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この不景気はこれから大不況に悪化する

2月8日10時0分配信 日刊ゲンダイ


 衝撃的なリポートだ。ゴールドマン・サックス証券が先月28日、「日本経済は恐らくもうリセッション入りしている」との報告を出した。チーフエコノミストの山川哲史氏が、リポートの中でこう言っているのだ。
「02年1月から続いた景気拡大局面は収束」「遅くとも1〜3月には景気は後退局面に入った可能性が高い」「背景には内需停滞がある」
 また、ゴールドマンは08年の日本の成長見通しを1.2%から1%に下方修正もしている。
 要するに、日本は再び不況に逆戻り、というわけだ。しかも、理由はサブプライム問題ではなく、内需の不振だというのである。
 ゴールドマンの分析は定評がある。97年のタイ通貨危機の前には、「半年以内にバーツが切り下げられる確率が高い」と予測して的中。米国がITバブルに沸いていた00年に、いち早く投資家に株式保有比率の引き下げを勧めた。間もなく、ITバブルは崩壊している。先見性の高いゴールドマンのリポートだけに、深刻に受け止められているのである。
 実際、すでに日本はリセッションに入っている可能性が非常に高い。
「あらゆる数字を見ても景気の後退が裏付けられています。12月の住宅着工件数は前年と比べて14%もダウン。都内のタクシーの営業収入は、値上げ後1カ月で2.8%も減少しました。その一方、ガソリン価格の高騰などで全国消費者物価は10年ぶりに0.8%上昇した。サラリーマンの賃金は9年連続下がっているのに、物価だけは上がる。これでは消費が停滞する。景気が後退して当然です」(神奈川大名誉教授・清水嘉治氏=経済学)
 福田首相は「今の経済が緊急ということはない」とかバカなことを言っていたが、日本経済は最悪の危機に直面しているのだ。

●米、中、印…あらゆる輸出が減速

 しかも、この不景気はハンパじゃない。日本経済にトドメを刺す恐れがある。
 いま懸念されているのは輸出の減速だ。サブプライム問題で米国経済が冷え込めば、日本の対米輸出が激減するのは間違いない。そこに追い打ちをかけそうなのが「新興国」への輸出減だ。昨年の輸出入総額は戦後初めて、中国との貿易が米国を抜いてトップに立ったが、その中国もサブプライム問題で大打撃は必至。
 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズの調査によると、1月の中国の株価下落率は21%以上で、世界ワースト2位だった。この先、中国への輸出が減るのは確実だ。
 さらに、インドも1月22日の世界同時株安で株価が大暴落。サーキットブレーカーが発動し、取引停止の騒ぎになった。1月の株価は16%下落し、ワースト6位である。
 一部のエコノミストは「米国の景気が悪化しても、新興国の中国やインドが世界経済を支える」という「デカップリング論」で乗り切れると喧伝していたが、現実はまったく違った。
 そもそも、デカップリング論は最初から成り立たないのだ。慶大教授の金子勝氏(経済学)は、日刊ゲンダイ本紙コラムでこう言っている。
「米国の消費が9.5兆ドルあるのに対し、中国とインドを合わせても1.7兆ドルもない。とても穴埋めできる状況ではない。そして何より、米国経済が悪化すれば、米国への輸出で好景気を続けている中国やインドも遅れて悪影響が出てくるはずだ」
「そうなったら、輸出だけに頼る日本経済の脆(もろ)さがさらに露呈することになる」

●輸出拡大が内需に直結しない最悪

 それにしても、なぜ日本経済はここまで弱体化してしまったのか。日本は好調な輸出に支えられて、6年間も景気拡大をつづけてきたはずだ。大企業は6年連続、増収増益である。
 6年間も好景気がつづけば、多少のことでは大崩れしないのが普通だ。なのに、米国経済がガタついただけで、いきなり打撃を受けるなんて、どう考えてもおかしい。
 それもこれも、すべて「小泉改革」のせいだ。日本が誇った経済システムをブチ壊してしまったのである。
「かつての日本は、輸出が拡大すれば、その果実が国内に行き渡った。輸出拡大が設備投資を促し、最後は個人消費に火を付けた。大企業から下請け、下請けから孫請けへとカネが流れたものです。しかし、小泉改革は輸出拡大が内需に転化する経路を断ち切ってしまった。どんなに大企業が儲けても、末端まで届かないシステムにしてしまったのです。最大の罪は雇用の破壊です。大企業の言いなりになって、派遣やパートなどを安い賃金で働かせられるようにした。これでは内需が活発になるはずがない。輸出が減速した途端、不況に陥るのも当然です」(筑波大教授・降旗節雄氏=経済学)
 しかも、小泉首相は「痛みに耐えろ」とか言って、社会保障をドンドン削っていた。最低限のセーフティーネットまで壊されたら、国民が財布のヒモを緩めるはずがない。

●小泉改革の全否定から始めよ

 ここまで日本経済が危機に瀕したら、一国のトップとして緊急に対策を打ち出すのが当たり前だ。なのに、肝心の福田首相はヤル気ゼロだから、話にならない。
 この期に及んでも「米国にしっかり対応してもらいたい」と他人事なのだから、どうしようもない。あのブッシュ大統領でさえ「やれることは何でもやる」と宣言し、大急ぎで1500億ドル(16兆円)規模の減税を発表しているのに、何ひとつやろうとしない。
 それどころか、ガソリン税の暫定税率を維持して、ますます消費を冷え込ませる始末だ。
「日本経済を再建するためには、もう一度、国民の末端にまで果実が行き渡るシステムを構築するしかない。企業が増収増益をつづけているのに、サラリーマンの賃金が9年連続ダウンという歪みを放置していてはダメです。もし、経営者や株主が果実を独り占めにするなら、政治が富の再配分をするしかないでしょう。少なくとも、小泉改革が壊した最低限のセーフティーネットは復活させるべきです。さもないと、日本経済は本当に疲弊してしまいます」(降旗節雄氏=前出)
 ゴールドマン・サックスのリポートは、重大な警告だ。このままでは、国民生活は大変なことになる。

最終更新:2月8日10時0分

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