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2008年2月12日(火) 夕刊 7面
携帯越し「助けて」/安保の影 犠牲また
 「助けて」という少女の叫びは届かなかった。十日発生した米海兵隊員による暴行事件。訓練された兵士が、また牙をむいた。北中城村の容疑者宅周辺では、三十八歳の容疑者が甘い言葉を操り、執拗に少女に追いすがる様子が目撃されていた。おびえる子どもたち。大人たちは、痛憤に声を震わせた。少女一人の尊厳も守れない安全保障とは何か。繰り返されてしまった凶悪事件は、基地と隣り合わせで生きる意味をあらためて突き付けた。

 「助けて」―。つなぎっ放しの携帯電話から、時折少女の叫び声が響いた。迫って来る米兵の姿に、「来た」と言っては会話は途切れる。携帯電話を隠すガサガサとした雑音。少女とのたった一つの接点を切らすまいと、少女の友人たちはわずかな物音にも神経をとがらせた。事の重大さに気付いた友人らは、少女の親族らにも助けを求め、総勢約十人で沖縄署に駆け込んだ。

 少女はハドナット容疑者の振る舞いに異変を感じた後、すきを見て友人らに携帯電話で助けを求めた。「どこにいる?」「分からない。男が来た」。断片的な会話しかできない中、友人らは数十分も電話をつなぎっ放しにし、少女の無事を祈った。車に乗せられ中部方面に向かった後も、少女は「車から降りられない」などと急を知らせていた。

 少女は車で連れ回されている途中、機転を利かせて「家はこの辺りだから」などとうそを言い、自宅から遠く離れた場所でいったんは車を降りた。だが、夜間で地理も分からず、迷っていたため、再びハドナット容疑者の車に乗せられた。少女は別の場所でも「友達と待ち合わせしている」とうそを言い、車を降りたが、逃げ切れなかったという。

 同署によると、ハドナット容疑者は沖縄市のコザ・ミュージックタウン内の店から出てきた少女ら三人に「その服どこで買ったの」などと声を掛けた。数分間話した後、少女だけをバイクに乗せたという。

 ハドナット容疑者の自宅近くの住民は、事件当日の午後九時ごろ、被害者とみられる若い女性が逃げる姿を目撃。ハドナット容疑者は「待って。お願い。ごめんなさい」などと呼び掛け、少女を車に乗せたという。

     ◇     ◇     ◇     

基地の街 不安・恐怖

 米海兵隊員による暴行事件の現場は、米軍基地近くの住宅街だった。米軍との共存を強いられる住民らは、不安や恐怖をあらためて呼び起こされた。

 現場は北谷町内の幹線道路から、十メートルほど離れた住宅街にある公園脇の道路。夜になると人や車の行き来も少なくなり、事件が起きた十日の夜も「人の叫び声を聞いたり、争う様子を感じたりすることはなかった」と近所の住民は口をそろえた。

 その一方、米兵や家族も多く住む地域で、公園脇にはYナンバーの車が並び、週末には集まった米兵らがたき火をして騒いだり、けんかしたりすることも度々あったという。

 近くの自営業の男性(40)は「以前も酔った外国人が叫び、二回ほどパトカーが来た。警察もパトロールのコースに入れるなど、対策が必要だったのではないか」と指摘した。

 公園の向かいに住む高校一年生は「普段は米軍基地に対して反感を覚えることはないが、また米兵が事件を起こしたと思うと怖くなる。住民の安全を守るという最低限度のことに国は責任をもってほしい」という。

 二十代の娘がいるという主婦(62)も「怖くて夜は一人で出歩かせたくない。どうにかしてほしい。基地がなくなるのが一番いいのですが」と話した。

「絶対に許されない」/綱紀粛正の要求高まる

 基地・軍隊を許さない女たちの会共同代表で強姦救援センター・沖縄(レイコ)代表の高里鈴代さんは「安心できるはずの場所から言葉巧みに誘い出されて、少女は被害に遭った。すごく悪質で絶対に許されない。犯人が巧みなのであって、彼女に一切落ち度はない」と訴えた。

 その上で「若い兵士の夜間外出制限が犯罪防止策として出るが、この兵士は三十八歳で、基地の外に住んでおり、防止策が全部ぶっ飛ぶ出来事。じゃあ、どうやって米兵の犯罪を防ぐのか。米軍は事件のたびに『綱紀粛正』と言い続けているが、事件はずっと続いている。しかも性犯罪で表に出るのは、実際にあった被害の一部でしかない」と強調した。

 県PTA連合会の諸見里宏美会長は「非常にショックで悲しく、ぞっとする。子どもがそのような目に遭うのを絶対許してはならない。犯人は罪を認めて謝罪し、賠償するなど誠意を見せ(少女の)心の傷が癒える対応をしてほしい」と話した。

 県高校PTA連合会の西銘生弘会長は「またか、と非常に驚いている。一九九五年の暴行事件の時にも県民大会で訴えたのに、また同じことが起こった。基地撤去に向けて動くべきではないか」と述べた。

 高教組の松田寛委員長は「ただ、憤るばかりだ。基地ある限り犯罪が消えないのなら、基地をなくすしかない。これまでと同じような県の申し入れだけでは、県民は許せないだろう」と強い調子で話した。

 沖教組の大浜敏夫委員長は「子どもを預かる教員として満身の怒りがこみ上げてくる」と声を震わせた。「米軍基地受け入れを容認する国や県の責任も問われる。再び県民が、米軍基地をなくすため具体的に行動を起こすしかない」と語気を強めた。

 県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は、「子どもを対象にこのような犯罪を起こし、地域の安全を奪う米軍基地の存在は許せない」と話した。

 沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は「少女の尊厳は何にも代えられない。基地の存在はやむを得ないという県民にも、この蛮行を直視して考え直してほしい」と語った。

東門市長ら謝罪要求

 【中部】米海兵隊員による暴行事件を受け、東門美津子沖縄市長と野国昌春北谷町長らは十二日午前、北中城村石平の米海兵隊外交政策部(G5)を訪ね、再発防止の抜本的な解決策の公表と被害者への謝罪を求めた。

 抗議では「米軍構成員等の教育を徹底し、綱紀粛正を図るとともに、被疑者への厳格な処罰を行うべきだ」と強調。容疑者が所属するキャンプコートニーの司令官あてに抗議文を手渡した。

 野国町長は、逮捕された海兵隊員について「十四歳の子どもがいてもおかしくない年齢であり、また軍でも指導的な立場にある者が事件を起こしたことは問題だ」と米軍に抗議。その上で被害者の精神的ケアに配慮するよう要望した。

 野国町長によると、対応した米外交政策部のフォースデッド中佐は「悲しい事件であり、許されるものではない。上司に伝えたい」などと話した、という。東門市長らはその後、在沖米国総領事を訪ね、同日午後には沖縄防衛局、外務省沖縄事務所にも抗議行動する。

 東門市長は十一日、容疑者が身柄を拘束されている沖縄署を訪ね、事件について説明を受けた。東門市長は「私にも娘がおり、胸が痛む。女性の尊厳、人権を無視した犯罪は絶対に許せない」と語気を強めた。

容疑者宅を家宅捜索し、犯行に使われたとみられるバイクと車両(手前)を調べる県警捜査員=11日午後8時53分ごろ、北中城村島袋(具志大八郎撮影)


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