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がけっぷちに追い込まれたエース 柔道の井上康生

2008年02月11日06時47分

 強かったころの面影はどこへ行ってしまったのか。また井上が負けた。新旧王者の対決に敗れ、肩を落として畳を降りる姿が小さく見えた。

 準決勝は世界選手権の2回戦で敗れたリネールとの対戦。「一度負けているし、世界チャンピオンですから」と意識していた相手だ。2メートルを超す世界王者の組み手を封じたものの、技が出ない。延長に入り、苦し紛れに背負い投げにいったところを返されて効果を奪われた。得意の内またに頼った単調な攻撃は、今度も通用しなかった。

 アテネ五輪で惨敗して以降、苦しい戦いを続けている。それは、鮮やかに相手を投げ飛ばしてきた昔の自分の姿との戦いだ。

 階級を100キロ級から100キロ超級へ上げ、右肩の手術も経験した。肉体は変わったのに、以前のイメージが頭から離れない。「自分の柔道は何なのか」。迷宮を抜け出せない。

 この大会での連覇を逃し、1年間優勝から遠ざかったままだ。北京五輪出場に向けてがけっぷちに追い込まれたエースは、4月の選抜体重別と全日本選手権にかすかな望みをつなぐしかない。

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