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2008/02/11

鍋焼きうどんで鍋奉行養成講座

Ban_gurm

鍋焼きうどんで鍋奉行養成講座

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手打ちうどんひと玉/ツユのもと適量/生シイタケ/ホウレンソウ/カマボコ/太ネギ/卵

鍋将軍という人がいて、みんなで鍋でも食おうという事になると素材の仕入れから食べるタイミングに至るまで、こと細かにダメ出しをしてくる。ダメ出しするくらいだから料理が得意なのかと思ったらそうでもなくて、普段は料理なんかしない親爺に多い。また「肉は煮すぎると堅くなるからまだ早い」とか「春菊は食べる直前だ」とか、いちいち当たっているから腹が立つ。逆に主婦なんぞは「めんどくさいから、これでいいの」とかアバウトだ。まあ、そうやって揉めるのも鍋の楽しみではあるのだが。しまいには「これ入れるとウマイんだ」と、どっかの酔っぱらった親爺がビールをどぼどぼ鍋に投入して、以後はぐだぐだ。

鍋料理なんてものは寒い季節に限るわけで、ひそかに来シーズンの鍋将軍デビューを狙っている諸兄も多いとは思うが、

いちいち宴会でトレーニングしていたんじゃカネがかかってしょうがない。そこで、鍋将軍養成講座として鍋焼きうどんなんぞ作ってみよう。それも大きな海老の天麩羅なんて贅沢なモノは要らない。ひと袋21円の天かすがあればざっと五回分は使える。あとはお好み。太ネギは欠かせないね。大仁田ネギも良いが火の通り具合が違うような気がする。あとはホウレンソウとか。シイタケは生だと豪華だが、乾しシイタケを戻してもおいしい。やはり欠かせないのがカマボコで、これがないと何か締まらない。なければ、まあ竹輪でも代用できるか。他に似合いそうなモノといえば、油揚げとか、豚の三枚肉なども良い。冷蔵庫をかきまわしてネタ探しだが、ここは鍋将軍養成講座らしく素材にこだわって食材探しの旅に出よう。

まずカマボコだが、これは小田原「籠清」という事になっている。ここは創業から200年になろうかという老舗で、小田原の船頭小路(千度小路)に大正時代に建てられた本店を構えている。実は、籠清の工場は静岡にある。大井川町なので伊豆半島のスーパーだったらどこでも売っているんだが、ここは鍋将軍の仕入れらしく箱根越えで船頭小路を目指そう。本店でしか売ってない、絵入りカマボコも楽しい。ちなみに三月は桜、四月はあやめ。金太郎飴みたいに仕組みになっていて、切っても切っても同じ模様が出てくる。あと、しんじょも名物。もちろん他の練り物も多種多彩で、籠清のネタだけでおでんを作ると、とても上等なおでんが出来る。

次は箱根を戻って十国峠から伊豆スカイライン経由で冷川へ。萬城の滝に行く途中に「たまごの学校」という店があって、ここでは大幡野高原で産まれた卵を売っている。大幡野というのは伊豆スカイラインの真光教施設の裏あたりだ。ここは終戦後の食糧難の時代に開拓された土地で、空襲で家をなくした静岡市の人たちが移り住んだ。今では養鶏場があったり植木屋の仮置き場になったりしている。ここの卵はとても上質で、よく「黄身が盛りあがっている」とか言うが、大幡野の卵は白身まで盛りあがっている。近くには大見の郷「季多楽」という公営の豆腐屋があるので、そこで油揚げも仕入れよう。なんでこんな山の中に公営の豆腐屋があるのか不思議だが、合併前の中伊豆町長がもともと豆腐屋で、「町長なんか誰でも出来るけどおいしい豆腐はおまえにしか作れないんだから、とっとと町長なんか辞めちまえ」と言われていた人らしい。その、元町長の置き土産というわけだ。中伊豆には、他にも素晴らしいパンを作る不動産屋とか、おいしいコロッケを作る土建屋とか、不思議な人たちが住んでいる。

修善寺に出る途上には、JAが経営する「農の駅」という店がある。ここで生シイタケとホウレンソウを購入。これで具は揃った。あとは麺だ。急がないと麺屋が閉まっちゃう。急げや急げ。いつもの赤橋、田中製麺所。ここには生うどんは何種類もある。鍋焼きうどんなので、一番太い手打ちうどんを選んだ。朝から小田原、中伊豆と廻って来たので、三束しか残ってない。ぎりぎりセーフ、ラッキーだった。そうそう忘れちゃいけない、天かすだ。田中製麺所では何故か天かすも売っていて、ひと袋21円。鍋焼きうどんというと海老天を乗せるのがお約束のようだが、実はおいしいのは海老ではなくコロモの部分なので、本物のグルメの鍋焼きは天かすを使うのだ。安いし。

朝から伊豆半島を走りまわって食材を集めて帰ればもう夕方だ。とりあえず女房に言いつけて晩飯を作らせよう。せっかく買ってきた食材はもったいないから使わせないのも、将軍だな。鍋焼きうどんなんてモノはどう考えても夕食とか朝食とかいう三度の食事の雰囲気ではない。ちょっと小腹が減った時に摘むようなモノであって、しかも部屋のストーブで作ったりすれば気分も良い。じっくりとプランを練りながら、その時が来るのを待つべし。

さて、延々と深夜まで仕事を続けたりすると、腹も減るがちょっとばかり仕事をサボりたくなるものだ。夜食を作るのは、そんな瞬間が望ましい。仕事から離れたくてやるのだから、適度に手間がかかる事が望ましい。お湯入れて三分待つだけじゃ気分転換にならない。といって一杯のうどんのために出汁から取りはじめるというのも面倒なので、市販の薄めて使うツユで良い。どうせ色んなモノを入れてしまうから、まあ、これでいいや。ひとり用の土鍋に薄めたツユを入れて火にかける。今回は生シイタケが肉厚だったので、これは最初から入れておく。しばらくしてグツグツ煮えてきたらうどん投入。

蓋をして再び温度があがるまで、他の具材をつらつら眺めて計画を練る。どれを何分くらい煮るのが適正か、まあ、カマボコなんてのは暖まれば良いわけだが、ネギは煮すぎるとうまくない。ホウレンソウは難しいね。再びグツグツして来たらカマボコを乗せる。ホウレンソウは根本のかたいところを沈めて、葉先の柔らかいところはふんわりと乗せる。ネギは厚く切って脇に寄せておく。再び蓋をして暖まるのを待つ。うどんの火の通り具合は、色で判断する。白かったのが、ツユを吸ってわずかに茶色っぽくなったらそろそろだ。ホウレンソウもしんなりして来たので一カ所にまとめ、場所を作ってやる。火が通った生シイタケを底から発掘して綺麗に並べたり、ネギを微妙に入れ替えしてやったり、鍋奉行養成講座らしい作業が楽しい。で、あいた場所に天かすをザラッと乗せる。

ふたたび蓋をして、ひと呼吸。グツグツして来たら食べ頃だ。おっと、ひとつ忘れ物が。まだ卵を入れてない。というか、卵は火からおろす直前に割って入れる。でないと固まってしまう。鍋焼きうどんの卵というのはスープと麺と、全体に絡んでくれないとおいしくない。と、これはおいらのコダワリ。火からおろしてもまだ鍋はグツグツいってる。熱くてとても食えたもんじゃないのだが、ここで入れたばかりの卵の意味が出てくる。煮えたぎったうどんをまだ冷たい卵にからめて食えば、ちょうど食い頃だ。シイタケ、ホウレンソウ、ネギなんかは熱湯を含んでいるので不用意に手を出すと口の中を火傷してしまう。ハフハフしながらもかろうじて食えそうなのはうどん本体とカマボコだけだ。煮えたぎった周辺部は放置して、卵で冷やしながらうどんを食っているうちに次第に周辺部も落ち着き、スープに卵がからんで、天かすがふやけて、濃厚な旨味の凝縮になってくると、こんな具合に鍋焼きうどんというのは、食い方にもスキルが必要なのだった。


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