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中央線高速化なるか 待望されるが… 山梨

2008.2.8 02:39

 《♪8時ちょうどの あずさ2号で 私は私はあなたから 旅立ちます》。兄弟デュオ・狩人の歌で知られるJR中央線をめぐり、山梨県を中心に昨年11月から「検討委員会」と「広域期成同盟会」の2つの組織が相次いで誕生した。いずれもJR東日本などを相手に利便性アップを協議、要望する組織だ。沿線自治体にはゆっくり走る「旅」路線を脱却し、高速化への願いが高まっている。(花岡文也)

 「大きな改善が図られていない中央線の利便性向上や高速化の実現に向けて運動する」。山梨、長野県や53市町村などで構成する「中央東線高速化促進広域期成同盟会」の設立総会が先月末に開かれ、こう決議した。長野・塩尻−名古屋間(中央西線)を除く沿線自治体が結集。会長に横内正明山梨県知事、会長代理に村井仁長野県知事が就任、気勢を上げた。

 この2カ月前には山梨県と甲府市のほか、JR東、東京都が参加する「中央線高速化等利便性向上検討委員会」が発足していた。2つの組織について、山梨県企画部は「広域期成同盟会で要望、検討委員会では具体的取り組みを協議し、“両輪”で高速化につなげる」と意気込む。

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 広域期成同盟会はスローガンとして「甲府−新宿を1時間、松本−新宿を2時間に」と掲げた。現在、甲府−新宿を走る特急列車は最短83分、最長約120分、松本までは60〜70分を足した時間がかかる。東京から甲府までとほぼ同じ距離の水戸まで最短65分(常磐線)、2倍の長野まで最短80分台(長野新幹線)で行くことができ、明治44年に東京−名古屋間で全通した伝統ある中央線は「取り残された路線」(県関係者)となった。

 問題はどこにあるのか。山梨県企画課によると、(1)東京・高尾以西の線路でカーブが多く、車両がスピードを出せない(2)東京・三鷹以西で中央線快速電車などと特急列車が同じ線路を使う上下各1線路の「複線区間」のため、特急が追い越せない−ことにある。

 (1)に関しては山梨県が平成10、11年に調査したところ、時間を7分短縮する工事に500億円、15分短縮に2330億円かかると推計。「巨額なため、それ以降は議論が進んでいない」(県企画部)状況だ。(2)では、11年度に工事に着手した三鷹−立川間の高架化で解決すると考えられがちだが、「『開かずの踏切』解消など道路整備の一環で行い、22年度の完了後も複線区間なのは変わらない」(東京都)のだ。

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 12年の運輸政策審議会答申には27年までに着手が適当な工事に、三鷹−立川間を上下各2線路にする「複々線化」と地下を通る京葉線(東京ー千葉・蘇我間)を三鷹まで延伸することが盛り込まれた。三鷹−立川間の複々線化について東京都は都市計画決定しているが、「需要予測などを見ないと事業化は…」と歯切れが悪い。JR東も「三鷹−立川の高架化の完了後に検討してから…」と言葉を濁す。

 一方、国土交通省は首都圏の鉄道12社42路線の混雑率をまとめ、昨年12月に最新の18年度分を発表。中央線快速は混雑率208%のワースト3で、「体が触れ合い相当な圧迫感がある」200%を越えた。国交省は「発表することで事業者に利便性や快適性の改善を求めている」と話す。

 JR東はワースト10のうち8路線。とくに中央線は「三鷹以西で乗ると30分以上、大混雑が続き、飛び込み自殺などで遅れることも多い」(沿線住民)という悲惨な状況にある。こうした状況の改善も踏まえ、広域期成同盟会は「立川−新宿間の地下に上下各1線路を新設し、特急列車や特別快速は地下を走らせる」要望を行うという。

 地域ごとの思いもある。甲府発朝一番の特急列車(午前7時8分発)でも9時に新宿に到着できない山梨県は「通勤・通学に6時台の運行が必要」とし、松本市は「東京での早朝会議に出席するには宿泊しないといけないビジネス上の問題解決」を求める。広域期成同盟会に参加した東京都内の2つの自治体の一つ、八王子市は「立川以西の高架化も求めるが、1市でJR東と話をしても力が弱く結集したい」という。

 三鷹−立川の高架化事業費約1710億円のうち、JR東の負担は約280億円にすぎず、残りは東京都や沿線市が負担した。一方、JR東海は昨年12月、首都圏−中京圏を平成37年度をめどに結ぶリニアの建設費5兆1000億円を自己負担する“決断”をした。JR東の負担は十分だろうか。今回の2組織の発足はJR東に“決断”を促す起爆剤になるかもしれない。

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