【2月12日 AFP】アジア一帯で食料価格が高騰し、貧困層に打撃を与えている。各国の街頭で市民が抗議デモを繰り広げるなど問題は拡大化しているが、専門家によると価格の上昇に歯止めがかかる気配はない。
■世界の食料価格前年比40%増
食料需要の増加に石油価格の高騰や地球温暖化の影響などがあいまり、コメや麦、牛乳といった必須食品の高値が恒久化する恐れもある。国連食糧農業機関(UN Food and Agriculture Organisation、FAO)のアブドレザ・アバシアン(Abdolreza Abbassian)穀物担当上級アナリストは、さまざまな指標がすべて高値を示していると警告する。
FAOの統計によると2007年、食料価格は世界全体で40%近く上昇し、ミャンマーやパキスタン、インドネシア、マレーシアなどで抗議デモが相次いだ。しかし、価格高騰の主要原因はアジアの経済成長だと国際食糧政策研究所(International Food Policy Research Institute)のヨアヒム・フォン・ブラウン(Joachim von Braun)氏はいう。
■農への投資不足、食の変化、石油高騰・・・
アジア地域では経済成長により食料需要は増える一方で、多くの貧困層が苦境に立たされえていると同氏は指摘する。貧困層の場合、わずかな収入に食費が占める割合は優に50-70%に達する。「農業分野、特に農業科学技術の開発や用水路整備への投資も不足している」(ブラウン氏)。
全体的な食料需要の増加に加え、肉食嗜好の広がりも、食料価格上昇に拍車をかける要因となっている。畜産飼育には大量の穀物が必要になるからだ。
それだけではない。干ばつや悪天候、石油価格高騰による輸送費の増加、バイオ燃料需要の急増とその備蓄高の不足といったことも、食料価格高騰の要因となっていると専門家はいう。たとえば、欧州および米国では、寒冷気候により穀物収穫高が減少。アジアでは、鳥インフルエンザや中国のブタの伝染病など、家畜の疾患のせいで肉類の供給に影響が出ているという。
■地球温暖化でアジアの穀物収穫10%減少か
悪天候の影響で最も大きな打撃を受けているのがバングラデシュで、前年はサイクロンにより6億ドル(約640億円)相当の稲作が被害を受けた。今年のコメ価格は前年比70%増と急上昇、1キロ当たり50セント(約53円)前後となっているが、同国の国民の1日の生活費は1ドル(約106円)に満たない。
すでに食料価格の上昇により暴動発生などが懸念されていた中国でも、稲作地帯が歴史的な悪天候と豪雪に見舞われたばかりだ。
こうした異常気象の原因を地球温暖化だと断言することに専門家らはいまだ慎重だ。しかし米スタンフォード大学(Stanford University)の研究は、南アジアでは2030年までに気候変動が原因でアジアのアワ、トウモロコシ、コメの生産高が10%減少するだろうと指摘している。
こうした傾向からアジア各国の政府は、食料価格高騰とそれをきっかけとする暴動の可能性を懸念し対策に乗り出している。インドネシアは米国から大半を輸入している主食、大豆の輸入関税を下げると同時に、輸入依存を抑制しようとしている。マレーシアは政府が食糧備蓄制度を開始する予定だ。マレーシアでは最近、食料価格高騰に抗議した活動家数十人が逮捕された。
ベトナムは前年のインド同様、コメの輸出を一時停止した。経済評論家らは価格高騰につられる形で食料供給もいくらかは増加するというが、マニラにある国際稲研究所(International Rice Research Institute)の開発担当ディレクター、ダンカン・マッキントッシュ(Duncan Macintosh)氏はそれほど簡単な問題とは思えないという。「ミャンマーでコメの生産高が増え、インドネシアで少しは代替農地が使用できるかもしれない。しかしすぐに効果をもたらせるような大きな要因はない」
同氏は、アジアで都市化と工業化により農地が減り、少ない水資源をさらに吸い上げているとも付け加えた。(c)AFP/Sunil Jagtiani
ユーザー制作のスライドショーをご紹介。無料で簡単な会員登録で見られます。
拡大して見られた人気写真ランキング。会員登録で拡大写真が見られます。登録は無料で簡単。
AFPBB News に掲載している写真・見出し・記事の無断使用を禁じます。© AFPBB News