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とげの進化でシカを防御? 奈良公園のイラクサ
このニュースのトピックス:サイエンス・生物
奈良公園(奈良市)に自生する植物のイラクサが、公園のシカに食べられるのを防ぐため、毒をもつ“とげ”を多く持つよう進化したとのユニークな研究結果を、奈良女子大の佐藤宏明准教授(昆虫生態学)らのグループがまとめた。
シカは約1200年前に鹿島神宮(茨城県)から奈良公園に連れてこられたという言い伝えがあり、研究生の加藤禎孝さんは「意外な影響が植物に現れていた」と驚いている。
イラクサの葉や茎にある細いとげにはアレルギー反応に関与するヒスタミンなどが含まれ、触れると皮膚炎を起こす。
グループは、公園のイラクサが県南部など別の場所のイラクサに比べ、とげの数が平均で50倍以上も多く、この特徴が種子にも受け継がれていることを確認。
県南部のイラクサ20本を奈良公園に移植し、公園のイラクサとシカへの食べられやすさを比較した実験では、県南部のイラクサは4カ月ほどですべて食べられたが、奈良公園は60%以上が残った。
佐藤准教授は「1200年という長い間に、シカに対する防御機構が進化したとみられる」と話している。