◎「熱狂の日」音楽祭 定着に向け盛り上げたい
今年のゴールデンウイークに金沢市で開催される「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の
日』音楽祭2008」の主要プログラムが決まった。フランス発祥の同音楽祭は世界で六番目、国内では東京に次ぐ開催となり、「ベートーベンと仲間たち」をテーマに金沢駅周辺がクラシック一色となる。世界的な音楽の祭典が金沢に定着するよう市民、県民が積極的に参加して盛り上げていきたい。
ナントの音楽祭提唱者であるルネ・マルタン氏は開催概要を発表した際、金沢を選んだ
理由として文化都市としての趣や街の美しさ、自然、オーケストラ・アンサンブル金沢の存在などを挙げた。北陸新幹線開業へ向け、都市の魅力づくりを進める金沢市や石川県にとっては願ってもない追い風である。誘致して一段落でなく、この音楽祭をどう成功させ、定着させていくか、それぞれ知恵を絞る必要がある。
マルタン氏が金沢の文化でとりわけ深い関心を示したのは邦楽であり、「洋楽というコ
ンテンツと邦楽を融合すれば東京やヨーロッパにも輸出できる」と指摘した。今回は地元の能楽師も舞台に立つ「能舞とベートーベン」という企画も用意され、和洋の異質な音楽ジャンルを組み合わせれば、どの開催都市にもない金沢の個性となるはずである。
マルタン氏は音楽祭の精神が金沢でも継承されることに期待感を示したが、その精神は
ナント市のヤニック・ガン副市長の言葉に見て取れる。今月上旬、十四回目となるラ・フォル・ジュルネを視察に訪れた金沢音楽祭実行委事務局メンバーに対し、副市長は「音楽祭は豊かな精神文化を求めて始まった。回数を重ね、市民の人間形成にとってもよい影響を与えている」と手ごたえを語った。観光客の誘致や経済波及効果はあくまで二の次で、クラシックを通して市民が心を耕し、感性を養うのがそもそもの発想である。副市長の言葉を借りれば「人間性の再生プログラム」であり、そうした明確な位置づけが音楽祭に深みを与えている。
音楽を通して市民と演奏者、あるいは市民同士が交流の場を持ち、土地への愛着や誇り
を再確認する。地方都市ナントで生まれた音楽祭の意義をマルタン氏はそう表現する。金沢もその精神をぜひ継承したい。
◎沖縄米兵少女暴行 日米の関係を損なう愚行
また沖縄で遺憾な事件が起きた。中学三年生の少女を暴行した疑いで米海兵隊の二等軍
曹が沖縄県警沖縄署に緊急逮捕されたことである。一個人の行為であっても、成熟したパートナーシップを維持する努力が求められている日米関係を損なうことにつながりかねない愚かなことといわねばなるまい。
沖縄では一九九五年にも米海兵隊員三人が小学生の女児を暴行する事件が起き、住民が
怒り、反基地感情が高まったことがあるほか、女性に対する暴行事件など米兵の犯罪が度々発生している。とりわけ女児に対する暴行事件は容疑者の扱いをめぐって日米地位協定の見直しにもつながり、米側の譲歩でやっとおさまったという経緯があった。今度の事件はあの事件を思い出させるのだ。
九五年の事件を受けて日米特別行動委員会ができ、普天間基地の返還の合意に伴う代替
施設建設に進展の兆しが見えてきた折からの事件だったことが重たい。米軍に規律の徹底を強く求めたい。
警察の調べによると、二等軍曹は沖縄市の繁華街でアイスクリーム店から出てきた三人
連れの少女たちに英語と片言の日本語で話し掛け、少女一人をバイクに乗せ、基地外の容疑者宅へ誘い込み、わいせつな行為を迫った。泣き出した少女を「送ってやる」と今度は車に乗せ、車内で暴行した疑い。
二等軍曹は「押し倒したりキスしたりしたが、暴行していない」と容疑を否認している
というが、その真偽はこれからの調べに待つとしても、押し倒したりの行為は少女でなくても許されることではない。
事故であっても米軍に対する不信が生まれやすいのが基地の街だ。その例が〇二年、韓
国で女子中学生二人が米軍の装甲車にひかれて即死した事故だった。「米軍は出ていけ」という全土的な運動にまで発展し、これが尾を引き、米高官が「望まれないところには基地は置かない」と発言し、米韓関係がぎくしゃくした。次期韓国大統領の李明博氏は米韓関係の立て直しに取り組まざるを得ない羽目にもなっているのだ。
少女暴行事件が、この二の舞いにならないよう米軍が誠意をもってことに当たるよう望
む。