはじめ、周囲を徹底的に洗う。場合によっては尾行も行います。あくまでも防犯の見地からの活動ですから、調査の結果、特にマークする必要がなければ、それ以上は追いません。ただし巡回カードに非協力的だったという事実は、所轄警察署の地域課に保存される母簿に残る。共産党員や過激派、オウムのような連中だと、その後も監視下に置くことになります」
という記述や
巡回カードの母簿に残された記録は、その住民が犯罪に関わらなくても、そのまま警察署の倉庫で眠り続けるわけではない。つぎのような形でも活用される。
「現在では、大手と呼ばれる企業のほとんどに元警察官が天下っています。彼らは総会屋への利益供与が発覚した『味の素』のように、裏の仕事に携わるだけでなく、社員を採用する際にも活躍する。入社志望者やその親の身元、思想信条に関する情報を、警察から入手するのです。共産党員はもちろん、巡回カードへの記入を拒否したりして地元の警察に反体制的とみなされている人やその子息の就職は難しくなるわけです」
八〇年代半ば頃まで、多くの企業は入社希望者に提出させる書類に両親の職業や学歴、詳しい家族構成まで記入させていた。今日、企業がこの種の情報を求めるのはご法度とされる。一般のプライバシー意識の高まりと労働省の行政指導の成果だったが、何のことはない。企業は志望者の周辺情報を本人にたずねないかわり、警察から手に入れるようになったのである。
という記述がある。
私も20年くらい前から監視されていると思うときがある。大学の学部生時代にタテ看板の内容も読まないで活動している人に悪いイメージをもってはいけないと、大学内の左系のタテ看板をみていると、それを見張っている人がいた。
以前女性センターにたびたびいって集会に参加していたら会社に報告がいって会社から叱られた。
最近はときどき尾行がついていると感じることがある。
こういう監視による萎縮効果について伊藤真さんが「伊藤真のけんぽう手習い塾：第47回」で書いている。
何よりもこうした自衛隊の行為によって、国民の集会や表現活動に対して萎縮効果を与えてしまう点に大きな問題があります。間接的に表現の自由への侵害となるのです。
こうした監視が行われ、その情報が国家によって保有されているとなると、市民は安心してこのような集会に参加できなくなります。学生など、もしこの情報が公務員試験に合格した後にマイナスに評価されたらイヤだと思ったり、裁判官や検察官をめざす学生は司法試験に合格した後の任官する際に不利益に扱われないかなどと心配したりしてしまいます。
もちろん、これらが杞憂であったとしても、本人がこうして萎縮してしまうようなことを権力側が行うこと自体が問題なのです。自由な表現が保障されない社会は健全ではありません。自分の言いたいことが自由に言えないような社会や、権力に不都合なことを言いよどんでしまうような社会は、憲法がもっとも嫌う社会です。
萎縮してしまうのは発言・集会参加という行為にとどまるだろうか。ネットで本を買ったり、ポイントのたまるカードを利用し個人と紐付けされる形で体制を批判する本を買うことも怖くなる。かといって小さな書店からそういう本を注文しても記録が残りそうで怖い。また斎藤貴男さんが「監視社会の恐怖」（田島泰彦、斎藤貴男編『超監視社会と自由』所収）で早稲田大学や東京大学の駒場キャンパス内にも監視カメラがつけられたことを書いている。
携帯電話で人の動きが把握できるので普段は携帯を家に置いている。PASMOによって行動が監視されることをおそれてPASMOももたない。
http://www.janjan.jp/living/0706/0705316449/1.php
によると小谷洋之さんが
個人情報保護法ができた時、社民党の保坂展人衆議員が、携帯電話の位置情報について、法務委員会でNTTドコモの法務部の人間に質疑をしたそうです。警察の位置情報の照会にどうやって応じるのかと聞くと、令状がなくても任意で、（義務じゃない場合でも）どんどん教えている、と答弁したそうです。位置情報をどうやって把握するのか、という質問に対しては「過去ですか？ 未来ですか？」とNTTドコモの人間が答えたそうです。未来の場合、電話番号を入れておくとそこから追尾が始まる。過去ではなく、常にどこにいるかリアルタイムで追尾できるシステムになっているそうです。
携帯電話の位置情報だけでなく、Suica、IC電子乗車券、クレジットカード、メールなどで、交友関係や、どこに移動しているのか、どこでどんなものを使ったのか、個人情報を固めるために、警察はまず携帯電話を抑える傾向になっているそうです。
と述べたらしい。
植草一秀事件を検証する会『植草事件の真実』（2007、ナビ出版）ではりそなのインサイダー疑惑を調査していた植草一秀さんが起訴された事件は冤罪だと主張している。
最近、東京大学教員の蟻川恒正さん、NHKの今井洋介さん、山口智也さんが痴漢で逮捕されたが、反体制の人が最近よく逮捕されるように感じられるのは偶然だろうか。
蟻川恒正さんは樋口陽一門下で人権と国家権力の関係についての論文もある。今井洋介さんは「ＮＨＫスペシャル復興 〜原子野から立ち上がった人々〜」のスタッフ。山口智也さんはＮＨＫの「ＥＴＶ特集 焼け跡から生まれた憲法草案 」のディレクターで日本国憲法が押し付けというのを批判する内容を報道した。明大前、桜上水間でほおずりをして逮捕というがほおずりだけをする痴漢なんてめずらしい。
『権力の情報管理を許すな』で大谷昭宏さんが次のように書いている
少しばかり政治活動をしているあなたが、ある日、電車の中で隣に座っていた女子高生らしき女性から、「この人、痴漢」と大声を上げられた。身に覚えのないあなたは、誰がやったんだと、キョロキョロしているうちに、そばにいた屈強な男２人に取り押さえられた。シクシク泣いている女性と一緒に、駅事務所まで連れて行かれ、やっていない、と叫んでいるうちに、駅員の通報で駆けつけた警官に逮捕されてしまった。
気がつくと、あなたを連行してきた２人の男は、先を急ぐのでと立ち去ってしまっている。
もちろん、あなたは頑強に否認。
政治的活動で少しばかり世間に名前を知られていたあなたの犯行は、大々的に新聞、テレビで取り上げられてしまった。
もちろん警察は、性犯罪の被害者だということで、あのときシクシク泣いていた女性の名前は、公表しない。
だが、検察は嫌疑なしの不起訴なのか、嫌疑不十分の不起訴なのか、その不起訴理由は公表しない。
あなたが冤罪だったかどうかさえ、知りようもない。
あなた自身や、メディアが事実だったかどうかを確かめるにも、被害者がどこの誰かさえわからない。
もちろん、立ち去った２人の男の素性も調べようがない。
世間に残ったのは、あなたが痴漢活動家だったという大きな新聞記事とテレビ報道だけ。
いまもあなたの胸には、あなたの政治的組織に打撃を加えようとした公安警察の仕掛け、被害女性は公安警察の関係者、立ち去った男２人はともに公安組織の人間、そんなもやもやとした疑いが残るのだが、いずれも匿名の名のもとに、確かめる術さえないのだ。
2003年4月平田聡公認会計士がりそな銀行を監査中に自殺した。2006年12月17日朝日新聞で敏腕記者として知られた論説委員鈴木啓一さんが「自殺」した。鈴木さんは、1980年代後半に起きたリクルート事件の発端となった疑惑をつかんだ人である。2006年12月3日、住民基本台帳ネットワークを拒絶している住民への適用は違憲とした大阪高裁判事の竹中省吾さんが「自殺」した。2007年4月7日読売新聞政治部記者の石井誠さんが自宅で変死した。2006年1月18日には野口英昭さんの怪死事件もあった。
不審死した人物というと岩下久美子さん、金善慶さん、東村山市議朝木明代さんなどもいるので最近偶々多いのかもしれないが。
2007年3月22日に神奈川県内の病院で間質性肺炎のため死去した城山三郎さんのように病死した人すらほんとうにみんな病死なのかと疑ってしまう。
また、和歌山カレー事件で逮捕された林眞須美さんは冤罪と主張する「林眞須美さんを支援する会」の中心の三浦和義さんが2007年4月5日に万引きで逮捕された。これはよくある現行犯逮捕ではなく、3月19日に店員が、在庫確認をしていたところ商品が足りないことに気付き、防犯ビデオを確認し3月30日に来店した三浦和義さんが「うっかりしていた。金は払います」といって帰ったところ110番通報された。
2007年5月16日真の人権擁護を考える懇談会のメンバーでもある奥野信亮衆議院議員私設秘書が大麻所持容疑で逮捕された。
『植草事件の真実』の執筆者の一人が、ブログに次のように書いている。
今日、私の自宅にお巡りさんが来て、家族に私のことを聞いたそうである。たとえば仕事はどうしているかとか。身辺調査にしてはかなりの違和感があったそうだ。これは、とうとう私も具体的な監視下に置かれるのかなという感じがしてきた。そういえば日曜日の午前中も自宅のそばに不審な車が行ったり来たりしていたのを私自身が確認している。
「植草事件の真実」を発売したすぐあとであるから、目を付けられた可能性は感じている。しかし、私には犯罪歴がないし、官憲に狙われるような政治活動をしたこともない。もし、私が警察に目を付けられ、『何がしかの』微罪で捕まることがあるとすれば、それは植草事件の背景を追及していることに関わっていること以外には考えられないことである。
またブロガーはマスコミの発表をもとに書いているが警察発表が事実でないこともあるということを書いた記事がある。「噂の真相」2001年7月号「浅草女子短大生殺害事件報道に見る 警察・マスコミの情報操作を暴く! ーーレッサーパンダ帽の犯人の精神薄弱が伏せられた理由」では山口誠さんは逮捕されたと報じられているが、実際は勤め先の社長に連れられて出頭してきたという。
また、「朝日新聞」2007年06月23日07時45分配信「社会保障番号「国民カード」導入検討 住基ネットと連携」によると
政府・与党は２２日、年金や医療保険、介護保険の個人情報を一元的に管理する「社会保障番号」を１１〜１２年度をめどに導入し、ＩＣチップ入りの「国民サービスカード」（仮称）を全国民に１人１枚ずつ配布する方向で本格的な検討を始めた。住民基本台帳ネットワーク（住基ネット）と連携させることで今後は年金記録の入力ミスはなくなるとしており、国民は年金記録や健康診断結果などをパソコンでいつでも見られるようになる。
「消えた年金」が今メディアで取り上げられているのも国民の情報を一元管理させようという意図を汲んでのものなのだろうか。
うまく説明できないが、なんか非常に不安になる。