2008年2月13日

志布志事件は冤罪ではないのか?

鳩山法相また“失言” 鹿児島選挙違反「冤罪と呼ぶべきでない」 12人無罪なのに…(産経)

 12人の被告全員の無罪が確定した平成15年の鹿児島県議選の公職選挙法違反事件について、鳩山邦夫法相は13日、全国の検事長、検事正を集めた検察長官会同で、「冤罪(えんざい)と呼ぶべきではない」と発言した。

 問題の事件は、志布志事件(ウィキペディア)といわれているもので、このブログでもいくつかのエントリを書いています(志布志事件(タグ検索))。

 事件としてはひどい捜査の事件なのですが、これを「冤罪」と呼ぶかどうかは冤罪という言葉の意味・定義によると思います。
 ちなみに、ネットのヤフー辞書では

 罪がないのに罰せられること。無実の罪。ぬれぎぬ。「―を晴らす」

とあります。

 すべての無罪事件を冤罪事件とは言いませんので、「無罪」と「冤罪」は違うと思います。
 典型的には、「罪がないのに罰せられること。」とありますように、本来は無罪であるにもかかわらず誤判によって有罪判決を受けてしまった場合(でそれが後に無罪であることが明らかになった場合)を言うと思います。

 志布志事件は、起訴されましたが無罪になりましたので、今言った典型的な冤罪とは違うかなとも思えるのですが、志布志事件はどうみても「でっち上げ事件」と思わざるを得ないところがありまして、そう見れば「ぬれぎぬ」と言っていい事件になって非常に「冤罪」っぽい感じがするわけです。

 「冤罪」という言葉は法律用語ではありませんので、そう厳密に使う必要があるとも思えないのですが、あれほど検察の大恥を晒した志布志事件について、検察長官会同において、鳩山法相が「冤罪と呼ぶべきでない」と発言したのであれば、その文脈も問題ですが、法相の真意を測りかねるところがあります。

 報道のみから受けた印象としては、法相は志布志事件が検察全体に及ぼした影響の深刻さについて全く認識不足なのではないかな、というところです。

 まあ、検察にとっては法相が誰であろうが何を言おうがあんまり関係ないですけど、世間の皆さんから法務・検察は志布志事件を反省してないのかな、と思われるのが一番心配です。

追記
 時事通信社の報道内容

 鳩山法相はその後、記者団に対し「定義がはっきりしない冤罪というものをこの事件まで適用すると、無罪事件は全部冤罪になってしまう。裁判の結果、無罪になったケースととらえたい」と説明。一方で「捜査、取り調べ上の問題があったことはよく分かる」とした上で、「検察官の士気を上げるために、十分反省した上で『積極的に前を向いてくれ』と言いたかった」と釈明した。

 ということであれば、あえて失言というほどのこともないように思います。
 要するに、産経に揚げ足を取られたということでしょうか。
 揚げ足を取られるような発言を失言という、ということであれば失言ですが。
 これは「失言」という言葉の意味・定義の問題ですね(^^)

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コメント

 どこで聞いたか忘れましたが「志布志事件は冤罪でない」という意見は私も耳にしたことがあります。

 その方は冤罪という言葉を「犯罪は存在しており、それに対して犯人でない人を犯人として処罰しようとする(した)こと」であるとしているようでした。
 そして志布志事件の場合はでっち上げのため、そもそも犯罪自体が存在しないのだから冤罪ではないそうです。
 ひらたくいえば冤罪は過誤だが、志布志事件は故意であり冤罪というより犯罪的だと言いたかったようです。

 法相の真意はわかりませんが、こういう意味で使ってるのならわからなくはないです。報道だけだと非常にわかりにくいですが・・・。

モトケン先生のエントリー本文と、小会議室(その2)での、死刑囚さまのコメントから私なりに考えると、どうやら富山での冤罪事件とは性質が異なっていて、富山の事件では実際に服役してしまったので完全に冤罪事件ですけど、志布志事件は無罪が証明されて実際に服役しているわけではないので、私が小会議室(その2)で、>>冤罪事件史に云々というのは、ちょっと違うかな〜と今は考え直すべきなんだな〜と、そうすると、法務大臣が仰ることもあながちまったく違っているわけではないんだ。

しかし、報道で伝わってくるニュアンスとしては、

>法相は志布志事件が検察全体に及ぼした影響の深刻さについて全く認識不足なのではないかな、

という危惧の部分になるんですね。

私のblogでも、ひらのさんの書かれた内容と同様のコメントがつきました。

ちなみに Yahoo! の辞書ですが、モトケンさんが書かれたのは「大辞泉」の内容ほうで、もう一方の「大辞林」の内容では

罪がないのに、疑われたり罰を受けたりすること。無実の罪。ぬれぎぬ。

と、「疑われる」という文言があり、こちらの定義であれば"罰せられなかった"けれど"疑われた"ということで冤罪の範疇に入ることになるかな?

あと、産経の表現ではやっぱり説明不足です。誤解(誤読か?)してくれといわんばかりな感じ。
時事通信の記事ほうが発言の背景までもう少しだけ詳しく書いてあり産経の記事とは印象が違ってきますが、ただ、仮に産経が書くところの意図が本人になかったとしても、それでもなんでこうも中途半端な発言をするかなぁ、という思いは残ります。

>No.2 Oさま

>>冤罪事件史に云々というのは、ちょっと違うかな〜

という意味になることを特に意図して書いていた訳ではございませんでした。
言葉足らずですみません…。

無罪とされた時点で、「無実の罪にはならない/疑いは晴れる」から、「冤罪にはならない/冤罪ではなくなる」という意味でした。

ちなみに、No.3 bplusさんご指摘のように、"罰せられなかった"けれど"疑われた"場合も冤罪の範疇に入れて良いかどうか迷っていたので、その辺りには敢えて触れずにおりました為、言葉足らずになり申し訳ありませんでした。

追記:
時事通信の記事には、産経の記事のように鳩山法相が「(富山の)事件の方は人違いだから冤罪ということだろうが、(鹿児島の)事件は冤罪と呼ぶべきではないと考えている」と述べた』とは書かれておりませんね…。

時事通信の記事に記載されている「鳩山法相がご発言後、記者団に対して説明した内容」と、産経の記事に記載されているご発言では、大分異なる印象を受けました。

いずれにせよ、法相が、必ずしも実質的に法務・検察を代表している訳ではないだろうと思っています…(^^;

 時事通信の記事を本文に追記させていただきました(紹介感謝) m(_ _)m

みなさんこっちに移ってこられるようですので、私も(笑)。
今のところ感想に変化はありませんのでそのまま貼り付けるだけですが。あ、前文中「勉強」だけ「社会勉強」に修正してます(笑)。

(修正コピペ)
失言も繰り返されるともう本人の意見そのものという事になります(笑)。小学校の頃から教室に必ず一人はいたな,こんな奴(笑)の類型分類できますね(爆)。
社会勉強が出来なかったまま大人になってしまった、その結果としての知性不足知恵不足発言であることは、お気の毒ですがもはや全国的に明らかでしょう。もって瞑すべし。

No.4 死刑囚さま
いえ、そんなご丁寧にお詫びを入れられますと、かえってさらに恐縮してしまいますし、死刑囚さまのコメントもなるほどなと、勉強になりましたので、NO2の自身のコメントでは、感謝の意も含めて書いていた次第です。
しかし、モトケン先生の本文にもありましたが、厳密に考え込むような事ではないとは思いますが、広い範囲で考えれば冤罪に近いとは思っています。たとえ無実が証明されたとしても、その裁判の係争中、疑いは掛けられていたわけですし、よく事情を知らない世間では、さまざまな陰口を言われていたりして、ある意味、社会的な制裁に近いようなことも受けてしまっているわけですから、それはもう疑いを掛けられた当事者の方々は、大変な屈辱とご苦労があったと思います。
これ以上話していると、何か色々な問題点と重なってきそうですから、この辺で失礼致します。

 時事通信を読む限り、色々考えた上でのご発言だったのかな、という気がしますね。

 ただ、仮に発言の趣旨は「是」だったとしても、個々の事件を例に挙げて言うべきことではないような気もしますが。
 
 しかし一方で、世の中で冤罪という言葉が安易に使われすぎているのは事実だと思いますし、それをたしなめる上でマスコミに発言の趣旨を理解させるには、個々の事件を例に挙げないと難しいような気もしますし、とりあえず批判は保留したいと思います。

断片的な情報だけでは、よく分かりませんから、「産経に揚げ足を取られただけ」なのか否かすら、よく分りませんね…(@@; 報道読むのって難しい…

いや〜、こちらのブログを拝見するようになってから、本当に勉強になります。
法的な考え方や医療業界のこと、報道の受け取り方などなど…。
(中でもとりわけ衝撃を覚えたのは、大淀事件と産婦人科医の超多忙さでした…!あ、ありえん…。)
多角的に物事を見ることが出来るようにも訓練されるというか…。

P.S.そういえば、既にご存知かもしれませんが、こちらで朝日・読売・日経の三誌ですが読み比べが出来ます(^^)職場のおじさんに教えて頂きました↓
http://allatanys.jp/

んふふん(現首相ふうに)。
冤罪=ぬれぎぬという人口に膾炙した表現の定義を、たまたま法務大臣の身分にあるというだけの一個人が法務大臣談話としての発言に自分だけの解釈に替えて用いることが、政治家として妥当だなんて私の常識的国語力ではとても思えませんね。
さきの法務大臣の憲法上の責務に反した死刑自動化発言といい、日本語を話す人として失言連発としか思えません。
このまま大臣として言いっぱなしできちんとした自省が表明されなければ、橋下府知事のナマの憲法発言とそっくりにみえます(笑)。
以上、日本国大臣の政見の影響を直接受ける国税納税者のひとりの、ぼつでおk(キッキモ医)でした(爆)。

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