東京で開かれた先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、米国の信用力の低い人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題をきっかけに世界経済は「より不確実な環境に直面している」との厳しい認識を示し、各国が「個別に、あるいは共同して、適切な行動を取っていく」との決意を盛り込んだ声明を採択した。世界経済の安定と成長のためにG7各国は重い宿題を背負った。
米国を震源地とするサブプライム問題は、じわりじわりと悪影響が不気味に広がり、収束の気配は見えない。国際通貨基金(IMF)は先月末に世界経済見通し報告を改訂し、二〇〇八年の実質国内総生産(GDP)成長率は〇七年と比べて0・8ポイント低下し4・1%に減速するとした。昨年十月の前回時点から0・3ポイント下方修正した。
IMFは、〇八年の世界経済は著しい減速が避けられず「下振れリスクが目立つ」とする。混乱の金融市場に関しても「安定回復への過程は複雑で、長期化するだろう」と悲観的だ。
昨年十月のワシントンG7後、サブプライム問題の影響は一段と深刻化した。G7声明は、世界経済について「成長は短期的に幾分減速する」と懸念を示した。危機感は共有したものの、IMFに比べると認識に甘さがあるように思える。
世界経済の減速回避へ、声明は各国が共同するなどで適切な措置を取っていくとしたが、サブプライム問題震源地の米国は、大規模な景気対策や相次ぐ利下げの実施など財政、金融の両面で迅速な対応を取っているとし、各国には景気下支えのため内需の拡大が必要との考えだ。
日本や欧州は財政、金融とも政策余地は限られ、打つ手は乏しい。日本は経済は底堅く推移しているとの思いがあり、問題解決のために米国の一段の対応強化への期待がにじむ。声明に「共同」が盛り込まれたものの、各国に温度差が感じられる。
金融市場の安定に向け声明は、サブプライム関連の金融商品に投資する金融機関は損失を確定して開示し、必要に応じて資本増強措置を講じるよう促した。重要なことだが、情報公開を訴えたにとどまり、実効性は不透明だ。
日本はバブル崩壊後、不良債権処理に苦しんだ。教訓は大胆で、しかも迅速な対応を取らなければ被害は拡大するということだ。サブプライム問題でこれまでは各国の認識が甘く、対応は後手に回ったといわれる。米国はもちろん各国は大胆な取り組みを実行する覚悟が求められる。
警察庁によると昨年一年間に全国で起きた発砲事件は、前年比24・5%増の六十六件だった。死傷者は二倍以上の四十人で、死者は前年の二人から二十二人と大幅に増えた。
二〇〇一年に二百十五件だった発砲事件は、〇六年まで五年連続で減少し、死傷者数も三年連続で減っていたが、増加に転じた。憂慮すべき事態である。
問題は、昨年の発砲事件のうち四十二件は暴力団員が起こしていることだ。死者二十二人のうち十二人が暴力団員だった。暴力団同士の対立抗争での発砲事件は十二件発生した。減少傾向にあった拳銃の押収も増えた。闇社会で銃器の使用が日常化してきたことを示している。
暴力団員による発砲事件では、長崎市で選挙運動中の市長が射殺された。愛知県長久手町では銃を持って自宅に立てこもる事件が起きた。佐賀県の病院では入院患者が、暴力団関係者と誤認され射殺された。いずれも市民に大きな不安を与えた。
警察庁では「計画的に人を殺傷する目的で拳銃を使用する事例が多くなっている」と分析する。怒りを覚えずにはいられない。警察は銃の売買や密輸などの摘発を強化し暴力団壊滅に向け全力で当たらねばならない。
昨年十二月に起きた佐世保市の散弾銃乱射事件では、警察の許可を受けた銃が使われ問題となった。この事件を含め許可銃による事件は前年より五件多い八件あった。
警察は許可銃の一斉点検を続けているが、所有者がストーカー行為をするなどしたため、これまでに九十人から百四十五丁分の許可証を自主返納させるよう指導した。銃の管理をチェックする態勢を強める必要がある。
(2008年2月10日掲載)