第15回 追いつかないんですよ
さんま いや、ぼくもね、改めようとか、
こういうふうに生きてみようとか
思ったことは何度もあるんですけど、
もう、本当にダメですね。
ダメなのはわかってるんですけどね。
いまさらダメなところを取り返せないから。
あの、追いつかなかったんですよ、すべて。
糸井 あ、やっても、やっても。
さんま 追いつかなかった。
戻そうとか、これやろうとか、
こういうふうに人生生きてみようとか、
みんな思うんですけど、
あの、追いつかないんですよ。
ああ、もう過ぎてるやんとか。
いまさら、これ直したところでなにがとか。
なんか人のためにとか思っても、
そういうのはもうやっぱり
追いつかなかったですね。
糸井 はぁーー。
さんま こないだね、秋野大作さんと話したら、
「いま、世界平和について考えてる」と。
まじめにおっしゃるんです。
で、そのあとに言ったのが、
「でも、なにから
 手を出していいかわからない」と。
一同 (笑)
さんま そういうことをおっしゃられたんですけど、
これは、すばらしいなと。
糸井 「なにから手を出していいかわからない」。
さんま 「なにから手を出していいかわからない」。
そこですよね、やっぱり。けっきょくは。
糸井 追いつかないんですね。
さんま 追いつかないんですよ。
糸井 なるほどね。
いや、そうですよ。
さんま まぁ、ほかの人がどうかわかりませんけど、
ぼくは、追いつかなかったですね。
やり直したくても、
たぶん、ぼくは追いつかないです。
糸井 追いついたときには、
その話は終わってるんですよね。
さんま はいはい、そうです、そうです。
糸井 昔は、それが欲しかったんだけど、
いまはいらないんですよね。いつでもね。
さんま だから、追いつけない。
糸井 その意味で、生ものはおもしろいんですね。
スポーツ、ギャンブル、女って。
さんま もう、そのとおりですね。
糸井 生のものは、追いつくも追いつかないも、
「いま」ですもんね。
さんま そうです、そうです。
だから、ぼくは、改めようとか、
いろんなこと思いましたけど、
追いつかなかった人生で
終わるんだろうと思うんですよ。
糸井 できることは、
いつも生でいることだけですね。
さんま そう思うんですよ。
たぶん、どうやっても悔いは残るでしょうから。
「悔いのない人生を」なんて言う人はね、
なにか違うんじゃないかなぁと思うんですよね。
あの、こないだも、あいだみつをさんのことばで
「敗者がいるから勝者がいる」
みたいなのがあって、
それ見て、思わずテレビで
「アホや」言うてしもうたんですけど。
一同 (笑)
さんま いや、もう、失礼なことなんですけど、
思わず言うてしまったんです。
まあ、すごいことばなんですけども。
糸井 なんでしょう、
止まって考えていることばというか、
生ものとして見てないというか。
さんま そうですね。
だから、ぼくには助けにならないというか。
あの、あいださんは
女で苦労してないなと思いましたね。
糸井 (笑)
さんま あの人は、
女でどえらい目にあってないなとか。
金、請求されてないかなとか。
一同 (笑)
さんま いや、もう、すいません。
糸井 あいださんというよりも
「敗者がいるから勝者がいる」という
ことばに対する違和感ですね。
さんま そうです、そうです。
オレとは違うな、ということです。
糸井 なんていうのかな、
「まだ運転できる車なんだ」と思って
運転していけば、それはそれで、
きっと、道は走れるんだけど。
さんま そうそうそう。
糸井 「どうだろう、その旅行は?」
みたいな気持ちはありますよね。
さんま まぁ、そのやり方で
遠くまで行く人もいるのかもしれませんけど、
ぼくとは違うなと。
糸井 「追いつかないんですよ」
のほうがよっぽど重いと。
さんま (笑)
糸井 だから、さんまさんも色紙にね、
「追いつかないんですよ。
    あかしやさんま」と。
さんま クワー(笑)。
糸井 「追いつかないんですよ」ね。
さんま 追いつかないですねぇ。いろいろ。
糸井 けっきょく、追いつくことがあっても、
「追いついた」というのは、
止まってる状態で思えることですから。
それはいったん安定するかもしれませんけど、
安定って、イコール渋滞ですからね。
さんま ああ、なるほどね。
糸井 動いてるからこそ、不安定になるんで。
極端にいえば、その、
死んじゃったら安定しますよね。
さんま ですよね。ええ、ええ。
糸井 その意味で、さんまさんっていうのは、
もう、すごいライブの中にいるんですよね。
ずっと生ものっていうか。
さんま そうですね。
ずっとそうしていたいと思いますし。
糸井 で、最後は止まるんです、絶対にね。
さんま はい。追いつかないまま終わるんです。
糸井 終わったときに、
シリコンで前が膨らんでるかどうかは別にして。
さんま クワー(笑)。
  (続きます)

2008-02-07-THU

(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN