江戸音曲の中心として発達した長唄に大正琴が合うなんて、ちょっと驚きです。先日、大阪市の国立文楽劇場で開かれた長唄公演に岡山県大正琴愛好会のメンバーが出演し、三味線や囃子(はやし)と調和した、つややかな音色でファンを魅了しました。
日本の伝統文化と認められたものしか舞台に上がることができない国立文楽劇場に出演する大正琴グループは、例がないといいます。四年前の初出演と、今回公演はともに、昨年十月に病気のため七十四歳で亡くなった岡研三前会長の熱意が実を結んだそうです。
遺志を継いだ新会長の妻和子さん(66)によると、岡前会長は一九八一年の愛好会発足時から、大正時代に生まれた大正琴を「日本の伝統楽器として継承したい」との一念で活動してきました。大正琴を受け入れた長唄関係者の度量の広さにも拍手を送りつつ、岡山からの力強い文化の発信を喜んでいます。
近年、伝統文化の継承が叫ばれています。考えてみると、岡山県大正琴愛好会の門下生は岡山をはじめ広島、鹿児島、長野県など各地に約六千人。言い換えれば、それだけ長唄のファンが増えたということで、伝統文化の振興に大きく寄与しているといえます。
岡山県では二〇一〇年にある国民文化祭が開かれます。この機をとらえ、行政の文化振興策が進んでいます。一概に文化といっても、歴史や伝統、音楽、演劇といった各種活動まで多岐にわたりますが、県民の財産としてしっかりと根付く成果とともに、岡山の文化発信を大いに期待しています。(大阪支社・大本哲弥)