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【政治】<東京特派員の眼>福田首相をどう見る2008年2月10日 07時10分
福田康夫首相は手堅さが持ち味ですが、半面、「影が薄い」という批判がつきまといます。参院の与野党逆転、泥沼の年金記録不備問題、それに陰りが差してきた景気と、苦しい政権運営が続き、支持率も低迷しています。ところが、各国の特派員に福田評を聞いたところ、意外な答えが返ってきました。 ■王 開虎氏 『劇場型』とは別タイプ 北京日報(中国) 昨年末の福田さんの訪中は、中国では「迎春の旅」と呼ばれて高く評価された。福田さんが北京大学で行った演説、孔子廟の訪問ともに大歓迎を受けた。 福田さんは温厚で、知恵もユーモアもある政治家だ、と中国人は見ている。世界の指導者の中で福田さんが最も人気がある。日本国内とはまるで違う受け止め方だ。 福田さんが抱える内政の課題は、極めて難しい。まず野党との関係だ。インド洋での給油再開法案のように、衆院で再可決させる手法を連発すれば、「強引だ」と世論の反発を招くだろう。 ガソリン税の暫定税率問題では、廃止すべきだという世論は強い。応じないと、国民の不満が高まるし、逆に廃止すれば税収不足になる。 国民の収入が増えていないのに、物価が上昇している経済も苦しい。 日本人は小泉さんの「劇場型政治」に慣れきってしまったのではないか。だから、別のタイプの福田さんが物足りなく感じるのだろう。 年金、政治とカネ、消費税という歴代政権が先送りしてきた課題が今、福田さんに降りかかっている。 福田さんはそれを受け止めて、結果を出さなくてはならない。しかも、持ち時間は少ない。厳しい立場にある福田さんに同情する。 ■朴 弘基氏 安定感あり総合評価『〇』 ソウル新聞(韓国) 急進的な印象だった安倍前政権と違い、福田政権は安定性があり、国民の願う政治をしようとしているようにみえる。総合的には評価できる。 安倍前政権の政治目標は、憲法改正など理念的だった。一方、福田政権が掲げるのは消費者中心、格差是正。「生活第一」を訴えて民主党が参院選に勝利したように、福田首相の姿勢は、国民の気持ちに沿っている。 ガソリン税の暫定税率維持では、つなぎ法案を取り下げ、野党との対話の道を選んだ。参院で多数を占める野党と話し合おうという姿勢が、安定感につながっている。 首相は小沢一郎民主党代表に大連立を呼び掛けた。話し合いだけでなく「連立」という多数派工作も、政治の安定のために切ることが許されるカードの一枚だろう。 半面、安定性は長所だが、「つまらない」「福田カラーが見えにくい」との短所でもあり、それが内閣支持率低下を招いている。 支持率回復には、道路特定財源維持の必要性を国民に直接訴えたり、首相が前面に出たらいい。 韓国の李明博(イ・ミョンバク)次期大統領との間でシャトル外交復活で合意するとか、中国の胡錦濤国家主席の訪日を成功させるとか、外交面でリーダーシップを発揮すれば、求心力が回復するだろう。 ■G・ヒールシャー氏 常識的な人課題は年金 フリージャーナリスト(ドイツ) ここ三代の首相を見ると、小泉さんはプラスの意味で常識外れ、安倍さんはマイナスの意味で常識外れだった。 その点、福田さんは常識的な人。いい意味で普通の自民党政治に戻った。政治もだいたい常識的な線で行うので、福田さんが首相になって、ホッとした。 福田さんは大げさなことは言わない。だが、インド洋での給油を再開する法案を、衆院で再可決して成立させたことは、決断が求められた時は決断できる指導者であることを示した。言葉だけのリーダーシップではない。 一方、薬害肝炎の被害者全員救済を決めたことは、国民と国家の間で問題が起きた場合は、国家が責任を持つ、という意思の表れだ。 国民がやってほしいと願うことを理解し、解決していこうという姿勢であり、決して官僚寄りではない。 福田さんは自衛隊の給油再開問題で戦術を、薬害肝炎問題で戦略を見せた。この両面で、福田さんはもっと評価されていいと思う。 福田さんが全力を尽くすべき第一の課題は、年金問題だ。国と社会と政治の基本が問われる問題だ。国民の立場に立つ政治を行うことを示した福田さんなら、解決はできると期待する。 (東京新聞)
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