楽天の新時代を告げる3者連続奪三振だった。2回裏の投球。長谷部は圧巻の実戦デビューを飾った。「緊張して力み過ぎた」と話す初回のマウンドを無失点で切り抜けると、2回は「力が抜けて投げられた」と本領を発揮。アドレナリンが吹き出た証しのうめき声とともに、1球、1球、打者を追い込んでいった。河田を見逃し三振に仕留めると、中島、大広を空振り三振に切って取った。
長谷部「今日のテーマは(カウント)0−2と四球を出さないこと。ある程度、ミットのところにいったと思う。今日の段階なら100点です」。
安心感に浸りながら、長谷部は振り返った。直球の最速は143キロ。嶋は、148キロだった田中以上にスピードを感じると話す。それでも長谷部は「まだまだコントロールがアバウト。143キロ? まだまだですね」と、制球、球速ともに調整段階と言う。
この日、紅白戦を視察した三木谷会長は「長谷部は安定しているね」と笑顔を見せた。さらに報道陣から、田中に続く2年連続新人王輩出を問われると、試合前の野村監督との会談の内容を明かした。「監督は、狙うのは新人王じゃなくて、優勝だってさ。チャンスだって」と頼もしそうに話した。個人ではなく、チームが頂点に立つと宣言したという。米田球団代表は「優勝宣言は、監督人生で初めてみたいだよ」と監督の決意を代弁した。
長谷部に対し、野村監督は「制球がいいから使えるかな。四球で崩れる感じじゃない。逆にストライクが多すぎてやられそう。キャッチャー次第だな」と話し、リップサービスはない。しかも、前日のスポーツニュースで「新人王を目指す」と発言したことに「まず1軍に残ることが先だろ。それを飛ばして新人王とは。新人王を口にするのは8月でいい」と、くぎを刺した。慎重になっているのも、優勝への本気度の高まりといえる。ここまで順調に調整が進んでいるエース岩隈、貫録の田中に、新戦力長谷部。かなりの白星の上積みが期待できる。3本柱が完成すれば、野望は決して無謀ではない。【金子航】