韓国の心、南大門焼失す

崩れ落ちた壮麗な木造建築

小澤 健二(2008-02-11 12:50)
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 ガラガラと焼け崩れていく音は、まるで断末魔の叫びのようで、それを見守るしかない市民からは悲鳴と慟哭が入り混じる……。

 韓国・ソウルのシンボルとなっている南大門(崇礼門)が全焼した。
激しい炎をあげる韓国・ソウルの南大門(10日夜)(撮影:韓国オーマイニュース)

 韓国に行ったことのある人や、興味を持っている人で、南大門を知らない人はいないだろう。朝鮮王朝時代に都の漢陽(現在のソウル)の四方にあった城門の一つであり、韓国の国宝第1号に指定されている。ソウルに現存する最古の木造建築物だった。

 朝鮮戦争ではソウルの大部分が破壊されたが、奇跡的に門だけは焼失を免れた。戦後、門の立ち入りは禁止されて近づくことも困難だったが、2005年5月からは門の南側に芝生の広場が造成されたのに伴い、その雄姿を再び間近で見ることができるようになり、2006年3月からは門をくぐることができるようになったという。

 しかし身近になったことが悲劇を招いてしまったようだ。どうやら今回の火災は放火による可能性が高いというのだ。それを知って、三島由紀夫の小説「金閣寺」を思い出した。

 小説と今回の事件では「犯人像」はだいぶ違うだろうが、もし放火だったなら、確信犯にせよ、愉快犯にせよ、この犯人はきっと国家的犯罪者として扱われることだろう。

 南大門というと、僕は韓国に行った時にレンタカーを運転して、その時にそのロータリーをぐるぐる回ったことがある。運転しながらもその壮麗さに見とれてしまい、思わず事故を起こしそうになったことを思い出す。

 その後、前述の通り、南大門に近づけるようになったということを知ったので、次に韓国に行ったときには絶対に門をくぐろうと思っていたのだが、まさかこんなことになるとは……。
消火活動の遅れも指摘されている(10日夜)(撮影:韓国オーマイニュース)

 韓国では旧正月の連休の最終日となったこの日に伝えられた悲劇は、ソウル市民、いや韓国民の心を引き裂くものとなってしまい、テレビ局も終夜このニュースを伝え、国民もそれに見入っていたようだ。

 このニュースについて調べていて、ひとつ驚いたことがあった。それは管理人が常駐していなかったということだった。

 「国宝がそんな無防備な状態で……?」

 いかにも韓国らしいと苦笑するしかなかった。日本では考えられない話だ。街の中心部にあり、しかも出入り自由になった国宝であれば、「馬鹿者」が来るかもしれないリスクを考えて、それなりの警備が必要であることまで気が回らなかったのだろうか……? その上に木造であれば、防火設備を完備するなどの「万一の時」の対策もされていなかったのだろうか……?

 韓国語で「ケンチャナヨ」と言う言葉がある。「大丈夫」という意味で、韓国人はこの言葉を好んで使う。しかし、今回の件は「ケンチャナヨ」では決して済まされない。徹底して原因究明にあたらなければならないし、再発防止策を練らなくてはならないだろう。

 以前に「ワキの甘さ」から、デパートや橋が突如崩壊するなど、信じられない大惨事を引き起こした韓国だが、W杯を開催するなど、セキュリティや準備の大切さを「学習」したと思っていたのだが、今回の事件を知る限りでは「根本」は変わってないのかなと思ってしまう。

 数年後、多分南大門は再建されるのだろうが、その時、以前のように近づくことは出来なくなってしまうかもしれない。寂しいがそれも仕方のないことだろう。韓国の「心」の一日も早い「復活」を待ちたい。
焼失してしまった南大門(撮影:韓国オーマイニュース)

火災から一夜明けた南大門周辺(11日)(撮影:韓国オーマイニュース)


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