モスクワの日本料理店では、ざるそばのめんで作る焼きそばが大人気という。ランチを頼めば、先に出されるみそ汁を飲み干さないとメーンの幕の内弁当が出ないそうだ。かと思うと、刺身人気が高まる上海では、マグロの多くが鮮度維持に一酸化炭素を注入したものらしい 所変われば品も作法も変わるのは当然だが、世界的な日本食ブームの中、あまりに本家と違う料理が出回っているため、政府は、海外和食店に「日本食」の認証を与えると発表した これには各国が「文化の押しつけ」と猛反発し、民間機関の推奨という緩やかな形に落ち着いた。インドが本場のカレーの認定に乗り出したら、どれだけ日本のカレー屋がお墨付きを得られるか心もとないのと同じだろう 近くニューヨークで石川県が加賀料理の提案会を開く。「リアル・ジャパン(本物の日本)」を堪能してもらおうと、器も含めたオールスター級の品をそろえるそうだ ご当地風の日本食に異議を唱える気はさらさらないが、こんなご時世にこそ、東京でもなく京都でもなく、北陸に息づく日本食の原石のような味を、かの地の食通に「押しつけたい」衝動にかられる。
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