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未来の電話:遠くの人と「卓を囲んで」会話 NTTコム試作

神奈川県、京都府、東京・武蔵野市の研究所をつないで行われた「t-Room」のデモンストレーション
神奈川県、京都府、東京・武蔵野市の研究所をつないで行われた「t-Room」のデモンストレーション

 離れた場所にいる人とサイバー空間で同じテーブルを囲む--。そんな“未来のテレビ電話”を、NTTコミュニケーション科学基礎研究所が開発している。NTTが7、8の両日に開催した同社の研究内容についてのフォーラムで試作品が発表された。単身赴任中のお父さんが、家族と「同じテーブル」で食事をする日がくるかもしれない。

 開発中の未来の電話「t-Room」は、複数の大型ディスプレーとビデオカメラに囲まれた円形のスペース。フォーラムでは、ネットワークにつながった同じ装置を、神奈川県と京都府にある同社研究所に設置。居酒屋の映像を背景に、3地点の人が会話をするデモンストレーションが行われた。

 研究チームがこだわったのは「同じ部屋にいる感覚」。これまでのテレビ電話は、ディスプレーを見る人をディスプレー側から写す。画面を間にはさんで向かい合って話すようなイメージで、映像には相手の背景が映るが、「同室感」は得られない。一方、「t-Room」では、円卓を囲む人を取り巻くようにディスプレーとカメラを配置する。空間を丸ごと映像化して共有するためで、カメラはそれぞれ対面にあるディスプレーとその前にいる人を撮影。映像は別の「t-Room」の同じ位置にあるディスプレーに映る。

 3D映像なら、さらに同室感は高まるが、3Dディスプレーはまだ高価で、普及していない。そのため、普通のディスプレーを使う工夫を重ねた。研究チームのリーダーを務める平田圭二さんは「技術的には簡単だが、ディスプレーとカメラの配置法は新しいアイデアだ」と説明する。

 いったん画面に映った映像を再びビデオカメラが撮影することで起きる映像の「ハウリング」を防ぐため、送信する映像の差分だけを表示するソフトウェアを開発。できるだけ安価に実現できるように、市販のビデオカメラとディスプレーを使っている。次の課題は、家庭用ビデオカメラとウェブカメラなど、異なるスペックの機器を使った場合に、違いを吸収するソフトウェアの開発だという。

 発想の原点は10年前にさかのぼる。テレビ会議システムでは、相手が部屋の時計を見ていても、こちらからは何を見ているか分からない。同研究所の原田康徳さんは「同じ場所にいれば、相手が時計を見たことが分かり、時間を気にしていると推測できる。映像を通しても『同室感』を味わえるシステムを開発して、将来、3D映像が普及した時に役立てたいと思った」と話す。

 遠隔地間の合同パーティーや擬似2世帯住宅、遠隔診療、映像作品の共同制作などを想定。映像は録画できるため、会議に時間差で参加したり、別の会議で一部を引用することもできる。試作品は出来たが、製品化までの道のりはまだ遠い。平田さんは「パソコンの画面を3枚程度使った簡易版ができれば普及するかもしれない。将来は、電話のように誰でも持っているシステムにしたい」と話した。【岡礼子】

 2008年2月11日

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