鳥取県は、学校健診の心電図検査等で異常が見つかった児童生徒を対象に公費で実施していた集団での心臓疾患精密検査を本年度限りで廃止し、新年度からは自己負担を伴う個人受診に変更する。三十年以上続く県独自の施策だったが、「医療環境も整った今の時代にはそぐわない」と見直しを決めた。一方、小児科医などからは心臓専門医不足や受診率の低下を危惧(きぐ)する声も上がっている。
□受診率100パーセント■
毎年春に行われる学校健康診断では、学校生活上問題となる心疾患や突然死の原因となる不整脈の早期発見を目的に、医師による診察や心電図検査(対象=小一、同四、中一、高一)が行われている。
このうち県内では本年度、健康診断の全対象者(幼稚園から高校まで二百九十六施設、七万六千四百八十七人)のうち約〇・七%にあたる五百四十二人が要精密検査の対象となり、県による集団検診が実施された。
県によると、県費による集団検診は一九七〇年にスタート。「当時は医療環境も整っておらず、学校での突然死等を防ぐ意味でも行政施策として集団検診が導入された」という。要精密検査となった児童生徒は各校の養護教諭が引率。県が専門医と診察会場等を用意し、東、中、西部地区ごとに集団で心臓超音波や心電図などの心疾患精密検査を無料で受診させ、受診率百パーセントを保ってきた。
□14日に説明会■
しかし、「歯科や視力健診などと同じように、何か異常があれば最初から保護者が医療機関に連れて行くのが本来のかたち」「他県では実施していない」などとして、〇五年度から廃止に向けた検討を開始。本年度は福祉保健部が「心臓疾患対策費」として二百四十万円を予算計上したが、本年度限りでの事業廃止を決定。今月十四日には県や市町村教委、学校関係者らを交えた説明会を開く。
県健康対策課の北窓妙子課長は「今は乳児健診などで心疾患等の早期発見も可能。養護教諭ではなく、保護者が医療機関に子どもを連れて行き、専門医から直接説明を受ける方が望ましいという声もある」と理解を求めるが、自己負担を伴う個別受診になると、いかに保護者に“健康への意識と理解”を求めるかが課題となる。ある小学校の養護教諭は「意識の高い親ばかりではなく、受診率の低下が心配」と打ち明ける。
□支援継続望む■
こうした県の方針決定について、小児科医などからは批判の声も上がっている。
あしはら小児科(鳥取市叶)の芦原勝之医師は「県内病院に小児の心臓専門医は少なく、まして開業医では小児の心臓超音波をできる医師は限られている」と、受け入れ側のマンパワー不足を懸念。
さらに心臓超音波や心電図検査などには自己負担が五千円程度発生し、個別受診による検査には時間がかかるため、「共働きの多い鳥取県では受診のために、保護者も会社を休む必要がある。病気の特殊性や生活環境を考えても、県の支援継続が望ましい」と疑問を投げ掛けている。