世界に1億個以上が埋設されているといわれ、今も被害が出続けている対人地雷。「技術者として人助けをしたい」と10年以上にわたって地雷除去機の開発に取り組んできた雨宮清・山梨日立建機社長は、自ら現地に足を運んで技術指導し、子どもたちに地雷の恐ろしさを伝え続ける。雨宮社長は9日、「地雷撤去に挑む 豊かで平和な大地への復興」と題して、東京都内のJICA地球ひろばで講演した。
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「悪魔の兵器」対人地雷の恐怖
対人地雷は極めて安価なため紛争地では安直に使われるが、いったん埋設されると発見するのは困難で、手作業ではすべてを撤去するのに1000年かかるという。作業者の事故も後を絶たない。雨宮社長は、カンボジアで地雷の被害者に会ったことをきっかけに、「企業として必要だ」と会社を説得。95年から地雷除去機の開発を始め、98年に1号機を完成させた。現在は6カ国で56台が稼動している。
同社の除去機は油圧ショベルが基盤。1台で潅木や岩を切削し、地雷を粉砕処理する能力がある。難しかったのは、地雷が爆発する際の高温に耐えるカッターの開発と、操作者の安全性を保つことだったという。
開発したのは対人地雷用の除去機だが、土中には破壊力が大きい対戦車地雷もあるため、対戦車型に耐える除去機の開発も必要だ。自衛隊の試験場を借り、現地での試験も繰り返した。さらに、地雷除去機は「武器」とされて海外に持ち出せなかったため、経済産業省に粘り強く交渉した。
カンボジアでは20年に及ぶ内戦で地雷が埋設され、農地は荒れた。地雷原にある地域が自活するためには、地元住民が自分たちで除去機を操作する必要がある。雨宮社長は現地で技術指導をするとともに、地元の人を安心させるため、自ら除去機に乗り込む。子供のころ、牛にすきを引かせて畑を耕した記憶から、「地雷除去と同時に、土を掘り起こせば農地化が早まる」と思いつき、前部のカッターで地雷を処理するのと同時に、車体後部のつめがすきの役割を果たし、土を掘り起こす新型機も開発。近隣の子どもたちにも、地雷の恐ろしさを知ってほしいと粉砕の様子を見せた。
雨宮社長は講演で、「対人地雷の目的は人を傷つけること。手足を吹き飛ばし、失明させる。死ぬほどのけがではないことも多く、被害に遭った人たちは障害を抱えて生きていかなければならない。悪魔の兵器だ。平和な日本の子供たちに、こんな世界があることを学んでもらいたい」と語った。【岡礼子】
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