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大学図書館の蔵書、学生が選ぶ 西日本の大学に広がる

2008年02月09日

 大学図書館が購入する本の一部を学生たちに書店で選んでもらう「ブックハンティング」が、西日本の大学を中心に広がっている。ベストセラー小説や旅行ガイド、実用書など、これまでの大学図書館にはあまりなかった本が次々と蔵書に加えられている。インターネットで簡単に資料を調べられるようになるなか、図書館離れを食い止めるとともに、大学の魅力づくりに役立てたいというねらいもあるようだ。

 高松市内の大型書店で1月上旬、高松大と系列の高松短期大の学生7人が「ブックハンティング」に参加した。短大秘書科2年の藤原詩織さん(19)が選んだのは「『もうひとりの自分』とうまく付き合う方法」。「就職活動中なので、将来を不安に思うことも多い。背中を押してくれる本に目がいきます」

 学生たちは手にした携帯端末で気に入った本のカバーに表示されているバーコードを読み取っていく。「予算」は1人あたり3万円で、漫画やグラビア写真集など「大学図書館にそぐわない」もの以外は自由。選んだ本のデータは書店のコンピューターに転送され、チェック後に一括して発注される仕組みだ。

 高松大は年間3千冊の購入図書の大半を教員や図書館の司書が選んでいた。年間貸出冊数はここ数年、約1万冊で頭打ち。学生の「もっと読みたい本を入れてほしい」という声を反映しようと、図書館関係者が集う研究会で知ったブックハンティングを導入した。

 1月のブックハンティングでは約150冊を購入。数学や経済などの専門書のほか、映画化された「クローズド・ノート」(雫井脩介)、テレビドラマ原作の「鹿男あをによし」(万城目学)などのベストセラー小説がずらり。旅行ガイド「地球の歩き方」なども並ぶ。高杉和代・図書課長は「柔軟な本選びができた。これを機に利用者が増えてくれれば」と期待する。

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 ブックハンティングの“元祖”とされるのが、大阪産業大(大阪府大東市)。98年秋、大産大図書館が選んだ「選書モニター」の学生8人が府内の大型書店で約640冊を選び、蔵書に加えたのが最初だという。

 07年は留学生を含む26人が参加し、約1100冊を購入した。学生が選んだ経済関係の蔵書を見てみると、「ヤバい経済学」「ミリオネーゼの起業入門」など目を引くタイトルの本が多い。

 渡辺正宏・綜合図書館次長(61)によると、貸出冊数が前年比1.6倍に増えた年もあり、効果は表れているという。

 00年以降、阪南大(大阪府松原市)、神戸学院大(神戸市)、帝塚山大(奈良市)も導入した。

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 国公立大学にも昨年からブックハンティングが広まっている。大阪大付属図書館が昨年12月に実施した「学生選書ツアー」では、米国の作家ジョン・アービングの「また会う日まで」など約400冊を蔵書に加えた。

 阪大図書館の学生利用者数は02年度に88万5849人だったのが06年度は77万1103人で、年々減少している。04年の国立大学法人化を機に大学間で特色の競い合いも盛んなだけに、担当者は「学生のニーズもつかめる。サービスを拡大することで独自性を発揮していきたい」と意気込む。

 ほかにも岡山大、佐賀大、愛媛大などが07年に相次いで始めている。

 筑波大大学院図書館情報メディア研究科の永田治樹教授(図書館情報学)は「日本の大学図書館は欧米と違って授業との結びつきが薄く、学生が足を運ぶ回数が少ない。ブックハンティングは、学生の図書館利用の足がかりとして意義がある。学生のニーズを反映させながら、教育に必要な図書を充実させていけるかが課題だ」と話す。

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