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「息子にかける言葉ない」 割りばし死亡事故訴訟で両親
「死んだ息子にかける言葉がない」。割りばし死亡事故で、杉野隼三ちゃん=当時(四つ)=を診察した医師、根本英樹被告の過失を認めなかった12日の東京地裁判決。過失を認めながら、死亡との因果関係を否定して無罪とした刑事事件の1審判決よりも遺族には厳しい判決となった。「どうして息子が死んだのか、ただ知りたいだけ」。事故から約9年。そんな遺族の願いはまたも閉ざされた。
「過失さえ認められず非常に残念。これまでの積み重ねを無視する判決で納得できない」。判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した隼三ちゃんの父、正雄さん(55)は悔しさをにじませた。
母親の文栄さん(50)は「被告側の主張をなぞったような判決。刑事事件の判決よりも悪くなった」と述べ、唇をかみしめた。
隼三ちゃんの死から約9年。しかし、2人はまだ、隼三ちゃんの遺骨を納骨できずにいる。東京都杉並区の自宅居間で、隼三ちゃんの遺骨は大好きだったウルトラマンの人形に囲まれている。自宅の玄関には運動靴が今も並べられたままだ。
「隼三がまだ一緒にいる気がしてならない」と正雄さん。文栄さんも「何をしていても、ふと隼三のことを思いだす」と話す。
ひたすら走ってきた9年間だった。数多くの専門書に目を通した。医療過誤を訴える遺族らとも交流を深めた。すべては真相を知るためだった。「9年間は真相を知るための大切な時間だった」と正雄さんは話す。
昨年秋、保存されていないとされていた隼三ちゃんの臓器片が、司法解剖を行った大学病院で見つかった。「隼三が『本当のことを話したいから見つけて』と呼んだのだと思う」と文栄さん。この臓器片は現在、隼三ちゃんの死因を特定する大きなカギとして、根本被告の控訴審で鑑定が行われている。
「今まで以上に大変な道で、何年かかるか分からないが、必ず真相を明らかにする」と正雄さんは会見で力を込めた。