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医療過誤の立証なお壁高く 割りばし事故訴訟
割りばし死亡事故で、12日の東京地裁判決は医師の過失を認めなかった。医師を無罪とした刑事事件の判決では過失を認めており、原告側にとって、さらに厳しい判決となった。
刑事事件の判決は「転倒して割りばしがのどに刺さった」という事実を重視し、「脳に刺さり、損傷を与えた可能性を想定すべきだ」と判断した。
最高裁は昭和57年、医療行為に対する医師の注意義務について「基準は診療当時の医療水準」と判示。今回の判決も、この基準に沿い、予見可能性を検討した。
判決は、複数の医師の証言を基に、隼三ちゃんの口腔(こうくう)内には大量の出血がなく、口の中を見るだけでは折れた割りばしの先端が確認できなかったと認定。
その上で、折れやすい割りばしが頭蓋骨(ずがいこつ)を傷つけずに、脳に刺さって傷を負うという医学的な知見は当時なく、症例の報告もなかったと指摘したうえで、「当時の医療水準に照らせば、脳内の損傷は予見できなかった」と結論づけた。
医療水準を基準とした場合、どうしても医師側の意見に判断の根拠を求めがちだ。原告側は病院側からの資料入手が難しく、刑事裁判の記録を証拠として提出したが、判決は医療過誤事件の立証の難しさを改めて示したといえる。(福田哲士)