生卵が苦手な女性記者が、小学生の時以来、食べていないという「卵かけごはん」を口にした。一月下旬、美咲町に開店した卵料理専門店の取材のため。果敢に挑戦したら、何ともおいしく、お代わりまでしたという。
私は幼少時から卵かけごはんが大好物。先日たまらず、取材を兼ねてその店に出向き、かき込んだ。優しい卵の味はもちろん、ふっくら炊き上がったごはん、漬物、みそ汁もうまかった。
卵かけごはんは近年静かなブーム。全国各地で地域おこしのネタにもなっている。美咲町も遅ればせながら“参入”した形だ。ただし先行する各地と比べ、単なるB級グルメにとどまらない本格派。「真打ち登場」とでもいえようか。
そもそも、卵かけごはんが日本で広まったのは美咲町(旧旭町)出身で、明治期を代表するジャーナリスト・岸田吟香が愛好していたから、とされている。美咲は由緒ある、卵かけごはんの“古里”なのだ。私が行ったのは小雨の降る寒い平日、しかも昼時を少し過ぎていたのに満員だった。
壁には棚田百選に選ばれている大垪和(おおはが)地区の大写真がドーンと。そこで減農薬栽培したコシヒカリ、滋養や安全性を考慮し飼育している鶏の卵など、地元産の安心できる食材を使っている、と店の人が自慢した。
食への信頼が崩れ続ける一方で、地球温暖化、異常気象、食料不足…など、食をめぐる将来展望は暗くなるばかり。
これぞ真に豊かな食、ぜいたくな食と感じながら、卵かけごはんをいただいた。
(津山支社・井谷進)