地域の中核病院などで働く医師の負担軽減策を柱にした、2008年度の診療報酬改定の中身が固まった。緊急の課題である医師不足への対応に約1500億円を充て、救急搬送した妊産婦の入院報酬などを引き上げる。
診療報酬引き上げは、患者の自己負担の増加につながるものだ。見直しがどれだけ医師確保に効果があるか、慎重に見極めたい。
今回は、医師の技術料など「本体部分」を0・38%引き上げる。医療費の伸びを抑えるためにマイナス改定が続いていた。本体部分は8年ぶりのプラスである。
増えた分を、産科や小児科を中心に、仕事の負担が大きい病院勤務医の待遇改善につながるように配分したのが特徴だ。
例えば、合併症などでリスクが高い出産や、小児医療の中核的な病院への報酬を手厚くした。手術料も一部引き上げている。医師が治療に専念できるように、文書作成など事務を手助けする職員を病院に置くことも可能にする。
診療だけの施設や、ベッドが20床未満の診療所が朝や夜間に診察時間を延ばした場合に、報酬を引き上げる。時間外に軽症の患者を診る施設が増えれば、患者が集中する病院の負担が減るとの期待からだ。
今回の改定で、争点の一つは再診料をめぐる問題だった。
現在はベッド数200床未満の病院の再診料は570円、診療所は710円と差が大きい。差を縮めるために、厚生労働省は診療所の報酬を引き下げる方針を打ち出したものの、診療所の開業医が多い日本医師会などが反発。診療所は据え置きで、病院の再診料を30円上げることで決着した。
診療報酬は全体の増減を先に決め、中央社会保険医療協議会が個々の治療や入院などの価格を決める仕組みだ。改定の内容は、医療政策の姿勢を反映したものである。
医師が足りずに診療科を減らす病院が相次いでいる。医療崩壊の危機が広がる状況を考えると、今回の改定は勤務医の支援策として中途半端な印象がある。
勤務医対策の約1500億円は、平均すれば病院の収入が1%ほど増えるだけだ。医師をつなぎ留める策になるか、疑問が残る。
診療所と病院の再診料の差も大きいままだ。患者の病院志向に歯止めをかけるには、診療所の再診料を下げてもよかった。
4月からは後期高齢者医療制度が始まり、保険料や医療費の使い方に関心が高まるはずだ。報酬改定により、医療は充実するのか。患者の目で今後を見守りたい。