勤務医不足にどれだけの歯止めがかかるだろうか。
中央社会保険医療協議会(中医協)がきのう、公的医療保険から医療機関に支払われる二〇〇八年度の診療報酬の改定案をまとめた。産科や小児科などの医師不足で深刻さを増す、勤務医の負担軽減をどう図るかがポイントとなっている。
緊急の課題としてまず対応策を示した。その中身は、合併症があるなどリスクの高い出産の加算拡大▽緊急搬送された妊産婦の入院加算の新設▽地域の小児医療の中核的役割を果たす医療機関に対する報酬充実―など。さらに全国各地で相次いだ妊産婦の「たらい回し」への対策として、救急搬送を受け入れる病院への手当を厚くし、勤務医の事務作業を補助する職員配置にも加算する。
昨年末、医療機関の収入となる医師の技術料にあたる「本体部分」の0・38%引き上げが決まり、中医協が個別項目の調整をしていた。改定案ではこの引き上げ分による約千五百億円を勤務医対策に充てる。
財源は、より高収入とされる開業医(診療所)への報酬から病院向けに振り分ける、としている。ただ病院の収入増は平均1%程度。収入増分を病院経営者がすべて人件費に回すとは考えにくい。どれだけ勤務医の負担を軽くすることができるかは不透明だ。
診療報酬は、小泉改革以来五年間、マイナス改定が続いてきた。医療費抑制策を推し進めた結果、島しょ部や山間地など地方から産科や小児科の診療をとりやめる病院が相次ぎ、地域医療は崩壊寸前ともいわれている。
昨年末、島根県が実施した勤務医調査では、現行の診療体制で各施設が必要とする千百四十四人の医師数に対し、二百二十七人が不足している、との結果が出た。
診療報酬のマイナス改定や医師不足に伴う患者数の減少が悪循環を生み、病院の経営については60・4%が「悪くなっている」と回答。月に七回以上の当直の実態もあり、過酷な勤務実態が浮き彫りにされた。改定をどう生かすかは、何よりまず医師を確保して待遇改善を図るなど、行政とのきめ細かな連携も必要だろう。
患者は医療機関の窓口や薬局で原則三割を負担する。診療報酬が勤務医にどう支払われるかは病院経営者の裁量である。今回の改定が勤務医の待遇改善にどうつながったか、見極める目も持ちたい。
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