写真家の山本皓一さん、ジャーナリストの松本利秋さんによる写真集「軍事同盟 日米安保条約」に一九九五年十月二十一日の沖縄県民総決起大会が載っている。
会場を埋め尽くした八万五千人。色とりどりののぼり、プラカード。九月初めに起こった三人の米海兵隊員による女子小学生拉致・暴行事件に怒った県民の糾弾の声が聞こえてくるようだ。大多数は自主参加だった。
面積・人口とも国土の約1%なのに在日米軍基地のおよそ75%が集中。米軍の犯罪、騒音被害に苦しんできた県民の怒りが爆発、舞台中央に「米軍人の綱紀を粛正し犯罪を根絶せよ」など四項目の要求が掲げられた。
しかし「また」である。この十三年間は何だったのか。再び同じ要求を掲げなければならなくなった。沖縄県警が中学三年の少女を暴行したとして、強姦(ごうかん)の疑いで米海兵隊キャンプコートの二等軍曹を逮捕、送検したのだ。
これからという子どもをむごい目にあわせ許せない。あらためて基地と隣り合わせの生活に怒りと不安を覚えた人は多かろう。米軍は今度こそ綱紀粛正と再発防止を徹底すべきだ。
福田康夫首相は閣僚懇談会で「しっかり対応してほしい」と指示。だが首相に求められるのは犯罪根絶、基地の整備縮小や米兵削減の早期具体化の先頭に立つことだ。あの怒号を忘れず目に見える形にしなければならない。