中央社会保険医療協議会(中医協)が2008年度の診療報酬改定を厚生労働相に答申した。答申の焦点の1つは、山間部や離島を含む地方の病院で働く産科、小児科などの医師不足問題にどう対処するかだった。
医療機関が受け取る診療報酬の体系は病床数20以上の病院と、それ未満の診療所との間に差がある。答申によると病院の診療報酬をある程度増やすが、それが病院勤務医の十分な待遇改善につながるとはいいきれない。限られた財源をさらに効率的に配分することで、医師の地域偏在を和らげる努力が大切である。
勤務医支援策は(1)産科や小児科を含めて病院の診療報酬を1500億円増やす(2)医療機関の収入の柱の1つである「再診料」を中小病院は30円上げて600円にする――などだ。
1500億円はリスクの高い妊婦を受け入れる病院、小児科の専門病院、外来診療を控えて入院医療に特化しようとする中核病院などに配分する。勤務医を手助けする事務補助職を置く病院の診療報酬も増やす。
産科医や小児科医の成り手が減っているのは、昼夜を問わずに過酷な勤務を強いられているためだ。患者やその家族に医療訴訟を起こされる可能性も高い。こうした困難に直面している病院に診療報酬を厚く配分するのは当然である。それは患者の安心にも直結する。
しかし不十分な点もある。病院と診療所の再診料の格差是正がさほど進まなかったことだ。診療所は710円に据え置くので改定後も病院より110円高い。一口に診療所といっても千差万別だ。夜間診療や往診をいとわず地域のかかりつけ医の役割を担う開業医がいる一方で、駅前などのビルに開業して夜は一切診療しない医師も増えている。そうした「ビル診療所」などは再診料を下げるべきだった。それによって生じる財源を病院の再診料に回せば、勤務医の負担はもっと軽くできた。
政府は08年度予算案に診療報酬本体を0.38%上げる方針を盛り込んでいる。その原資の一部は大手企業などの健康保険組合の負担を高めて捻出(ねんしゅつ)することになる。そうしたことも考えると、診療報酬の改定作業には患者や国民の声をもっと反映させるべきだった。