最近、テレビ局のプロデューサーの話を聞く機会があった。やっぱりそういうことか、とうなずいたのは、ワイドショーなどのコメンテーターについてだ。
「政府擁護の人が多いのは、政府・与党からの批判を恐れているから。東京では番組がチェックされている。バランスを取ったように見せかけるため、政府に批判的な人も入れるが、論戦に負けそうな人を選んでいる」
6日、大阪府知事に就任した橋下徹氏が、タレント弁護士として数多くの番組に引っ張りだこだったわけが、ここにある。番組でのかつての発言を問われて、「話芸だった」と釈明した橋下氏の言葉は、コメンテーターが言論人ではなく、「電波芸人」であることを図らずも示した。
就任前から物議をかもす発言を連発した新知事もさりながら、気になるのはテレビ局のスタンスだ。当選が決まった夜、収録済みで未放映だったレギュラー番組を早速流した局や、選挙戦の模様などを交えて、手腕が未知数の新知事をヒーロー扱いする特集を組んだ局もあった。
3日のテレビ欄(関西地区)には、「橋下知事」の名前が躍る番組が五つもあった。いずれもバラエティー系。旬の人だから視聴率が取れるのだろうが、テレビが応援団と化したかのようだ。
新知事に対する身内意識が潜んではいまいか。今後もテレビ出演は続けるという新知事だが、失政をおかした時、テレビはあくまで応援団でいるのか、それとも昨年のボクシングの亀田一家のように、手のひらを返してバッシングに走るのだろうか。(社会部)
毎日新聞 2008年2月9日 大阪朝刊