交通事故で亡くなる人のうち、お年寄りの占める割合が増えている。
警察庁のまとめによると、昨年は交通事故による死者の47・5%が65歳以上で、統計がある1967年以降で最も高い割合となった。県内でも初めて50%を超え、全国と同じ傾向にある。
交通事故死者は年々減る傾向にあり、昨年は54年ぶりに5000人台になった。なのに、高齢者の割合は増えている。お年寄りへの安全対策は急務だ。
日本の高齢化のスピードは、世界的に見ても際立っている。既に5人に1人は65歳以上で、あと10年もしないうちに4人に1人となり、超高齢社会に突入する。
高齢者が犠牲になるだけでなく、加害者になる可能性が高まる。超高齢社会の中で事故をどう減らしていくか−。論点は幾つもある。
まず、高齢のドライバーが増えることに伴う問題だ。
近年、高齢者の運転免許の自主返納が話題になる。
県内では、昨年、自主的に免許を返した65歳以上の高齢者は過去最多の667人に上った。昨年6月に自主返納者に対するタクシー運賃割引が始まったことも大きく影響したとみられるが、詳しい理由を見ると「身体機能の低下」が半数近くを占める。
運転に自信がなくなり免許を返す人が増えれば、事故は減るかもしれない。だが、公共交通機関が整っていない地域は、県内も含めて各地に数えきれない。そんな場所に暮らす高齢者にとって、車は生活していく上でなくてはならないものだ。
高齢ドライバーの運転免許のあり方についての議論も盛んになってきた。昨年、75歳以上のドライバーの免許更新時に認知機能検査を導入する改正道交法が成立、施行を待つだけとなっている。
車がなくては医者にも買い物にもいけず、認知症があっても免許を手放せない人が現実にいる。こうした人たちの「生活の足」をどう確保するか−。この視点を忘れずに論議を深めないといけない。
次の論点は、高齢死亡者のほぼ半数は歩行中に事故に遭っていることだ。生活空間の中では、車よりも人間を優先する考え方をもっと定着させたい。歩道が狭い生活道路は県内でも多い。高齢者の立場に立って、歩道や安全施設の整備を積極的に進めるべきである。
高齢者も外出するときは目立つ服を着たり、夜間は反射材などを身につけたりして、自衛策をとることも事故を防止する上で重要だ。
高齢者が「交通弱者」と呼ばれるような時代は早く終わらせたい。