高級靴が流行っているという。ジョンロブ、エドワードグリーン、ベルルッティーなど一足10万円以上もする高級靴が売れているし、ファッション雑誌を読んでも特集が組まれている。
webを見てみよう。彼方此方に、エドワードグリーンを買った、チャーチを買ったという人が「自慢の」靴の写真をwebにアップしている。そして、(ほぼ例外なく)こう書かれているはずだ
「高級靴は10年も長持ちする。だから、長い目で見ても安いのだ。例えば、一足 8000円の靴を一年で毎年買い換えても、高級靴は毎年は1万円だ。一方、履きやすさは天と地の違いがある。だから、高級靴はコスト対効果がよいのだ」と。
こういう記述を読むと、私は「ああ、日本人はやっぱりブランドというものがよく分かっていないのだ」と思う。
まず、こういう人に限って、高級靴は必ず複数持っている。つまり、毎年1万円どころか、毎年3万円、4万円の減価償却費になる。さらに、10年も使えば、最低でも3回はオールソールが発生する。一回のオールソールは2万円以上するから、さらにコストはかかる。また、決定的なのは、8000円の靴は1年で一回つぶれてしまう、という理屈だ。そんな話は聞いたことはない。8000円でも、10万円靴と同じようにローテーションを組めば、グッドイヤーウエルティッド製法ではなくても余裕で3年は持つだろう。つまり、高級靴は結局は安いのだ、というのは間違いなのである。高いものは高いのだ。
それでは、なぜ、高級靴を買った人は「結局は安くなる」というのだろうか。それは、日本人が「精神価値」というものを理解していないからだ。ブランド品は、「安いから」買うのではない。「ステータス、高い感性」などという、物理価値ではない精神的な価値が高いから買うのである。ヨーロッパなどブランドが発達した国では、消費者は「高いもの」を贅沢品として認めて買っている。同様に、こういう高級靴を買っている人も、間違いなく、ここに満足感を感じているのだ。しかし、それを自分で認めようとしない、自分に「いい訳」を無理な理屈で作っているだけである。そうしないと、高いお金を出した「意味合い」を自分の腹に落とせないから、だ。
日本でブランドビジネスが育たないのは、こういう日本人の精神構造、すなわち、物理価値=絶対価値という戦後の工業化時代のDNAが体に組み込まれているからだろう。嘘だと思うなら、最近ヴィトンを買った人に、なぜ、ヴィトンのバッグを買ったのと聞いてみて欲しい。きっと、「丈夫で長持ちするから」というだろう。
私が、日本からブランドは生まれない、日本はブランドの消費国だ、という理由はここにある。
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10年も履くとトレンドも変わっているのでは
2008/1/23(水) 午前 1:01 [ mkovac ]
この「長く使えば高いものも原価償却できる」みたいな
考え方は、ブランド品や多くの贅沢品といわれる物は
あてはまらないことを理解しているというか、認めている人は
少ないでしょうね。
認めたくないのかなーとも思いますが、、、
高価なブランド品は贅沢ではあるけど、悪いことではないのに
「清貧」を重んずる昔からの考えにより、それがあからさまに
言えないのかなーとも思います。
生活の中から無駄なものを取り除き、実用性だけを重んじたら
デザインも芸術も音楽もない、味気ない世界になるから、
ブランドもきちんと育ってほしいものです。
一方無闇なブランドロゴ信仰というのはいただけませんが。。
2008/1/24(木) 午後 0:48
本当に、その通りだと思います。精神価値にお金を使うというカルチャーが芽生えたら、日本から世界に通じるブランドができるのではないでしょうか。ファッションが文化と融合する瞬間だと思います。
2008/1/31(木) 午後 5:55
なるほどね〜、よく解ります。
そのことに日本人は、心のそして頭のどこかで
わかっているんですよ、きっと。
この記事を読んで心の中でうずもれていたものが
出てきたような気がしました。
(ちなみに私は、ブランド志向ではありませんけどね)
2008/1/31(木) 午後 11:11 [ btwfn469 ]
ブランド志向ではないけど、やっぱりヴィトンのバッグは
いいですね〜。でも、その理由はズバリ、ステータスです(笑)
2008/1/31(木) 午後 11:19 [ btwfn469 ]
こんにちは。いらしてくれてありがとう。ステータスをお金で買うってすごくよいことだと思います。ブランドの本質かな、と思います。
2008/2/2(土) 午前 0:57
ランダムから来ました。
高級靴は高い安いとか値段よりも履き心地がいいから買うんですよ。
世間ではグリーンを知っている人は100人中10人もいませんしね。
ただブランドで買う人もいるのも事実ですがね。一足買って完璧に靴がなじんだら10万って値段も理解できますよ。
2008/2/6(水) 午後 9:17 [ flow ]
flowさん マーケティングの話と個人の趣味の話の違いもわからないなんて。。。flowさん、あなた個人の趣味の話じゃないんですがね。どーせ、データもないのに10人とか適当なこといっているんでしょうね。やっぱ日本人はダメだ
2008/2/6(水) 午後 10:02 [ 旅すがら ]
こんにちは!みなさん、活発な議論ありがとうございます。
仰せの通り、私の場合、職業柄いろいろな調査をしておりまして、ファッションビジネスに関しては、特にこうしたデータを元に発言しています。決して、特定の個人の趣味の話をしているわけではありませんので、「私はこうだ」とか「私の友人はこうだ」という話とは、別けてご理解ください。あくまでもマーケティングの議論です。
ちなみに、私も個人としてはグリーンの靴などを所有していますが、理由は「長く履けるから」(笑)です。
高い靴→大切にする→(結果的に)長く履ける、という理屈です。
2008/2/6(水) 午後 10:09
(この議論、かなり盛り上がっているので)
実は、私も減価償却的発想で買っています。。
財布からクレジットカード出すときぐずってしまうんですね(笑)そんなとき、いや、高いもの買った方が結局安くつくんだよ、と自分を説得するわけです。
我々の精神構造の中には「贅沢は敵だ」という戦争中の価値観がすり込まれているのかもしれません。そういえば、昔水前寺清子が「ぼろは着てても心の錦〜」って歌を歌っていました。
2008/2/7(木) 午前 1:02
データをもとに発言しているとおっしゃいますが、記事にはあなたの主張を裏付ける根拠(データ)がまったく示されていません。それが書かれていない文章は、説得力に欠けると思います。特に、6段落のそれぞれの文について、なぜそう言えるのかと問いたい。
2008/2/9(土) 午前 9:50 [ rico3a ]
こんにちは。データは過去仕事でおこなった消費財の市場調査を元にやっています。ブログという性質上、一般公開はできませんが、複数のブランド品の購買理由を調査しました。その結果、某消費財の購買理由は、「長く使えるから」という理由が多数でした。また、手作り感、ストーリー性など品物が持つ雰囲気を、「長く使える」という意識に無理矢理つなげる傾向も見て取れました。
そこから、「長く使える」が「長持ちする」と混同されている傾向も見いだされ、これらの分析を元にしています。
2008/2/9(土) 午後 3:11
回答いただきありがとうございます。ちなみに、その某消費財とは靴ですか?それともバッグなどでしょうか?また、調査対象は男性でしょうか、女性でしょうか?もしも、それが女性であったり、靴以外のブランド品なのであれば、それをそっくり高級靴に対して当てはめるのは適切ではないと思います。高級靴に絞った調査なら違った結果が出る可能性もあるはずです。
2008/2/9(土) 午後 5:29 [ rico3a ]
消費財というのは靴も含めた雑貨です。ただし、アイテム毎に傾向分布を調査しました。縦軸に高級、中級、汎用品、横軸に鞄、靴、アクセサリという軸で調査をおこない、対象は男生と女性全般的にやりました。それ以外に、化粧品、デニムなどブランド品全般におこなっており、とくに、海外のブランドと日本のブランドの違いもやっています。
2008/2/9(土) 午後 10:53