ホーム > きょうの社説


2008年2月11日

◎能登の幸を長野へ 「新鮮」と「安全」を売りたい

 能登で水揚げされた新鮮な魚介類を長野県に直送する七尾魚市場の取り組みは、北陸新 幹線で結ばれる石川県と長野県の新たな関係を構築するという点で、興味深い試みである。金沢市と長野市が昨年から集客プロモーションパートナー協定を結んでいるように、新幹線の金沢開業を控えて、石川と長野の交流は、今後ますます盛んになると予想される。石川側としては、新鮮な海の幸をはじめ、地物の海産物をふんだんに使った能登丼などを発信し、食を通じた交流を深めたい。

 中国産ギョーザ中毒問題により、外国産の食材への不安が広がっている折、国内の消費 者の間では、安全な国産品の購入意欲がこれまで以上に高まってきている。「地産地消」の幅をもっと広げ、「国産国消」の発想で、石川産の新鮮な食材を、長野をはじめとする国内各地へ売り込みたい。

 今回の直送便は、七尾公設卸売市場の水産部門を担う七尾魚市場が、昨年末に全農長野 県本部と提携して、週一回の運行がスタートした。全農長野は、食の安心・安全を掲げ、生鮮野菜の「県産国産こだわり宣言」をしており、魚介類についても、より新鮮なものを販売する機運が高まってきたという。

 こうした背景もあって、能登一円の鮮魚を安定的に取り扱う同市場と事業協力し、水揚 げ日に全農長野が運営する店頭で販売することになったようだ。長野県にとって、日本海側への食の門戸を開くきっかけになろう。

 山に囲まれた長野では、新鮮な海産物への渇望はことのほか高いと言われる。七尾―長 野の直送便を契機に、能登各地でも、「新鮮」「安全」をキーワードに、独自にご当地自慢の海の幸を長野向けに売り込みたい。自治体や経済団体が協力し、とれたてのカニやブリ、カキなどの海産物を使った能登丼などを集め、長野県での能登物産展の企画も考えてみてはどうか。

 「能登ファン」を作るために、今から地道に下地を整えておけば、新幹線の開業で金沢 ―長野間が一時間圏となり、アクセスが飛躍的に良くなるころには、長野から能登の地を訪れる人の数が大きく伸びることも十分期待できるだろう。

◎有害サイト対策 接続制限を定着させよう

 出会い系など、いわゆる有害サイトへの接続を制限する「フィルタリング」のサービス が今月から強化された。携帯電話会社が未成年の所有者に原則としてフィルタリング機能を付けることにしたものだが、親が解除に同意すればこの機能は使えなくなる。たとえ子どもが解除を要求してきても、これを認めないためには親が有害サイトの実態をよく知っておく必要がある。小中高校生の接続制限が当たり前になるよう、学校、家庭を含め、地域ぐるみの運動にしていきたい。

 内閣府が一月に公表した世論調査では、十八歳未満がインターネットを利用する場合、 フィルタリングが「必要」「どちらかといえば必要」と答えた人は計76・3%に上った。出会い系やアダルトサイト、薬物情報などの有害サイトが野放しになっている現実に対して強い不安を抱いていることの表れであろう。

 気になるのは接続制限の必要性を多くの人が認めながらも、フィルタリングサービスに ついては六割超が「全く知らない」と回答したことだ。子どもたちが有害サイトに簡単に接することができるにもかかわらず、携帯電話を持たせる親として、ネット上に潜む危険に遭遇しないよう具体的な手立てを講じるという意識は十分とは言いがたい。

 そうした中で、NTTドコモとKDDIは今月から、未成年が携帯電話のインターネッ ト接続契約を結ぶ際、原則としてフィルタリングを設定し、親権者の同意がなければ解除できないようにした。過剰な閲覧制限やサイト選別により、急成長する携帯サイト市場を縮小させることには注意を払う必要があるが、各社が有害サイトの自主規制で足並みをそろえたことは評価できる。

 携帯電話による各種サービスが急速に普及する中、有害サイト対策は後手に回り、今の ところ、フィルタリングが頼みの綱になっているような印象を受けるが、それだけで万全というわけではない。

 親もフィルタリング機能に安心するだけでなく、インターネットの基本的な知識を身に 付け、子どもたちが日ごろ携帯電話をどのように使い、どんな情報に接しているのか関心を持ち続けたい。


ホームへ