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2 月 13 日 (水)  
2/13(水)20:00更新
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中医協 診療報酬改定案を答申
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医療機関に支払われる診療報酬について、中医協・中央社会保険医療協議会は、病院に勤務する医師の負担軽減を図るため、流産などのリスクが高い妊産婦を診察した際に支払われる報酬を原則、2倍に引き上げるなどとした改定案をまとめ、舛添厚生労働大臣に答申しました。

診療報酬はことし4月の改定で、医師の技術料にあたる本体部分を8年ぶりに0.38%引き上げることが決まっており、中医協は13日の会合で、個別の診療行為ごとの改定案をまとめ、舛添厚生労働大臣に答申しました。
それによりますと、診療報酬が引き上げられる分に加え、診療所に支払われる報酬の一部を減らすことで、およそ1500億円の財源を確保し、産科や小児科などの勤務医の負担軽減策に充てるとしています。
具体的には、産科では、流産などのリスクが高い妊産婦を診察した際に支払われる診療報酬を原則として2倍に引き上げ、対象となる病状なども拡大するほか、救急車などで搬送された妊産婦を受け入れた場合は、新たに5万円の報酬を支払うなどとしています。
また小児科では、医師や看護師などを基準以上に手厚く配置して高い水準の医療を提供したり、障害がある子どもの患者のうち特に状態が安定しない乳幼児を診療している病院については、診療報酬を引き上げるなどとしています。
さらに勤務医の負担軽減を図るため、地域の中核となる総合病院で、勤務医の負担軽減策が具体的に計画されている場合や、医師が行っている書類の作成などを支援する事務職員を配置した場合、それに地域にある小規模な診療所が早朝や夜間、休日に診療した場合は、新たに報酬の対象にするなどとしています。
どう変わる患者の支払い額
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新しい診療報酬の下で、患者が窓口で支払う金額が具体的にどのように変わるのか、 厚生労働省の試算を基に見てみます。

【高齢者の高血圧】 78歳の女性が、高血圧の治療でひと月に2回、診療所に通院している場合です。
患者の自己負担は1割で、心電図を使った検査を1回受け、もう1回の診察は5分未満でした。
ことし4月から、75歳以上の高齢者を対象にした新しい医療制度が始まることから、心電図の検査など、これまでは個別に請求されていたものが、新たに設けられる後期高齢者診療料という科目に一括して含まれ、ひと月分がまとめて支払われることになります。
また、いわゆる3分間診療の問題を解消するため、診察時間が5分未満の場合は、報酬の上乗せができなくなりました。
このため、患者のひと月の支払い額は、今よりも60円減って930円となるほか、薬局でも後発医薬品と呼ばれる価格の安い薬を使うことで、今よりも280円減って380円となります。

【糖尿病】 57歳の男性が、糖尿病の治療でひと月に1回、ベッド数が200床未満の中小病院に通院している場合です。
患者の自己負担は3割です。
診療所の方が病院より高く設定されている再診料について、格差を是正するため、病院の再診料が引き上げられました。
その一方で、糖尿病や高脂血症など、生活習慣病の治療に関する報酬が引き下げられたため、患者のひと月の支払い額は今よりも830円減って4180円となります。

【子どもの発熱】 熱を出しておう吐した2歳の子どもが、午後8時に地域の夜間急病センターに行き、座薬を処方された場合です。
自治体によって独自に行われている乳幼児医療への助成はないものとし、患者の自己負担は2割です。
病院に勤務する小児科の医師の負担軽減を図るため、報酬自体が引き上げられたほか、軽い症状の場合は近くの診療所で診察を受けてもらうよう促すため、夜間・休日に診察を行った場合の報酬も引き上げられたため、患者の支払い額は、今よりも120円増えて2500円となります。

【盲腸手術】 29歳の男性が、急性の盲腸でベッド数が250床の大病院に入院して手術を受け、合計4日間入院した場合です。
患者の自己負担は3割です。
救急医療を担う大病院では、患者の入院期間が短期化し勤務医の負担が強まっているとして、入院に関する報酬が引き上げられました。
さらに、この病院では、医師の負担軽減策の一環として、医師が行う書類の作成などを支援する事務職員を配置しており、新たに報酬が支払われることなどから、患者の支払い額は今よりも1860円負担が増えて4万4960円となります。

【ハイリスク妊産婦】 妊娠31週目で腹痛を訴えた42歳の女性が、自宅から地域にある産科の中核病院に救急車で運ばれ、帝王切開で初めての出産を行った場合です。
通常の出産費用は基本的に全額自己負担ですが、この場合は帝王切開だったため、患者の自己負担は3割です。
出産後の費用は含まれていません。
救急車などで搬送された妊産婦を受け入れた病院には、新たに5万円の報酬が支払われることになり、流産などのリスクが高い妊産婦を診察した際の報酬も2倍に引き上げられたことなどから、報酬自体はおよそ1.37倍に増えました。
患者の負担は高額療養費制度から給付が行われるものの、今よりも1400円負担が増えて8万2590円となります。
安心できる地域医療の確立を
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8年ぶりに引き上げられた診療報酬の本体部分は、過重労働が指摘されている勤務医対策に充てられることになりました。
厚生労働省は、今回の改定によって、地域の中核となる病院では、産科や小児科の医師の負担が軽減されるものと見込んでいます。
しかし、勤務医対策としてねん出できた財源は1500億円にとどまり、全国平均で見ると、病院の収入は1%ほど増えるに過ぎず、病院の収入増加が勤務医の待遇改善につながるとはかぎりません。
このため、診療報酬の改定を通じて、勤務医の負担軽減や医師不足の解消を図ろうという取り組みには限界があるという指摘も出されています。
産科や小児科の閉鎖、たらい回しにされる急病患者が相次ぐなか、誰もが住んでいる地域で安心して医療を受けられる体制の確立が急務となっています。
※このニュースは2月13日20時00分時点でのものです。
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