Extreme Makeover エキストリーム・メイクオーヴァー ★★★
放送局: ABC
プレミア放送日: 12/11/02 (Wed) 21:00-22:00
製作: ライトハーテッド・エンタテインメント
製作総指揮: ハワード・シュルツ
共同製作総指揮: ジャッキ・ピットマン
内容: 3人の志望者に整形手術からワークアウト、着こなし、メイキャップまであらゆる手段を用いて人間改造を施す様を収録する。
こないだうちの女房が日本のレンタル・ヴィデオを借りてきた。「ビューティー・コロシアム」と題されたフジのその番組は、これまでついてない人生を送ってきた人々に整形手術を受けさせ、第2の人生を送るチャンスを与えるというもので、日本のヴァラエティ番組は時としてアメリカのそれよりも先を行っていると感じていたが、またまた出てきた新しいアイディアに感心した。既に日本では大分前から人気番組になっていたらしい。
そしたら、「エキストリーム・メイクオーヴァー」と題された同様の番組がアメリカにも登場した。この種のヴァラエティ番組、アメリカ流に言うとリアリティ・ショウは、ヒットすると世界中に番組のフォーマットが輸出されるのが特色である。「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」のようなクイズ番組から「サバイバー」のような勝ち抜きゲーム型番組まで、ヒットすればとにかく世界中で再製作される。お国柄によってそれぞれ好みのテイストは異なっていたりするから、番組のフォーマットを少し手直しする必要はあるが、とにかくある国で大ヒットしたリアリティ・ショウなら、遠からず他の国でも製作されるのはまず間違いない。
とはいえやはりお国柄というのはあり、ある国でヒットしたからとはいえ、それが他の国で必ずしもヒットするとは限らない。アメリカで社会現象となるまでヒットし、話題を醸した「サバイバー」は、日本では大した話題を提供するまでには至らなかったみたいだし、その逆に、日本ではロング・ラン・ヒットした「未来日記」はアメリカにも輸出され、実際に番組製作までこぎつけたはいいものの、結局でき上がった番組はアメリカ人のテイストには合わないとして、放送されることなくお蔵入りになってしまった。
というわけで、「エキストリーム・メイクオーヴァー」である。この番組が実際に「ビューティー・コロシアム」のアメリカ版焼き直しかということは知らないが、「未来日記」のアメリカ版を製作したのも「エキストリーム・メイクオーヴァー」を放送したABCであるため、その可能性は大きいだろう。
とはいえ、そこは何事も徹底的にやらなければ気の済まないアメリカのTV番組である。その内容は「ビューティー・コロシアム」の上を行っている。これに応募して選ばれた希望者は、単に顔の整形手術を受けるだけではなく、脂肪吸引から歯列矯正、視力矯正、豊胸手術までを受け、その後さらにワークアウト・トレイナー、ヘア・スタイリスト/メイキャップ・アーティスト、コスチューム・コーディネイターの指導を受け、まったく別人に生まれ変わろうというのだ。
これに志望した選ばれたのが、31歳のステイシー、24歳のステファニー、そして29歳のルークの3人。ステイシーはわし鼻を矯正し、目の回りを少し持ち上げて顔にめりはりをつけ、一方、ほっぺたの余分な肉は削ぎ落とた上で、あごにはインプラントをはめ込んで二重あごをなくし、脂肪吸引手術を行う。ステファニーも鼻を直し、豊胸手術を行い、脂肪を吸引し、視力矯正のためのLASIK手術を受ける。これまでに何度も鼻の骨を折ったことがあり、鼻筋が曲がっているルークも鼻を矯正、また最近350パウンドから100パウンド以上も減量に成功したばかりのルークは、皮膚がそれについていけず、お腹の周りがぶよぶよして垂れてしまっている。これを直すために、ルークの場合は脂肪吸引ではなく、逆に余っているよけいな皮膚を切り取るという手術が施された。
3人に共通しているのが鼻筋を通すための整形手術で、アメリカの整形手術で最も多いのが、この鼻の矯正手術である。多分、日本だと最も多い手術は一重まぶたを二重にするための手術だと思うが、だいたいが既に二重のアメリカ人では、それよりも、鼻梁が盛り上がったわし鼻を気にして手術する者の方が圧倒的に多い。そのため、アメリカにおける顔の整形手術は、多くの場合ノーズ・ジョブ (Nose job) と呼ばれる。豊胸手術も行うステファニーは、既に24歳のシングル・マザーで子供もいるのに今さら豊胸手術かとも思うが、だからこそ手術が必要なのかもしれない。その上近眼の彼女は、眼鏡を必要でなくするために、LASIKと呼ばれるレーザーによる視力矯正手術まで受ける。眼鏡をしているかしていないかは確かに外見上の印象を大きく左右するから、とにかくやるなら徹底的にやってやろうというその姿勢には感心しないでもない。
手術が終わった後は、全員歯列を矯正して歯を白くする。これまた外見の印象を決定づける重要なポイントだ。その後、術後の回復を待ってパーソナル・トレイナーが集中ワークアウトを施し、さらにメイキャップ・アーティストが髪を染めたりウェイヴをつけたりした後、コスチューム・デザイナーが選んだ服を着せて完成である。そして3人はそれぞれ故郷に凱旋ということになり、ストレッチ・リムジンに乗り、家族や恋人、配偶者や仲間のいるところに姿を現し、皆がおお、とか、ああ、とか感嘆する所を見せて幕となる。
3人の中で最も印象の変わったのが、普通の田舎の家庭の主婦といった感じから結構セクシーな姉ちゃんへの変貌に成功したステファニーで、最も変わらなかったのが、ちょっと曲がっていた鼻梁をいじって削っただけのルークであるが、ルークの場合は基本的に最も変わったのがぶよぶよしたお腹で、顔にはあまり手を入れてないのだからそれもしょうがあるまい。しかし少なくとも本人はいたくご満悦の体であった。ステイシーとステファニーは、共にごく普通のどこにでもいるような女性からわりと妖艶という感じの女性に変貌を遂げるのだが、実は私は、ステファニーはともかく、特にステイシーの手術が本人の思うように成功しているのかは疑問だと思った。ただ、ちょっとけばくなっただけのようにも見えるのだが。
ステファニーだって、でき上がりは確かに悪くないといえるできだが、変身する前も、彼女は別にブスいというわけではなかった。世の中には彼女よりも劣る女性は一杯いるのに、いったい何が彼女にそこまで整形したいと思わせたのか。彼女には、確かに美形と言える妹がおり、どこでも人目を引いているようだったから、そういうこともあるかもしれない。彼女はいつも妹と比較されて劣等感を味わっていたのだろう。整形は、まだ幼い子供も抱え、にっちもさっちも行かなくなった彼女が、その窮状から脱出するための最後の手段として思い描いていたものだったのだ。いずれにしても、ステイシーとステファニーを見る限り、整形を受ける女性が求めているのは、「セクシー」な女性であるようだ。
面白いのが、本人とその家族を含め、結構皆、こういう整形手術に対して肯定的で前向きであることだ。こういうのって、誰も知らないようにやるからこそ意味があって、整形したと公言してしまっては効果が薄れるような気がするのだが、そうではなく、家族は彼 (女) が整形して帰ってくるぞ、さあ、お出迎えパーティだ、みたいな感じで心待ちにしている。とにかく整形してでき上がったものがよければ、あとはいいじゃないか、結果よければすべてよし、みたいな気構えのようで、こういうのって、アメリカ気質だよな。確かに、整形を受けても誰も気づいてくれなかったらやる意味ないし、だったら整形パーティを開いてお披露目してしまう方が手っとり早くていいかもしれない。でも、マイケル・ジャクソンみたいな例もあるから、自分の未来のために猫も杓子も整形ではなくて、やはり本当にやるべきかどうかは真面目に考えた方がいいとは思うが。
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