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諸刃の剣

2008年02月09日

 地球環境問題が主題とされる7月の洞爺湖主要国サミットだが、陰の主題はアフリカの貧困対策、開発援助問題かも知れない。アフリカの地政学的な重要性が高まっているからだ。

 アフリカ大陸諸国は米ソ冷戦の終結で東西援助競争が細り、相次ぐ干ばつや飢饉(ききん)、限りない内戦で世界の成長から置き去りにされてきた。そこで、そうした極度の貧困が国際テロの温床になるのを国際的なアフリカ開発計画で防ごうという機運が先進国に広がってきた。さらに新興国の成長で世界的なエネルギーや希少金属の需要が増え、原油価格や1次産品相場が急騰するなかで、アフリカの豊かな天然資源開発投資に火がついた。国際石油資本も舞台をアフリカに移している。

 とくにアフリカを植民地にしていた旧宗主国の欧州各国の関心は強く、サルコジ仏大統領は「地中海連合」の創設を提唱し、リビアを訪問してカダフィ指導者と石油精製施設の話し合いに入り、初めて公式訪問したセネガル、ガボンでは「植民地政策は過ち」と認めた。欧州諸国にとってアフリカ問題は、急増するアフリカ移民との労働摩擦回避、政情不安の中東石油の依存度を下げ、対欧ガス供給を政治的に操るロシアの資源石油ナショナリズムからの脱却など、国内問題に直接つながる。

 この中に割ってはいっているのが中国だ。中国はナイジェリアで鉄道整備、アルジェリアで高速道路建設、アンゴラの社会資本整備などに乗り出し、アフリカからの原油輸入は総輸入量の30%に達している。

 アフリカブームは経済的離陸へつながるのか、逆に格差を広げ、政権腐敗をさらに助長するのか。「諸刃(もろは)の剣」だ。洞爺湖サミット前の5月に横浜で日本が主導する第4回アフリカ開発会議が開かれる。人道主義一筋では割り切れなくなったアフリカ問題対応の試金石となろう。(昴)

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