金属の棒(金属に限らず導体なら)があれば、それはもうアンテナです。
変化する電界の中にある導線には、電流が流れる。これは、中学くらいで習うと思いますが、これがアンテナの原理ですね。
では、アンテナが周波数によって、長さが違うのはなぜでしょうか。
まずは波長という物を考える金属の棒に電波が当たると、電波の周波数に応じた波が生じます。次に定在波を知ろう
波の長さは、電波の周波数できまり、1.9GHzで、だいたい15cm位になります。洗面器に、水を入れて端っこをたたきます。同心円上に波が出来ますね。
叩く周期を巧く調整すると、一定の位置で上下に動く波が出来ます。これが定在波。
(実際にはたたくのではうまくいきません。手の平でこすって、摩擦を利用して振動させるといいでしょう)
狭いなかを波がいったりきたりするときに、互いにうち消しあったり、合成されたりして一定の位置で、上下運動をするように見える。これが定在波です。
では、アンテナは先ほども書いたように電波があたると、その周波数に応じた電流と電圧の波が生じます。その波は、アンテナの端に当たると、跳ね返ります。アンテナ両端で行ったり来たりするわけです。
この跳ね返りと波長がうまくあうと、電流と電圧の定在波が生じるのです。
その定在波が巧く生じる長さというと、アンテナの長さが波長と同じか、または整数倍のときになります。
1波長が15cmなら、アンテナの長さも15cmになります。
あれ?ちょっと変ですね。PHSのアンテナは15cmもありません。
どういうことでしょうか?
アンテナから、電力を取り出すことについて考えてみる15cmの導体に電圧の定在波が出来ている様子を想像すると、導体の両端では、電圧が0になります。また、ちょうど真ん中のところも電圧が0です。
そして、電圧の波の振れが最大になるのは、両端から1/4のところです。
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電力を沢山取り出すには、電圧の振れが最大のところから、取り出すのがいいでしょう。
従って、どちらかの電圧のピーク点にケーブルを接続することになります。
もう半分は無駄なのでとっちゃいましょう。
これが1/2波長ダイポールアンテナと言うもので、すべてのアンテナの基本となっています。
さて、GNDとの関係を考えに入れると、アンテナの長さのさらに半分が不要になります。
これもとっちゃいましょう。そして、縦にすると……
これが、1/4波長ホイップアンテナです。PHSや、携帯電話のアンテナはほとんどがこれです。
PHSの場合、約15cmの1/4で、約3.2cmになります。あれ?今度は短くなりすぎました。初期のPHSでは、こんな長さの物もありましたが、今のものはずっと長いですよね。
そこで、ゲインというのを考えにいれてみましょう。
ゲインとはゲインというのは、利得とも増幅率とも言いますが、単位はdB(デシベル。デービーとも読みます)です。
これは、相対的な数字、つまり、基準よりどのくらいUP(またはdoun)したかを表すもので、指数表記になっています。
計算式は省きますが、電力が倍になると3dBUPしたことになります。
10Wの3dBUPは20W。
1mWの3dBUPは2mW。相対表示には基準が入ります。アンテナのゲインで考えた場合、全方向へ均一に電波をとばせる理想的なアンテナ(アイソトロピックアンテナ)が基準となります。
この場合、dBiと表示します。*実際のアンテナの基本となるのは、ダイポールアンテナです。
ダイポールアンテナを基準とした場合は、dBD表示となります。
これも計算式は省きますが、2.14dBi=0dBDになります。
PHSの端末の実際はこの場合、アンテナのゲインは4dBiまでと決められています。
結論から言ってしまえば、5/8λホイップアンテナが、約3.8dBiで規格ぎりぎりになり、長さは約9cmです。
PHSのアンテナの長さは、だいたいこのくらいですね。
*アンテナの設計の実際は、その手の本を参考にしてください。ここでは説明しません。
基地局のながーいアンテナ基地局のアンテナは、コーリニアアンテナと呼ばれるものです。
これは、ダイポールアンテナを垂直にし、いくつか積み重ねたものと考えてさしつかえありません。(正確には、すこし違います)
そして、長さが倍になると、電力も倍つまりゲインが3dBUPするのです。長さとゲインの関係はこうなります。
約7.5cm 2.14dBi
約15cm 5.14dBi
約30cm 8.14dBi
約60cm 11.14dBi
約120cm 15.14dBi
約240cm 18.14dBi
PHS基地局のアンテナゲインは、12〜16dBiと言われています。
だいたい60cm以上で、2m以内の長さになりますね。