ジョセフ・E・スティグリッツ/Joseph E. Stiglitz
世界で最も有名な経済学者が問う「アメリカの横暴」と「ニッポンの覚悟」
「格差社会」解消の処方箋
(月刊現代 2007年4月号)


「グローバリゼーションは世界の人々に幸福をもたらすはずだった。だが、実際にはごく少数の金持ちがますます裕福になって、格差を広げただけだった。そしてこういう結果を招いた背景にはアメリカの横暴がある」
2001年、経済活動への情報の影響について扱う学問「情報の経済学」の分野の功績を評価されて、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツ氏は、グローパリゼーションの「失敗」と、その「理由」についてこう説明した。氏は1993年にクリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加し、95年より委員長に就任、97年から約3年間は世界銀行の上級副総裁兼チーフ・エコノミストを務めた人物である。2002年に上梓した『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』は、世界38ヵ国で翻訳され100万人以上に読まれ、03年に書いた『人間が幸福になる経済とは何か』では、IMF(国際通貨基金)の在り方に強い懸念を示した。
06年11月に日本でも出版された『世界に格差をバラ撤いたグローパリズムを正す』(徳問書店・原題 Making Globalization Work)は、アメリカのエゴにゆがめられ、不公正なルールに支配されたグローバリゼーションを痛烈に批判している作品だ。現在コロンビア大学教授として活躍中の、世界で最も有名な経済学者スティグリッツ氏に“グローバリゼーションが私たちに何をもたらしたのか"、そしてグローバリゼーションが抱える問題を解決するにはどんな改革が必要かを聞いた。


−グローバリゼーションが世界にもたらした最も大きな失敗とはどんなものでしょうか。

スティグリッツ(以下S) 現在、世界人口65億人のうち、およそ40%が一日を2ドル以下で生活する貧困状態にあり、およそ14%が一日を一ドル以下で生活する極貧状態におかれている。こうした人々の一日は、燃料や飲料水を探すことで費やされる。そんな暮らしを強いられている人を、地球上に20年前より増やしてしまったのが、グローバリゼーションだ。特にアフリカでは極貧者の数が、1億6400万人から、3億1600万人に倍増している。

−そもそもあなたが問題にしているグローバリゼーション、グローバリズムとは、どんなものを指すのですか。

S 一般的概念でいうグローバリゼーションとは世界中の社会が一つに統合されていくことだ。アイデアや知識、そして社会運動や政治運動までが国境を越えることだ。だからグローバリゼーションが進んだ現代社会において国という枠組みは昔ほど意味を持たなくなっている。私が研究してきた経済のグローバリゼーションとは、世界の経済がより緊密に統合されること。人工的な障壁を取り去り、国境を越えて、モノやサーピス、人や資本が動くことである。

ーグローバリゼーションの流れはいつ頃から活発化したと考えられるのでしょう。

S グローバリゼーションそのものは昔からあった。コーヒーはエチオピアで発見されたが、いまではグローバルに存在する。南米アンデス山脈が原産地とされるジャガイモのような、我々が日常的に口にする食べ物のほとんどは新世界から来たが、現在はどこにでもある。私が問題にしている、近代のグローバリゼーショんは、25年ほど前に始まっている。輸送コストやコミュニケーションコストが急速に低下した頃からだ。
莫大な資本が国境を越えて移動するようになってグローパリゼーションは加速した。この進化にインターネットの果たした役割は特に大きい。知識のグローバリゼーションを進めたり、コミュニケーションコストを低下させたりしたからだ。

アンフェアな『世界の支配者』

−グローバリゼーションは世界中に不幸だけをもたらしたのでしょうか。

S まずグローバリゼーションがさまざまな分野における成功の基盤になっていることを指摘しておきたい。つまり、たくさんの成果をもたらしてきたということだ。たとえぱ日本や中国を含む東アジアの成長は、それらの国の政府がグローバリゼーションを無条件で受け入れるのではなく、上手にコントロール・管理した結果、成し遂げられたものだ。
グローバリゼーションは本来、先進国と発展途上国の双方に利益をもたらすはずのものだが、この「ゲームの支配者」は発展途上国に対して非常にアンフェアだった。そのためこれらの国のほとんどで失業率が上昇し、先進国と途上国の格差は増大した。さらに先進諸国における国民の貧富の差すらも拡がった。金持ちはより金持ちに、貧困層はますます貧困になっていったのである。グローバリゼーションが不平等をさらに拡大させたことは事実だ。

−ゲームの支配者とは誰で、どこが誤りだったのですか。

S たいていの場合、このゲームを動かしているのはアメリカに代表される先進工業国や先進国内の特定の利益集団で、ルールは彼らによって決められており、自分たちの利益を増大させるようにつくられた。たとえばウルグアイ・ラウンド(1986〜95年、貿易における障壁をなくし、貿易の自由化や多角的貿易を推進するために行われた通商交渉)では、途上国が関税の引き下げと知的財産権や投資やサービスの新しいルールを受け入れる代わりに、先進国側は農業・繊維分野の貿易自由化を約束したが、先進国はその取り決めをなかなか果たそうとしなかった。繊維については自由貿易の障害となっている割当制度廃止までに10年の移行期間が設定され、農業補助金については廃止の目処さえ立たない有り様だったのである。

−こうした不平等がまかり通っているのは、グローパリゼーションの舵取りを任されているIMFや、世界銀行の在り方に間題があるからだと指摘していますが、それはどういうことですか。

S 世界の金融システムを監督するのが仕事のIMFでは、実質的にアメリカ一国だけが拒否権をもっているし、経済開発促進を担う国際組織の世界銀行の歴代総裁はアメリカ大統領が指名してきた。だからIMFではドルの意向がすべてで、世界銀行の決定にはアメリカの政治事情が強く反映されてきたのだ。このような組織が途上国の意見や懸念に重きをおくはずがない。

−あなたは、グローバリゼーションの中できわめて大事な要素である貿易の自由化と資本市場の自由化に関わる攻策枠組みをつい最近まで決定してきたのはIMF、世界銀行とアメリカ財務省だったと指摘しています。だが、いま彼らの間で結ぱれた合意(ワシソトン・コンセンサス)は、ほとんどの途上国からすっかり信頼を失っています。その政策の誤りは何に起因するのですか。

S 最も基本的な間違いは市場原理主義への信奉によって生まれた。つまり、市場そのものがあらゆる問題を解決してくれるから、政府の役割を最小化していくべきだという考え方だ。民営化と貿易の自由化と規制緩和を重要視したのだ。だが大事なのは、政府の役割と市場の役割のバランスである。私は開発促進や貧困層保護で政府に大きな仕事をさせるべきだと考えている。産業界を成長させて雇用を創出するには、その環境を政府が整えてやらねばならないのだ。
二つ目の間違いは、公平性の問題を無視したことだ。つまり富の配分について考慮しなかった。コンセンサスを支持する者の中にはGDP(国内総生産)さえ伸びていけば最終的には皆がおこぼれにあずかれるという、「トリクルダウン理論」を信じる人もいた。だがそれは誤りだった。ラテンアメリカの国々ぱかりでなくアメリカでさえ、経済がよくなったのに、貧しい人が増加するという現実に直面することになった。そして、こうした不平等が広がり、格差が大きくなると社会や政治の不安定につながり、それが経済成長の障害にもなった。重要なのは、各国が公平性の実現に重点を置き、成長の恩恵が広く共有されるように手を打つことなのである。

途上国の人間より“裕福”な欧州の牛

−発展途上国のほとんどがグローバリゼーションの波の中で経済的敗者となりましたが、あなたは、中国とインドは違うと指摘しています。なぜ2ヵ国はこの25年間で勝者となり得たのですか。

S 中国は巨大生産基地として、インドはコンピュータ・プログラミングやカスタマー・サーピスなどの高技技術を誘致して成功を収めた。両国がグローバリゼーションに上手に対応できたのは、長い間、教育とテクノロジーに莫大な投資をしてきたからだ。これこそが、インターネットがもたらした新しいチャンスを利用することを可能にしたのである。
また資本の自由化に対する姿勢も他の国々とは違った。長期投資向けには市場を開放しても、短期の資本流入には制限をかけ続けたのだ。一晩の間に入って出ていくようなおカネがいくらあっても工場建設はままならないし、新たな雇用は生まない。中国とインドは、短期の資本移動は経済の不安定化と、報酬なきリスクしかもたらさないことを理解していたのだろう。彼らはつまり自分たちがグローバリズムに利用されないようにして、逆に利用したのだ。

−あなたとコロンピア大学で同僚だったフレデリック・ミシュキンは、昨年9月の米連邦準傭制度理事会(FRB)理事就任演説で「グローバリゼーションは発展途上国の生活水準を高める」と述べて、さらに推進すべきだと強調しました。あなたとはまったく正反対の考えです。ミシュキンの主張をどう思いましたか。

S ミシュキンはいくつか間違いを犯している。そもそも彼は金融のグローパリゼーションしか見ていない。他の面の考察をしない上に、その悪影響を無視している。短期資金移動や継続的資金移動が、途上国の不安定を助長したことは事実であって、グローバリゼーションは成長を助けてはいない。
東アジアで97-98年に起きた金融危機、ラテンアメリカやロシアのグローバルな金融危機の原因を分析すれぱそうしたことは明らかだ。ミシュキンは自分が主張していることに対する反証を無視しているのだ。

−グローバリゼーション流れの中で自由貿易を推進してもなぜ途上国の生活レベルは上がらないのですか。

S まず言いたいのは、世界のどこにも本当の意味の自由貿易は存在していないということだ。特にアメリカはこれを本質的に推進したことは一度もない。口で言ったとしても、それはレトリックに過ぎないのだ。いままで先進国は裁量的に関税が認められ、同じ先進国の製品には低い関税率を、一方、途上国の製品には平均して4倍もの関税率を設けてきた。さらに途上国は産業育成のための補助金の撤廃を強いられるいっぽう、先進国は巨額の農業補助金を継続することを認められてきた。

−具体的には現場でどんなことが起きているのですか。

S たとえば、アメリカとEUと日本の農業補助金の総額は、サハラ以南のアフリカ諸国の総所得の75%を超える額にまで上っている。アフリカの農民が世界市場で競争することなど不可能だ。もっとわかりやすい例をあげよう。欧州の牛は一日平均2ドルの補助金を受けている。一方、途上国の過半数の人々は、一日2ドル以下での生活を余儀なくされている。つまり途上国で貧者として暮らすより、欧州で牛として暮らすはうが、経済的に豊かな生活を送れるのだ。

−ではこうした補助金はどうしたらいいでしょうか。

S まず農業補助金は小家族経営農業とその伝統的な生活様式を守るために使われていると、アメリカではよく語られるが、これはウソだということを知らねぱならない。実際には多くの部分が大手農場に渡っており、そのうちのかなりは企業に経営されている。補助金によって大手農場は農産物を大量に安く生産することが可能になり、途上国の農民を圧迫している。こうした循環を断ち切るためには補助金を撤廃するのがいいだろう。先進国が、移行期間が必要と考えるなら、まず所得の高い農家に対してのみ全廃とする手もある。補助金撤廃は、農産品価格の上昇を通じて、ほとんどの人々が農業に依存している途上国に莫大な利益をもたらすだろう。

−関税に関して最初に改めるべきことはなんですか。

S 発展途上国全体の70%の人口は農業従事者であるから、多くの途上国は農業国と言えよう。先進諸国は未加工品の関税を低く、加工品の関税を高く設定している。この「傾斜関税」こそが農業国の工業化意欲を挫いているのだ。したがって、最初に行うべきことは、この傾斜関税の撤廃である。

途上国民への『死刑宣告』

−知的財産権をめぐっても、あなたはアメリカをはじめとする先進国の姿勢を批判していますね。

S そもそも先進国と途上国とを分けるものは、資源の格差のほかに「知識(情報)の格差」がある。これを縮小させる作業は、知的財産権(発明や考案など主に人間の創作活動によって生み出されるものをめぐる権利)制度によって、たやすくも難しくもなる。しぱしぱアメリカは貿易協定のなかに知的財産権保護を名目にした条項を押し込んで、途止国が知識にアクセスすることを困難にして格差縮小を遅らせている。

−あなたはこの間題で最も深刻なのは医薬品に関するものだと述べています。

S アメリカは途上国におけるジェネリック(後発)医薬品(特許期間などが満了し、特許権者でない医薬品製造企業がその特許内容を利用して製造した同成分を誇つ医薬品)の製造を遅らせるべく、貿易協定に特別な条項を入れようとする。ジェネリック医薬品は従来の商品よりかなり安く作ることができ、安価で売られるから、おカネのない途上国の国民を助け、ときには命を救うことになるものだ。だから逆に言えぱアメリカのやっていることは、何千人もの途上国の人間に対する「死刑宣告」になりかねない。なぜならその薬がエイズ治療薬のこともあるからだ。アメリカの歴代首脳の中でもブッシュ大統領はこの問題においで、罪は重い。

−なぜアメリカ、あるいはブッシュ大統領はこうした非人道的なことを平気でしているのでしょうか。

S ブッシュ大統領に最も影響力をもつのが製薬業界だからだ。彼らが知的財産権を強化しろ、特許権の寿命を延ばせとブレッシャーをかけている。もしこうした動きが無規され発展途上国でのジェネリック医薬品の製造が認められてしまえぱ、アメリカの製薬会杜の利益は一気にしぼんでしまうことになる。いま必要なのは、こうしたアメリカなどの行動を後押ししているTRIPS(知的財産権の貿易側面に関する協定)を改定することだ。つまり、知的財産権と貿易との関係を見直して、たとえば発展途上国がジェネリック医薬品にもっとアクセスしやすいようにするのである。そして私たちも、製薬会杜が発展途上国を襲っている病気がどんな種類のものかすら、リサーチしていないことを知るべきだ。

−知的財産権制度の不公平さは、途上国で使われてきた「伝統薬」に対する先進国の姿勢をみれぽわかると指摘していますが、それはどういうことですか。

S 世界のあらゆる場所には昔から様々な病気の治療に使われてきた独自の伝統薬が存在する。ところが研究者や製薬会杜は、現地ではずっと以前から使われていた治療薬を次々と「再発見」していった。ひどいケースでは、ほとんど新たに何も手を加えずに、自社ブランド品として販売していた。バイオバイラシー(生物資源をめぐる盗賊行為)を先進国の企業が世界中で行っているのだ。

−知的財産権の便用料は払われなかったのですか。

S
 それどころか、盗んだ知的財産権の使用料を途上国に請求しているのだ。こんな例がある。インド産の二−ム油には昔から美容と治療、害虫駆除の効果があることが知られていた。ところが1990年代、欧州とアメリカは勝手にニーム油に関する特許を取り、2000年までにその数は欧州だけで90にもなった。これに気付いたインド人のある起業家の訴えで、03年までに欧州では特許の多くが取り消され、20ほどに減った。だがこれに応じなかった国がある。アメリカだ。ニーム油に関するアイデアはいままで文書化も特許化も一度もなされてきたことがないと、拒否したのである。

日本はアメリカともっと戦え

−日本でも格差が広がっていると言われていますが、その原因はやはりグローバリゼーションにあると思いますか。

S
 他の先進国でもそうだが、日本でもグローバリゼーションが影響していること間違いない。発展途上国の非熟練労働者と先進国の非熟練労働者とが競争することによって、彼らの賃金が下がり、熟練労働老との収入差が拡大するという現象は、グローバリゼーションに内在するロジックの一部だ。だから、日本でも貧富の差が広がる原因の一部になっていると思う。だがこの点はアメリカのはうが日本より深刻だ。社会が不平等であるし、セイフティ・ネットも医療制度も弱いからだ。格差杜会に私が薦める処方箋は、教育にもっと投資して、非熟練労働者を少なくすることである。そして、一つの職業から別の職業に転職しやすいように職業訓練プログラムを充実させ、累進課税をもっと徹底させ、低収入の人からあまり税金を取らないことだ。

−日本を含め世界はアメリカの横暴にどう立ち向かうべきですか。

S まず国連のような国際機関の権力をもっと強化しなければならない。国連はイラク戦争に関して正しい判断をしたが、アメリカの暴走を止めることはできなかった。そしてアメリカは国連の判断を無視して、先制攻撃をしてしまったのだ。アメリカが支配しているIMFや世界銀行の人事も民主的にすべきだ。そしてグローバリゼーションについて、世界中でみながさらに議論することが大事だ。私が指摘してきたような問題の重要性を認識することが必要である。

−日本はグローバーリゼーションの流れの中でどのように戦えぱいいのでしょうか。同盟国アメリカに対してどのように振る舞うべきですか。

S
 もっと独立して行動すべきだ。たとえば1997年の東アジア通貨危機のときに、日本はアジア通貨基金の創設を提案し、経済回復に必要な資金を拠出するという、とてもいいアイデアを申し出た。だがアメリカとIMFは、アジアでの自分たちの影響力が弱まることを懸念して、それに猛反対した。結果、日本の計画は頓挫して、インドネシア、韓国、タイに景気後退という悲劇をもたらした。残念なことに、日本は、アメリカの低抗に遭ったとき、アジア全体のために反論して、十分に戦おうとはしなかった。日本がアジア通貨基金の設立のためにもっとがんぱっていれば、それはアジアのためにも世界のためにもなっただろう。日本はさらに自信を持って独立して行動してほしいと思う。
イラク戦争のときも日本を含む他国がもっとブッシュ政権にプレッシャーをかけていたら、アメリカにとってよりよい結果が出たかもしれない。アメリカ市民は、2002年に他国が断固としてブッシュ政権に立ち向かってくれていたらよかったのにと、考えているだろう。

誰がグローバリゼーションを正すぺきか

−日本の景気回復をどうみていますか。いざなぎ景気(1965〜70年)以上にいい状況との見方もありますが、それを信じてよいですか。今年1月、日本銀行は金利を上げる構えをみせましたが、あなたはそれを支持しますか。

S
 いざなぎ景気以上にいいと言えるような状況ではない。数字をみると、1989年ごろに始まった、15年間のゆっくりとした成長から、ついに強く抜け出して回復しつつあるように見える。それはとてもいい知らせだが、60年代70年代の回復ぶりとは違う。日本の現状をみると、その当時のペースで成長できるかどうかは未知数だ。そして、日銀が金利を上げるのは誤りである。現時点でインフレになる気配や証拠はない。もしその政策が実行されれば景気の減速を招き、経済を停滞させる可能性すらある。

−アメリカ国民はグローバリゼーションを支持しているのですか。

S
 アメリカ国民はグローバリゼーションについて様々な意見を持っている。まさに賛否両論だ。グローパリゼーションは、確かに恩恵をもたらしたが、犠牲も払わせた。この点は日本と同じだ。そしてグローバリゼーションのせいでますます貧富の差が拡大した。懸念すべきことは、最貧困層がさらに貧しくなったことだ。
私が生まれ育ったインディアナ州のゲアリーという町はもともと鉄鋼業の町だったが、グローバリゼーションの競争に負けた。市氏は犠牲になったと思っている。失業者も多数出た。韓国や中国の効率のいい鉄鋼業者に勝つことができなかったのだ。ところがこの町の大観模な鉄鋼会杜が、オランダのロッテルダムに本拠がある、ミッタルという鉄鋼会杜に買収されると、今度は多くの雇用を生み出し始めた。再建されて、以前よりも効率がよくなったのである。この町を見ているだげでも、グローバリゼーションには光と影の部分があることがわかるだろう。
これまでグローバリゼーションは誤った方向に進んできた。その責任の多くはアメリカにある。しかし、世界に存在する公正なグローバリゼーションを求める声に応えるのもまた、アメリカしか考えられないのも事実なのだ。

 
 
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