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柔道康生迷いの中、「内また」こだわり心技体崩れ


準決勝で敗れ、ぼう然とする井上(10日、パリで)=安川純撮影

 【パリ=上村邦之】10日に行われた柔道のフランス国際最終日で、男子100キロ超級の井上康生(綜合警備保障)は5位に終わり、北京五輪代表の座が遠くなった。各国の強豪がそろったフランス国際は、五輪本番の行方を占う格好の舞台だったが、井上にとっては世界との距離を痛感させられる結果になった。日本勢全体もこの日、優勝者ゼロに終わり、全階級を通じても優勝は男子60キロ級の平岡拓晃(了徳寺学園職)だけという不振ぶりが目立った。

 井上の症状は深刻だ。柔道家としての理想と、体が思うように動かない現実とのギャップ。「強い康生」を演じ続けてきた男が、ためらうことなく涙を流した。北京が遠のき、勝負師としての気力がなえてしまわないか一番気がかりだ。

 敗戦から一夜が明け、パリで行われた国際合宿に井上の姿があった。外国勢との乱取りもこなした。「まだ切り替えはできていない。今日は漠然と練習してしまった」。気持ちの整理はできていないようだった。

 準決勝では、昨年の世界選手権2回戦で敗れたリネール(仏)に組み手争いで優位に立ったが、技が出ない。最後の返し技は相手の術中にはまった。3位決定戦は屈辱の一本負けを喫した。

 「勝ちに徹しろと言ったんだが、試合になると内またから入っちゃう」と斉藤仁監督。内または父・明さんから伝授され、自分を強くしてくれた武器。内またへのこだわりを捨てることは、築き上げたスタイルを変えることにもなる。迷いが消せず「心技体」のバランスが崩れたのが今の姿だ。

 欧州遠征の試合を残す棟田康幸(警視庁)と石井慧(国士大)が大崩れでもしない限り、北京への切符は難しいだろう。明さんが突き放したように言った。「首の皮一枚でもという思いはついえた。でもあきらめだけは持つな」。父の厳しい言葉が、今の現実だ。


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