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【暮らし】

子育てお母さんの反発ありますが…事故深刻 自転車3人乗り禁止徹底

2008年2月4日

保育園の送迎などで、自転車の3人乗りをする母親は多い

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 幼児2人を前後に乗せた自転車の3人乗り禁止を徹底−。警察庁は早ければ3月にも「交通の方法に関する教則」を改正し、自転車への指導強化を図る方針だ。一方、保育園の送迎や買い物で3人乗りを活用する親は多く「生活が大変になる」「少子化対策に矛盾する」などと反発する声も出る。 (渡部穣)

その一 教則を改正

 「三人乗りができないと、十五分ほど早く家を出なくちゃいけない。朝の忙しさが分かっていない。生活が確実に不便になる」。街中で三人乗りをしていた母親は不満そう。別の母親も「保育園も少なくて、近くまで行けるバスもないのに。三人乗りの禁止は、子育て支援に逆行している」と苦言を口にする。

 道路交通法で、三人乗りは「乗車制限違反」。二人乗りでも「六歳未満」の同乗しか認めていない。警察はこれまで違反行為を厳密に取り締まっていなかったが、昨年の道交法改正(今年六月施行)から強化の方向に動いている。自転車のマナーなどを定めた教則の改正もその流れだ。

 その背景に、自動車事故の減少と比較して、自転車の事故が目立つ現状がある。

 自動車事故の死者は二〇〇六年までの十年間で45%減少したが、自転車事故の死者は23%減と半分の減少幅。さらに、重傷者が増加したのは、自転車事故だけだった。〇六年、自転車に同乗中にけがをした六歳以下の子どもは二千百五人。〇五年に二人、〇四年に三人の死者も出ている。警察庁によると、自転車の事故の七割に何らかの交通違反があった。

その二 指導も強化

 昨年の道交法改正に伴い、十三歳未満を除き、「自転車通行可」の標識がない道路で、原則車道左側の通行を義務づけるルールなどを徹底。教則改正では三人乗り以外、自転車乗車中の▽傘使用▽携帯電話の操作・通話▽ヘッドホンステレオの使用−も禁止する予定だ。

 実際、規制は強化されるのか。

 警察庁の「自転車の安全な通行方法等に関する検討懇談会」座長の吉田章筑波大大学院教授は「教則の改正がよりどころになり、警察も取り締まりやすくなる」と話す。

 自転車の違反行為で、各都道府県警が昨年交付した警告票は約百七十五万件(昨年十一月末現在)で、前年同月比34%増だった。吉田教授の予想では、教則改正でさらに増加が加速。悪質な場合、都道府県ごとの規則で定められた罰金が科せられる例も増えそうだ。

 日常生活で三人乗りをしている親から、反発する声が出る一方「指導の強化はやむを得ない」という意見も多かった。走行中や乗降時にバランスを崩して転倒し、子どもにけがさせた経験がある親も多いからだ。

 自転車同乗中の六歳未満のけがは、四割以上が頭部。ある母親は「三人乗り禁止より、(道交法で努力義務になった)ヘルメット着用の徹底が先では」。

 消費生活アドバイザーで、母親グループ「子育てグッズ&ライフ研究会」代表の宗沢美果さんは「安全の徹底には賛成。だが、保育園の送迎に便利なバス整備など、子育てサポートも併せてやらないと、母親は苦しい」と話す。

 モータージャーナリストの三本和彦氏は「教則の改正は効果がない。自転車専用道路を整備するなど、実質的な方策を打ち出す必要がある」。

 ちなみに、幼児二人を自転車に乗せて押して歩くのは「違反ではない」(警察庁)。保育園の送迎などで片道だけ“押し歩き”すれば、時間を節約できますよ。

 

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