シンポジウムで発言する慈恵病院の蓮田太二副院長(左端)。右は田尻由貴子看護部長と末広正男・熊本市健康福祉局総括審議員

シンポジウムで発言する慈恵病院の蓮田太二副院長(左端)。右は田尻由貴子看護部長と末広正男・熊本市健康福祉局総括審議員

 慈恵病院の「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)をテーマにしたシンポジウム「こうのとりのゆりかごが映す社会」(県保険医協会)が9日、熊本市のホテルで開かれ、設置の意義や社会的背景などについて意見を交わした。

 パネリストは同病院の蓮田太二副院長と田尻由貴子看護部長、熊本市健康福祉局の末広正男総括審議員。

 蓮田副院長は「(預けられた赤ちゃんが)乳児院で愛情深く育てられても、別の児童養護施設に移ると、親と思っていた人から引き離され、とても悲しんでしまう」と預け入れ後の問題点を指摘し、「(里親や特別養子縁組で)家庭で育てられる方がいい」と述べた。

 末広総括審議員は、全国の2006年児童虐待相談数が約3万7000件に上り、1週間に1人の割合で児童が虐待死している現状を報告。市が昨年5月に24時間対応にした妊娠に関する悩み相談にも、前年度の6倍近い約650件の相談があり、「いかに多くの女性が悩んでいるか分かった」と語った。

 田尻看護部長は、16歳の女子高生が同級生の子どもを身ごもり、妊娠36週で両親が気付き病院に相談、出産後に養子に出したケースなど実例を紹介。「相談こそがゆりかご設置の意義だ」と強調した。

=2008/02/10付 西日本新聞朝刊=