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「バレンタイン閑話休題2」
大きく伸びをしながら水でも飲もうとオルカが厨房に入っていくとそこにはエプロンをチョコレートで汚し鍋と格闘しているリリスの姿があった。
何してんだ、と思いつつも流しに近寄りコップに水を注ぐ。
鍋を火から下ろしたリリスがオルカに気づき小走りに近づいてくるとぴょこんと頭を下げた。
「あ、あのっ。旦那様がいつもお世話になっておりますっ。」
その小動物のような仕草と言葉遣いにオルカが噴出す。
「旦那様ってゆうの事?普通に夫って呼べばいいだろ。何か旦那様って言ったら性奴隷とかにされてる感じがするんだけど。」
「そんな事ないですよっ。ゆうちゃんは私にすっごい優しいです!」
何度も勢いよく頭を左右に振り否定するリリスが妙に可笑しかった。
「例えで言ったんだけどな。で、リリスは厨房で何やってんだよ。」
思い出したように慌てて鍋へと戻り火を止め中身をオルカに見せた。
「あ、今日ってバレンタインじゃないですか。だからゆうちゃんにチョコレート作って渡そうと思って。内緒ですよー。いきなり渡してびっくりさせたいのです。」
えへへ、と照れたように微笑み、すぐに人差し指を唇に当て内緒、と言うリリスにオルカが悪戯心を起こす。
「リリス、それじゃ駄目だな。」
「ほえ?」
「バレンタインのプレゼントってさ全部手作りじゃなきゃ駄目なんだ。買ってきたチョコ溶かして作っても喜んでくれないと思うなー。」
わざと意地悪く言ってやれば小さく首を傾けんー、と可愛く唸るリリスがいた。
きょとんと潤んだ目で見上げてくる幼い少女がどことなく新鮮だった。
「んー。じゃあどうすればいいですか?私チョコレートさんの作り方が分かんないですー。」
カカオ今からじゃ育てても間に合いませぇん、と涙ぐむリリスの頭をぽんぽんと軽く叩きオルカは冷蔵庫を開けた。
「別にカカオから育てろなんて言ってないし。チョコって何で作られてるか知ってるか?唐辛子と味噌とカレー粉だ。」
「えぇっ?!そんな材料使ったら辛くなっちゃいますよ!」
「馬鹿だなぁ、リリス。それが大人の味なんだよ。」
「大人の、味ですか。分かりました。頑張って作ってみます!」
「そうそう。その心意気。俺も手伝ってやるから。」
「ありがとうございますー。オルカさん本当に優しいですねー。」
真夏の太陽のように笑顔を輝かせるリリスを見てオルカは噴出しそうになるのを必死にこらえた。
嬉しそうに作業をするリリスを手伝い鍋にカレー粉やら塩やらをどっさりと入れていく。
調子に乗ってタバスコや醤油なども隠し味と称して入れてしまった。
出来上がったものはチョコレートとは程遠いなんともグロテスクな固形物だった。
「これ・・・食べれるんですか?」
「だから大人の味だって言ってるだろ。お子様にはこの味の良さは分かんないか。」
「私はもう子供じゃないです!」
「はいはい。」
多分食べても大丈夫だろう、食いもん以外入れてないし、とオルカはピアス型携帯をいじりUB313に連絡を取った。
数分後、厨房に現れたUB313がすさまじい臭いに鼻を手で覆う。
「何この臭い。何やったんだお前ら。」
「ゆう、今日何の日か知ってるか?」
UB313の肩に腕を回しにやにやとオルカが笑う。
その笑顔に悪い予感がしたがUB313はあえて気づかないようにした。
「報告書の提出期限だっけ?あれ?俺の隊に任務ってきてたっけか?」
「ばーか、違う。バレンタインデーだ。女が男にチョコレートを送る日。というわけでリリスがお前に手作りチョコくれるんだってさ。よかったなー、結婚してー。」
うらやましー、と嫌味ったらしく言うオルカにUB313は眉を曇らせた。
リリスの手作りと聞いて不安がよぎる。
何せリリスは結婚してから一度たりともまともに家事をこなした事がないのだ。
洗濯をさせれば床を洗剤まみれにしてしまうし掃除をさせれば部屋の窓ガラスが全て割られてしまうと言った具合に。
料理は言わずもがな。
おかげでローンを組んで家事用ロボットを購入する羽目になった。
だがリリスには悪気がない。
良かれと思って尽くしてくれる幼な妻に文句など言えるわけがない。
リリスがチョコレートとは言いがたい物体Xを皿に乗せ目の前に突き出してきた時などUB313は本当に逃げ出してしまいたくなった。
「あの、頑張って作りました。食べてくれますか?」
ふるふると瞳を潤ませ見上げてくるリリス。
無碍になど出来るはずがない。
恐る恐る物体Xに手を伸ばし勇気を出して口に放り込む。
「うっ。」
舌の上に広がったのは異様な辛さとまずさだった。
口の中でマグマが白腐乳とチークダンスを踊っている。
体が食べてはいけないと教えている。
UB313は涙ぐみ口を手で覆った。
リリスがきょとんと見上げてくる。
「あの、おいしくなかったですか?」
今すぐ吐き出してしまいたいほどの強烈なまずさを誇った自称チョコレートを無理矢理飲み込む。
胃袋が受け付けてくれずむせ返りそうになり口元を手で覆った。
「い・・・や。そんな事は、ない。おいし・・・。」
水、と流しを探せばリリスの後ろで爆笑しているオルカの姿が見えた。
顔を真っ赤にし両目に涙を浮かべあの野郎、とUB313がオルカを睨む。
そんなUB313の様子に微塵も気づかないリリスが嬉しそうに大皿に乗った物体XをずいっとUB313に差し出した。
「たくさん作ったのでいっぱい食べてくださいねっ。」
一気に顔から血の気が引いた。
胃袋の中で暴れる物体Xをリバースしないよう口を押さえているUB313は酷い眩暈に襲われた。
全部食べるのか、これを?最悪だ、ときつく瞼を閉じ口を押さえていた手を離す。
「リリス、先に部屋に戻っていて欲しい。俺はこいつと話がある。」
グロテスクな物体Xが乗った大皿を受け取り帰宅するようやんわりと告げるとリリスは笑顔を輝かせ素直な返事をした。
「はい!分かりました。お部屋のお掃除して待ってますね。」
心底嬉しそうに厨房を出て行く幼な妻を見送りながら、その後片付けも俺がやるんだろうな、ロボットに任せとけばいいのに、とUB313はくらくらする頭を押さえた。
心なしか胃が痛い気がする。
UB313は調理台の上に突っ伏するようにして腹を抱え大爆笑しているオルカに詰め寄りその胸倉を締め上げた。
「オルカ、お前だろ。リリスに余計な事吹き込んだの!」
オルカはUB313から目を逸らし耳をふさぎへらへらとした口調で言う。
「さぁ?何言ってるか分っかんなーい。」
「とぼけるな。あいつがこんな豚の餌より酷い食い物俺に渡すはずがないだろうが!」
「ていうかゆうの料理も豚の餌だよな。お前の料理食ってるリリスがかわいそー。」
「ここまで酷くはない。」
「全然味ないくせに。調味料くらい使えよ。新嫁虐待はんたーい。」
「これに比べれば数百倍ましだ!覚悟しろ、オルカ!」
怒りを露骨に表したUB313は物体Xの切れ端を手に取った。
オルカの額に冷や汗が浮かぶ。
「え?マジで?ちょっ、俺辛いのきらいなん・・・がふっ。」
口に無理矢理突っ込まれたそれはヘドロよりも惨い味がした。
次の瞬間、厨房には絶叫がこだましていた。
*「蒼き鷹」番外編ノマカプUB313×リリス+オルカ
ちなみにチョコレートは(物体X)は二人が責任とって完食しました。
2/14までの期間限定公開です。フリー配布中vv貰って行って下さるととっても嬉しい。
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